機能別組織(職能別組織)とは、経営組織の構造の1つで、開発、営業、生産、人事、経理など業務内容別に編成した組織を指し、事業部制組織、マトリックス組織と並ぶ、企業における基本的な組織構造です。
機能別組織の起源はドイツであるとされており、企業活動を工務(研究、開発、生産)と商務(マーケティング、販売など)に分けたのが機能別組織の始まりといわれています。
その後フランスの経営学者アンリ・ファヨール氏により、技術、営業、財務、経理、会計、管理の6つの機能にさらに細分化されました。
機能(職能)別組織は、一般的な中小企業によく採用されている組織形態であり、それぞれが役割を果たせば結果として会社全体が組織の目的を達成できるという考え方です。
また、単一事業で製品の種類も少なく、規模の経済が大きく働き、強力なリーダーシップを発揮できる場合に向いている組織形態といえます。
Index
機能別組織のメリット
効率面
機能別組織では各部門間での仕事や人員の重複がなく、経営効率の面で優れた組織構造といえます。
すべての商品を営業、研究、生産などの各機能によって、集約して管理するので、営業、研究、生産などは各一つの部門で完了できることも特徴です。
自動車メーカーならば開発、調達、生産、販売、アフターケアなどの機能ごとに組織が編成され、スムーズに全体的なサービスを完了できるため、これを踏まえて単一の製品をつくるメーカーに適した組織構造となっていえるでしょう。
ノウハウの蓄積
機能別組織は原則的にその組織構造から、開発部が営業部、営業部が経理部などほかの部門を横断して業務をこなすことはありません。
したがって、同様の業務を行なう従業員が同じ組織に集まるため、知識、技術が共有されやすく、また同じ業務を集中して行なうため従業員のノウハウ蓄積、習熟度、さらに生産性の向上も期待できます。
また、その専門分野に特化した環境で業務をこなすため、知識や技術の習得も早いというメリットも忘れてはなりません。
規模の経済
機能別組織では、それぞれ製造や営業など、まとめて受注や発注を受けることができるため、事業規模が大きくなればなるほど、原材料や労働力の単位当たりのコストが小さくなり、競争上有利になれるという規模の経済を効率的に行うことがでるメリットがあります。
前述した効率性だけでなく規模の経済という面でも自動車メーカーのような単一製品を作る企業に適しているといえるでしょう。
トップによる組織の統制がとりやすい
機能別組織はその性質のため、企業のトップへの権限集中型の単純な組織構造であり、組織の統制を図りやすいというメリットがあります。
このトップからその下への指令のルートを1つに統一する仕組みのことを命令統一性の原則といい、情報の意思疎通をスムーズに行い、その上で企業のトップは開発や製造、営業など広範囲の情報を集めたうえで大局的な決定ができます。
機能別組織のデメリット
全体的な視野を持ったゼネラルマネージャーが育たない
機能別組織の一番のデメリットは、それぞれの部門の管理者は一つの職能に精通してくるため、より専門的な知識をもった人材には育ちますが、部門全体を見渡す広い視野を持ち合わせていないことが少なくありません。
したがって、それぞれの職能の専門家の育成には向いていても、広い視野で全体の状況を見て総合的な判断を下すことができるゼネラルマネージャー、次期経営者が育ちにくいことがデメリットです。
責任が不明確
例えば最終的に出来上がった製品になにか原因不明の問題が起こった場合、部門間を超えての統制はとれていないため、責任の矛先をどこかの部門に押し付けようという働きが起こる場合があります。また、原因不明ということはどこで問題が起こっているのかもすぐには特定できないため、対応が遅れる可能性もあります。
さらに、業績の評価基準も部門ごとに異なるため、どこが効率的にやれているのかの評価も難しいというデメリットもあります。
変化に弱い
機能別組織では、事業部制組織に比べ、部門と部門の間の意思疎通が難しいため、例えば営業部が気付いた顧客の要望やニーズを既存製品の改良や新商品の開発をしている開発部に伝えられず、重要な機会損失になってしまう恐れがあります。
また同じように意思疎通がとりにくいことから、急激な市場の変化への対応が遅れてしまいがちだということも特徴です。
トップのみに部門を横断する視点がゆだねられているため、後述する、トップへの負担が大きいことや、部門間の調整にトップが貴重な時間をとられることにより、戦略立案や会社の方向性を決めるような意思決定が疎かになってしまうというデメリットがあります。
さらに、専門性の高い社員を異動させることで業務の生産性が低下するリスクもあり、社員の異動も実施しにくいという面もあります。
トップの負担が大きい
機能別組織を採用している企業が複数の製品、サービスを作っている場合に、トップの責任は特に大きくなってしまいます。
それぞれの製品に対して製造と営業、製造と開発、または営業と開発の間の調整を行うのはトップしかおらず、強力なリーダーシップが必要になってきます。
このデメリットを防ぐために製品別の委員会や、プロダクトマネージャー制度という制度が設けられる場合もあります。
プロダクトマネージャー制度とは食品メーカーや化粧品メーカーなど、品目が多い企業で採用されており、企業によって違いはありますが、製品の開発から、その製品の宣伝、販売、流通までの広範囲の権限を与えられる管理者です。