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アップセル

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アップセルとは、ある商品の購入者に対して、購入時や商品の買い替え時や契約更新時などに、その商品と同種でより上位(販売単価や利益率の高い)の商品を提案することで、顧客から得られる販売単価の向上を目指す販売のアプローチ方法のことです。
例えば、レストランにおいて普通サイズのライスを頼んだ際に「プラス100円で大盛りにできます」という提案を受けるケースが該当します。また、自動車メーカーが顧客の買い替え時に、より上位の高級車を提案することもアップセルの例となります。
なお、収益モデルのフリーミアムは「プレミアム機能」という付加価値を訴求している意味において、アップセルの手法を採用していると言えます。
また、アップセルは販売単価の向上を通じて顧客生涯価値(LTV)の最大化を高める方法とも言えます。
Amazonのようなネットショッピングサイト上で行われるレコメンデーション(関連商品の推薦)も、クロスセルやアップセルを目的としたキャンペーンです。

 

 

目次

アップセルとクロスセルとダウンセルの違い

アップセルとクロスセルの違い

クロスセルとはある商品を購入した顧客に対して、別の商品もセットで購入してもらうためのセールス手法です。
例えば、顧客にスマートフォンを販売した時に、スマートフォンケースや画面の傷の防止シートの購入も同時に提案したり、Amazonの商品と一緒に表示されるレコメンド機能などもクロスセルに該当します。
クロスセルのメリットもアップセルと同じ様に新規顧客を獲得するよりも低コストで収益を向上させることができることです。
 

アップセルとダウンセルの違い

アップセルは客単価を上げるための施策であることに対して、ダウンセルはコンバージョン率を向上させる施策です。
例えば、顧客がある商品を購入したい意思を持っているが予算を持っていない、という際に価格が安い低機能な商品をおすすめすることで、商品の購入を促します。
その価格の安い商品を顧客が気に入れば、そこからのアップセルで本来売りたかった商品を販売できる可能性もあります。

 

 

アップセルのタイミング

アップセルはは顧客が「購入を決めた直後」に実施すると成功率が向上する施策です。例えば、顧客が商品を「購入しよう」と決意した瞬間、つまり購入の意思が固まったタイミングで上位の商品を提案すると、「こっちの方が利便性が高そうだな」という意思を変換させやすくなります。「購入を決めた直後」はセールスに対して顧客がポジティブな反応をする可能性が高く、顧客を不快にさせることなくアップセルを実施することができます。この際に、「この商品の方が便利かもしれない」と、「価格の差」を上回る「価値の差」を顧客に想像させるアプローチが重要となります。

 

 

アップセルを促す4つの方法

アップセルの施策には主に4つの方法があり、この章ではその方法を紹介します。

現在の商品から上位商品への転換

この方法は、既存の商品ラインナップや料金体系は変更せずに上位商品への転換を提案する最もシンプルな方法です。
上位商品のさらなるメリットや費用対効果を顧客に理解してもらうことによって上位商品への転換を実現しやすくなります。
なお、このようなアップセルを実施する際には、上位商品を気軽におすすめして顧客に不信感を感じさせてしまわないように注意する必要があります。
この方法は顧客が既に現在利用している商品に満足しており、同時に信頼関係を築いていることが前提になります。

 

 

ダウンセルから上位商品への転換

前に説明したように、ダウンセルとは顧客が求めている商品よりも安いもの、低グレードの商品をおすすめする方法です。短期的には企業側にとって損のように見えますが、まず初めに基本的な商品を買ってもらうという機会損失を防ぐために用いられる方法です。
例えば「予算が少ないの顧客にまずは低グレードの商品を購入してほしい」という場合に用いられます。
それに似たような手法で、動画配信サービスなどで以下の手法も頻繁に使われています。

    • 無料トライアル
    • 初回割引サービ

このように、最初は購入に消極的な顧客に対して、商品に満足してもらえたり、信頼関係が構築できたタイミングで、低グレードの商品・サービスから、上位のグレードの商品への転換を提案します。

 

 

商品ラインナップを変更する

この方法は、現在の商品ラインナップを変更することによって、そのタイミングで既存商品よりも上位グレードの商品の購入を提案する方法です。
例えば、以前は低グレード、中グレード、高グレードの3つの商品ラインナップを用意していたと仮定します。
それらを中グレードと高グレードの間のグレード、高グレードを超えるグレードの2つに統合し、既存の低グレードのユーザーには上位グレードへの転換を提案します。
この方法は、多くの顧客の継続が期待できる場合、単価の改善につながるというメリットがありますが、しかし、ラインナップの変更を機に離脱する顧客が発生したり、上位から下位グレードに移行する顧客も現れる可能性があるというデメリットがあります。
なお、商品ラインナップの変更時には「顧客目線」を意識することが重要です。自社の利益ばかりを意識して、顧客が求めていない商品ラインナップを取り揃えた場合、顧客が離れてしまう可能性があります。
 

価格設定を調整する

この方法は、既存の価格設定を変更して顧客単価を上げる方法です。これは商品やサービスの知名度が上がってきたタイミングで行われることが多い方法の一つです。
例えば、現在は月額1,000円と月額2,000円の2つのプランがある場合、それぞれ1,200円と2,100円に値上げする方法が例として挙げられます。
この方法のメリットは、継続性が高いサービスの場合では多くのコストを必要とせずに収益を増加させることができる点です。
しかし一方で、値上げに対する付加価値が追加できない場合、企業から離れていく顧客が現れることや、新規顧客獲得のハードルが上がるというデメリットも存在しますあ。
このように、収益の増加が期待できますが、離れていく顧客も現れる可能性があるため、商品の価格設定を変更する手法を実施する場合は、長期的な目線を持ちタイミングを正確に判断して実行するべきです。

アップセルの方法としては他にも以下のようなものがあります。

  • ボリュームディスカウント
  • 評判の高い口コミを紹介する

 

 

アップセルを実施する際の注意点・ポイント

顧客情報を正確に把握する

アップセルを実施する際は、より正確な顧客情報を把握することが必要です。
以下のように、どのように顧客が商品を購入したのかという情報は、より顧客のニーズに合った商品の提供に反映されます。
顧客情報には、以下のようなものがあります。

  • 顧客の購買履歴
  • ウェブサイトの閲覧履歴
  • 資料請求を行った行動履歴

例えば、グレード上位の商品を購入した顧客がどのように購入したのか、その理由を把握することができれば、顧客の傾向が把握できるようになります。過去の購買履歴を正確に知ることで、より多くの顧客が商品に興味を持つようになります。
間違った営業の仕方では、商品やサービスの購入にまでは至らないため、利用者ごとのニーズに合った提案をすることが必要です。
 

アップセルに関連する商品設計を行う

「どのようにすれば顧客により上位のグレードの商品を購入してもらえるのか」というアップセルに関連した商品設計も重要です。上位商品に転換させるためには、より上質なサービスや性能を提供できなければ、商品を購入してもらうことはできません。
顧客にアップセルを実施した際に、満足してもらえるような商品設計を行っていた場合、上位の商品を購入してもらいやすくなります。下位商品から上位商品に転換することで、顧客が感じることができる明確なメリットやできることが増える商品を用意する必要があります。
グレードアップしたいと思えるような商品の機能や品質が存在することで、初めて上位グレードの商品への転換を顧客に検討してもらえるようになります。
 

アップセル提案のタイミングに注意する

顧客に早急に上位商品へのアップグレードを提案しても、何度も提案すれば不信感を感じさせてしまう可能性があります。アップセルを提案をするベストなタイミングは、無料お試し期間の終了後や購入直後、買い替えを検討し始めるタイミングがベストです。
商品の無料お試し期間終了後や、購入直後は顧客の購買意欲が高い状態であるケースが多いため、プレミアムプランの提案を行っても、不快に思われることも少ないというデータが判明しています。
また、 顧客が商品の買い替えを検討し始めるタイミングにアップグレードの提案を行うことができれば、ナチュラルに上位商品への興味を持ってもらうことができます。アップセルの提案を行うタイミングも考慮しつつ、強引なセールスを行わないように注意する必要があります。
 

強引なセールスをしない

アップセルの提案をする時にやってはいけないことは、押し売りをしてしまうことです。より高額な契約を行いたいからとユーザーニーズもよく考えずに提案を続けていては、顧客からの信頼が下がってしまいます。
アップセルはあくまでも上位契約をしてもらうための手段であって、無理やり顧客の単価を高めるものではありません。いかに顧客に気持ちよく商品を使ってもらうかを考えた上で、顧客の満足度を第一にアップセルを行うことが大切です。
企業イメージを落としてしまわないためにも、無理な販売は避けるようにしたほうがいいでしょう。
 

顧客ロイヤリティの向上を図る

顧客ロイヤリティとは、自社が扱う商品やブランドに対する顧客の信頼度や愛着度のことです。顧客ロイヤリティが高いほど、顧客がよりグレードが上位商品を購入する可能性が高くなります。
さらに、顧客満足度が高められるように顧客の行動や購買履歴を分析して、適切なサポートや提案を実施していくと、顧客に納得してもらう形で商品の購入をしてもらえる可能性が高まります。
顧客ロイヤリティの低い顧客にアップセルを実施しても強引なセールスだと勘違いされてしまいます。そのため顧客ロイヤリティを意識して顧客単価の向上を狙っていくべきです。
 

定期的にアフターフォローを実施する

商品を購入した後に何もアフターフォローやサポートを行わなかった場合、顧客ロイヤリティの向上が難しくなります。購入後もサポートを行なったり、何かトラブルがあった時に対応することができれば、顧客からの信頼度が高まります。
また、サポートを行っていくプロセスで、顧客のニーズを把握していくこともできるようになることから、顧客に適切な提案ができます。同時に、アップセルの成功確率を高められるようになるはずです。
さらにアップセル後のアフターケアも実施すると、更なるグレードアップに繋がったり、関連商品の購入も検討してもらうクロスセルも行いやすくなります。 商品を購入した顧客に対して定期的にフォローを行うことは、顧客育成にとって重要なポイントになります。
 

アップセルやクロスセルを実施する前の準備

次に、アップセルやクロスセルを実施する前に準備として行うべき事柄を説明します。

価格設定の工夫

アップセルを実施する場合には、自社および競合他社の商品の価格や顧客のニーズなどに合わせた価格を設定することが重要になります。
自社商品の価格を基準として価格設定を行う場合、一定額の利益が確保できるなどのメリットがありますが、価格によっては成約率が上がらないことや、競合他社に顧客が流出するなどの危険性が存在します。
また、顧客のニーズに合わせて価格設定を行う場合、機能面と価格面において顧客のニーズを満たせることから、顧客満足度向上やLTV向上といったメリットが期待できます。しかし一方で、事前にマーケティング調査を行う必要があることや、限られた予算で商品開発を行う必要があるといった課題も生まれます。
さらに、価格設定が定額制か変動制かどうかも重要な点です。
定額制価格の場合は、顧客にとって商品の購入や利用に必要な金額を計算しやすいというメリットがありますが、カスタマイゼーションができないために解約率が高くなるといったデメリットもあります。一方、変動制価格の場合はサービスを利用した分だけ費用が発生するので、顧客にとっては最小限のコストで利用を開始できるなどのメリットが生まれますが、しかし、商品やサービスを提供する企業にとっては収益の予測が難しいといったデメリットが存在します。
 

商品設計の工夫

アップセルやクロスセルの成功率を上げるためには、自社の商品が大量購入や定期購入に向いている商品か、ニーズに応じて様々な商品やサービスを取り揃えられているかが重要なポイントになります。例えば、取り扱う商品が少ない場合、より上位のグレードの商品への買い替えや関連商品をおすすめすることは難しくなります。
大量購入によるアップセルを実施する場合には、一定金額以上購入で送料無料になるなどの顧客にとってのメリットを準備し、顧客の購買意欲を増加させることが効果的です。また、定期購入や月額制のサービスなどでアップセルを実施する場合には、短期間のお試しプランで顧客ロイヤルティを向上させ、上位のプランへのアップセルを提案するといった手段が有効的です。

 

 

個々人の営業スキルの向上

アップセル・クロスセルの成功率を上げるためには、顧客の購買履歴や問い合わせ記録などから顧客のニーズを分析・予測したうえで、的確なアプローチを行うことが重要となります。そのためには、セールスマン一人一人の営業スキルの向上が必要となります。
また、営業を行うタイミングを正確に判断したり、顧客のニーズを正確に分析したりするには、商談を録画できるツールや顧客管理ができる営業ツールを導入することも重要なポイントとなります。

 

 

アップセルのメリット

顧客単価が向上する

アップセルを上手に活用することによって、顧客単価の向上を図ることができます。
より多くの顧客に商品やサービスを販売して収益向上を図ることも有効な手段の一つですが、顧客一人当たりの単価を増加させることも企業の経営において重要なポイントとなります。
少子高齢化によって日本の人口は減少し続けており、新規の顧客に製品やサービスを販売することは少しずつ困難になっており、多くの顧客に商品やサービスを販売することも難しくなっています。このような課題を解決するためにも、アップセルの実施は効果的な手段となるはずです。
 

LTVが向上する

アップセルの導入によって、LTV(顧客生涯価値)の向上が実現できるというメリットがあります。
LTVとは「一人の顧客が企業に対して一生の間に支払う金額」を意味する言葉で、LTVを向上させることが出来れば効率的に収益を確保できると言われています。
新規顧客と既存顧客の関係においては、「1:5の法則」と呼ばれるマーケティング業界では有名な法則があります。新規顧客と既存顧客の獲得コストは1:5、つまり新規顧客を一人獲得するためのコストは既存顧客を一人維持するためのコストの5倍必要となるという法則です。
このようなことからも、新規顧客を獲得することも重要ではありますが、既存顧客を維持して売上を向上させるほうが効率よく売上を増加させることができます。

 

 

業務が効率的になる

新商品や新サービスの提供や新規顧客を獲得して売上の増加を試みる場合、広告宣伝を行うことや開発に金銭だけでなく時間的なコストも必要となります。しかし、既に商品を購入してもらっている顧客をターゲットとするアップセルは、ある程度の信頼を獲得できていることから大きな宣伝を必要とせずに収益が増加します。
そのため、必要となる業務時間の短縮やコストを下げることができるため、企業の業務の効率化が実現できます。自社商品を利用し続けてもらう点は難しいですが、ある程度手間が必要なくなる点はメリットの一つです。
 

顧客満足度が向上する

既存顧客にさらにグレードが高いプランや、商品を提案して使い続けてもらうアップセルは、顧客に質の高いサービスを提供します。その結果、顧客満足度が向上するというメリットがあります。もちろん、顧客が上位の商品を利用した際に与えるメリットも必要となりますが、グレードが上位の商品を利用してもらうためには、顧客と企業の信頼が無ければまず実現できないはずです。
まず初めに、商品を購入してくれる顧客がいなければ、商売は成り立ちません。
 

アップセルのデメリット

強引なセールスだと思われやすい

顧客単価を向上させたい気持ちが強すぎるあまり、顧客が求めていない製品を無理におすすめてしまうと、強引なセールスだと感じさせて顧客が離れていく可能性があります。製品の購入を検討している顧客が「強引なセールスをされている」と感じてしまうと、製品の購入自体をキャンセルする場合もあります。そのような状況になれば、結果的に収益が減少していく可能性もあります。
購入が成立したとしても強引なセールスだと感じさせてしまった場合は、顧客からの信頼を大きく低下させてしまいます。ケかk的に、次回以降の他社サービスへの転換を検討されたりクレームの原因になったりするため、アップセルを実施する際は強引なセールスをしないことが重要です。
 

顧客を困惑させる

グレードの高い商品を顧客におすすめすることで、購入を決めかけていた顧客を困惑させてしまう可能性があります。
顧客が「選択することが難しい」と感じると、元々購入を決断していたはずの製品の購入までキャンセルにしてしまう可能性もあります。アップセルを実施する時は、状況を確認しながらグレードの高い製品を顧客におすすめることが重要です。

 

 

購入の必要性がある商品を取り扱う

顧客に販売した商品に対して「購入の必要性」や「認識可能な付加価値がある製品」を訴求できない場合、クロスセルやアップセルは実施しにくいです。
また、顧客データの分析を継続的に進化させなければ、「以前と同じ提案」と顧客が感じ、飽きられてしまう可能性があります。あるいは、アップセルの場合、高級品を求めていない、購入できない人に高級品を勧めるなど、顧客データと提案する商品が異なる場合は顧客が離れていくリスクがあります。
 

アップセルの成功条件

対象となる商品やサービスを取り揃えていること

販売した商品の関連商品や補完品、上位商品を保有していることがクロスセルやアップセルを採用する際の前提条件となります。商品数が少ない企業や、顧客ライフサイクルを管理していない企業では導入が難しい収益モデルです。
 

顧客データの管理・分析を行う仕組みや体制があること

顧客の嗜好性やライフサイクル、購買履歴などの情報のデータベースを構築し、併売傾向や優良顧客を特定することが必要です。自社での構築が困難な場合は、他社のサービスの活用も検討します。
 

既存商品と比べて「識別可能な差」を提供できること

クロスセルやアップセルを実施する際には、元々顧客に販売した商品と比べて差や付加価値がある商品を追加で提供することで、最終的に顧客に満足してもらう必要があります。
 

アップセルの事例

Dropbox

Dropboxは、クラウド上のオンラインストレージにさまざまなデータを保存することができるサービスの1つです。Dropboxが行なっているアップセルの手法の一つに、「紹介制度」というものがあります。
この紹介制度では、Dropboxというサービスを他の知人などに紹介して登録してもらうことができれば、オンラインストレージに保存できる容量を増やすことができる仕組みです。結果として、容量を増やすために利用者が次々と知人にDropboxを紹介し、Dropboxは新規顧客を獲得することに成功しました。
Dropboxは無料で利用できるため、利用者が登録したとしても早急に収入が発生するわけではありませんが、知名度を高めながら将来的により多くの利用者が有料版に移行する様々な手法も実施されています。
 

Spotify

Spotifyは無料で7,000万曲以上もの曲を聴けるサブスクリプションサービスを提供しているアメリカ企業です。Spotifyがアップセルで実施している方法は、無料版に1時間に6回以上曲をスキップすると、それ以降スキップができなくなる制限をかける方法です。
スキップ制限がかかった際に、有料版へのアップグレードを勧めるアップセルを実施したことが、より多くのユーザーを無料版から有料版への移行させることに成功しています。無料版やお試し版から有料版に移行してもらう手法はSpotifyだけでなく、ZoomやChatWorkなどでも実施されているアップセル手法です。
 

Amazon

Amazonはアメリカに本拠地を置く、日本でも数多くの利用者を持つオンラインショッピングモールです。Amazonが導入しているアップセルの手法としては、ユーザーが商品を調べたり注文したりする時に、その製品の上位商品が表示される仕組みです。関連商品も表示されるためクロスセルも実施されています。
さらに、紹介される商品には、「よく一緒に購入されている商品」という説明が追加され、そのため、同じ製品を買った顧客の情報も得られることから、顧客が安心して商品を購入しやすい環境が提供されています。
Amazonでは購買意欲の高いユーザーが集まりやすいオンラインショップというビジネスモデルの特徴を活用して、アップセルとクロスセルの両方を実現しています。このような商品の選択の柔軟さこそが、Amazonの大きな特徴です。

 

 

ヤクルト球団

日本のプロ野球球団の「ヤクルトスワローズ」を運営する株式会社ヤクルト球団では、顧客ロイヤリティを向上させるのためアップセルを実施しています。
ヤクルトスワローズの球団公式ファンクラブである「Swallows CREW」には、「ライト会員」をはじめとした、「キッズ会員」、「レギュラー会員」、「ゴールド会員」、「プラチナ会員」の5つの会員プランを提供しています。
そして、キッズ会員以上から得られる入会特典の中でも「CREWユニフォーム」というウェアが、顧客ロイヤリティの向上に大きく貢献していることが判明しました。
そして、プラチナ会員になると選択できる入会記念品に「コーチジャケット」などのアウターを加えた結果、プラチナ会員に登録する顧客が増加しました。
以上の例以外にも、会員グレードに応じた入会特典の差別化を行うことで、毎年のプラチナ会員およびゴールド会員の入会者が定員に達するという結果となり成功しています。
 

アルプ

アルプは企業が行うクロスセルやアップセルを支援する日本企業です。
イラストコミュニケーションサービス大手「pixiv」の代表取締役を務めた伊藤浩樹氏らによって設立されたアルプは、サブスクリプションビジネスの効率化・収益最大化のためのプラットフォームサービスである「Scalebase」を提供しています。
Scalebaseは、商品管理や顧客管理、決済、データ分析などのサブスクリプションサービスにおける業務を一元管理・自動化できるサービスです。SpotifyやトヨタのKINTOのようなサブスクリプションサービスを提供する企業にとっては、一度獲得した既存顧客の定着率を高めるだけでなく、顧客単価を高めるために、オプションサービスの販売やプランのアップグレードなどのクロスセルやアップセルを実施する必要があります。
そのような課題を抱える企業は、Scalebaseを導入することで、新たな商品やオプションの追加、プランのアップグレード、また課金方式の変更などを簡単に行うことができます。
 

アップセルの失敗事例

百貨店

百貨店業界では近年、顧客の売上単価が減少している課題に注目して、アップセルおよびクロスセルが実施されるようになってきました。
成長戦略においては、1人の顧客が取引を開始してから終わるまでにどれだけの利益をもたらすかを算出する「LTV(Life Time Value)」を向上させるのか、来店する動機を創出し「顧客数の増加」を向上させるのか、どちらかをベースとした戦略が効果的なのかが考えられています。
そして百貨店の多くが「オムニチャネル」を実施しながら、実店舗での販売とネット通販が相互補完しあう形態を最新のIT技術を利用して構築し、魅力的な商品を基盤とした「顧客数の増加」の戦略を実施しようと試みました。
しかし、以前のビジネスモデルでは、顧客や商品データの蓄積および分析をする体制が構築されておらず、顧客データベースの集約によって得られる顧客の嗜好や購買行動を分析できませんでした。
結果として、百貨店業界でのアップセルを実施する施策の多くは失敗し、様々な技術を駆使してビッグデータを有するIT通販企業に対して負けているのが現状です。
 

アップセルの目的は顧客単価が上げること

多くの業界で市場が飽和状態になっている現在においては、新規顧客を獲得することが難しくなっています。そのため、既存顧客との長期間の信頼関係を築くことが重要視されるようになっており、LTV(Life Time Value=1人の顧客が取引を始めてから終わるまでの期間にもたらす利益の総額)の向上が経営課題として重視されるようになっています。
そのLTVを向上させる方法の一つが、顧客単価の向上とされています。そこで顧客単価を上げる手法としてアップセルとクロスセルが効果的な手法として利用されています。
さらに、近年ではサブスクリプションやSaaSといった定額制・プラン制のビジネスが発展してきており、顧客と継続して取引をする仕組みにおいて利益を拡大する手法として、アップセル・クロスセルが注目が集めています。

 

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