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インセンティブ

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インセンティブとは、従業員の意思決定や行動を変化させるようなやる気付けや動機付けのことで、代表的なものに金銭報酬があります。
しかし金銭的報酬のみがインセンティブとなるわけではなく、後述しますが、上司や同僚、個人の評価、思想や価値観、待遇などもインセンティブとなり、学術的には「マズローの欲求五段階説」と深く関わってきます。

日本語では「誘因」とも訳され、従業員が求めるインセンティブを十二分に満たすことができた場合、従業員への組織への努力や離職率の低下、あるいは組織全体へのプラスになる使命感などを生み出すことができるとされています。
 

人を動かす5つのインセンティブ

インセンティブには詳しく分類すると、前述した「マズローの欲求5段階説」の低次元の欲求である『生理的欲求』、『安全欲求』、『所属と愛の欲求』、そして高次元の欲求である『承認欲求』、『自己実現欲求』のそれぞれを満たす5つのインセンティブを与えることが理想とされています。
 

物質的インセンティブ

物質的インセンティブとは、金銭報酬に代表される、人間の物質的な欲求を満たすために、モノやカネを報酬として従業員として与えるインセンティブです。
これはマズローの5段階欲求説の中でも『生理的欲求』、そして『安全欲求』を満たすものであり、最低限度の欲求を満たすものですが、ある程度満たされてしまうと従業員の労働へのエネルギーを生み出すものとしては物足りなくなってしまうとされています。
 

人的インセンティブ

人的インセンティブとは、共に働く上司や同僚、または取引先や顧客まで含む、関わりのある人の個性、性格などの人間的魅力を指します。
また個々での関わり合いだけでなく主に同僚達との集団に属すことへの居心地の良さも忘れてはいけません。
このような人的インセンティブは『所属と愛の欲求』を満たしており、とりわけ上司の人間的魅力については、リーダーシップの発揮も大きくかかわってきます。
 

評価的インセンティブ

評価的インセンティブとは、企業の中での従業員の労働を組織が評価すること自体がこのインセンティブになります。
これは『承認欲求』を満たしており、組織が自分自身をしっかり認識し、評価してくれるという思いがベースとなり、その人の仕事の成果や成果とは関係ない組織内での貢献にピックアップすることが重要となってきます。
この評価は前述した物質的インセンティブに繋がっていきますが、貢献をしっかり褒めることも十分なインセンティブとなり得ます。
このインセンティブは『自己実現欲求』を満たすことがり、組織が従業員の貢献をしっかり評価してその従業員一人一人がたどり着きたい職場での待遇、または組織外での社会における立場に繋がっていきます。
 

理念的インセンティブ

理念的インセンティブとは、組織や経営者が掲げる思想や価値観に共感して達成意欲を刺激し、組織への努力を促すインセンティブです。
分かりやすい例が経営理念であり、この理念が消費者のみならず従業員にも好感をもたらし、「意義のある仕事をしている」と従業員が思えば、組織全体に使命感や価値観を浸透させることができます。
このインセンティブは『承認欲求』、そして『自己実現欲求』を満たすことがでるとされています。
 

自己実現的インセンティブ

自己実現的インセンティブとは、仕事の達成やそれ以外の組織への貢献に対して、自分自身での満足感を得られるような環境づくりを組織がすることによって従業員が得られるインセンティブです。
評価的インセンティブと内容は関わってきますが、それ以外にも従業員の欲求を正しく理解し、好きな職務を与える、大きな権限を与える、または融通の利く自由な職場環境など、それぞれの従業員の欲求を満たせるような職場環境づくりが大切です。
これはマズローが説く欲求5段階説の最上位である『自己実現欲求』を満たすことができます。
 

インセンティブ制度の導入・設計方法

インセンティブ制度と聞けば、「賞与」「報奨金」など金銭的なものや「昇格」「昇進」といった役職に関わるものを与えることを想像するかもしれません。
上手に従業員のモチベーションを向上させて高い業績を上げている企業は、「仕事のやりがい」や「自己実現」といった、数字だけでは把握しにくい従業員を心理的にコントロールする仕組みも取り入れています。
インセンティブ制度を設計する時には、まず初めに、従業員にとって魅力的な報酬を把握し、その報酬を成果や行動によって与えなければいけません。

1. インセンティブ制度導入の目的を決める

まず初めに、インセンティブ制度をどのような目的で導入するのかや。その目的はどうしたら達成できたのかを判断するのか決定します。その目的が従業員のモチベーション向上の場合、モチベーションの向上がもたらす具体的な効果をKPIとして設定する必要があります。
この目的をKPIとして設定しなければ、コストを無駄にしてしまう可能性が出てきたり、効果が出ているかどうかの判断できない危険性もあります。また、そのインセンティブ制度は、具体的に「誰」に対してどのような「条件」で「何」が与えられるのかをイメージしておくことも必要です。
一部の優秀な社員を対象にインセンティブを与えるのか、どのような成果を達成した場合にインセンティブを与えるのか、金銭的な報酬か心理的な報酬を与えるのか、これらの基準によって、そのような組織風土を構築していきたいのかが明確になります。
 

2. 従業員にヒアリングを行い、情報を集める

金銭的な報酬を求める従業員や評価や称賛されることを求める従業員、やりがいある仕事を求める従業員など、誰がが何を求めているのかを情報を集める必要があります。これは、インセンティブ制度のためというより、働きがいのある組織風土のために定期的に情報を集めているのが理想です。
一方で、インセンティブ制度は一部の従業員からの不満の声が発せられる場合もあるため、そのリスクを予め把握しておくためにも情報収集などの調査が必要です。
 

3. 具体的な制度の検討

まず、インセンティブ制度の報酬をの内容を考案してみて、従業員の職種や部署によってどのような影響が出るのか、その影響は発生しても良いものか、不公平感を生むものなのか、検討する必要があります。
また、インセンティブ制度を始める上で、どのようなコストがかかるのかを具体的に試算し、そのコストをかけるに値する効果を見込むことができるのかを検討する必要もあるでしょう。
欠かせないことは、「誰」に対してどのような「条件」で「何」が与えられるのかを明確にすることであり、金銭的な報酬を与える場合は、各部署との付与の手続きなどの仕組みの構築も必要となってきます。金銭以外の報酬を従業員に与える場合は、その効果を最大化するためにどんな仕組みが必要かを検討してみましょう。
 

4. 従業員にアナウンス

インセンティブ制度は設計だけでは完了しません。実際に運用してみて、その成果がどのように影響したのかも確認しなければなりません。特にインセンティブ制度導入時の従業員へのアナウンスは、その制度の目的や主旨、内容の把握が正確にされないと、従業員から不平不満が出る可能性があります。
また、一度金銭的なインセンティブを与える仕組みを構築すると、従業員もそれが当たり前となってしまい、なにか問題が起きた場合に金銭的なインセンティブを止めづらくなります。まずは一定期間試行錯誤してみて、その結果をもとに改善していく場合は、最初に従業員に正確に伝えておくこと必要があります。
 

5.導入後の経過観察

実際にインセンティブ制度を導入した後に、インセンティブが従業員のモチベーションにどう影響したか、あるいは、業績にどのように影響したのかを確認します。1ヶ月程度では効果を測定することはできないため、長期的な視点を持って改善していけるような仕組みを構築することが重要です。
「インセンティブ制度を導入したものの、マンネリ化してモチベーション向上に結びついていない」という場合もあるため、そのような場合は定期的に従業員からフィードバックを得る必要もあるでしょう。
 

インセンティブ制度の例

インセンティブ制度の主なものには以下のようなものがあります。

変動賞与制度

変動賞与制度とは、目標に対してある程度達成すると何%のインセンティブとして金銭が従業員に支払われる制度です。金銭で支払われることが多く、主に営業職の成果などを対象に導入されています。場合によっては、個人だけではなく、成果を達成した「チーム」に対して金銭等が支払われる場合もあります。
 

表彰制度

営業職であれば「成約数」などの結果を表彰したり、自社の行動指針に準拠した行動をした従業員に与えたりするなど、設計によって様々な立場の従業員を対象に行うことができます。
表彰を行う場合、社内で表彰の内容や頻度、演出などの違いを設けることによる自由度もあるため、改善もしやすいというメリットがあり、また、表彰のみで金銭的な報酬を与えないケースも実践できるため、まず最初に導入するインセンティブ制度として適しているでしょう。
 

昇格制度

昇格制度とは、仕事に見合った役職を与える制度です。肩書が大きく変わる昇進などとは異なり、給与の増加にも変動がない場合もあります。
詳細な昇格のステップを決めることで、達成感や成長感を従業員に与え、従業員のモチベーション向上につながる場合も多くあります。成果を上げた人が「リーダー」になれるというような制度も昇格制度に該当します。
 

インセンティブのメリット

従業員のモチベーションの向上

実績に対してインセンティブがあるということは、従業員にとってモチベーションが上がる仕組みになります。目標達成まであとわずか、という場合に達成後のインセンティブがあるか無いかで従業員のやる気に影響を及ぼします。
そんなモチベーションの向上が連鎖することで、従業員の行動につながり、結果、業績向上に貢献します。
金銭のみならず周囲からの評価や称賛なども重要なインセンティブ制度の一つのため、サンクスカードや他部署からのフィードバック、表彰制度など、様々な形でインセンティブを与えることが効果的です。。このようなインセンティブの仕組みをうまく使うことによって、コストをかけずに従業員のモチベーション向上を促すこともできます。
 

経営上のメッセージを伝達しやすい

インセンティブを活用することで、経営からのメッセージを伝えることが出来るというメリットがあります。具体的には重要度によってインセンティブ比率を変えることで、指標の重要度を現場の社員に伝えることが重要です。
例えば、営業部門の場合、短期目標を重視したい時は当月の売上目標の達成度に応じてインセンティブを与えること、また、中長期目標を重視したい時は年間の達成度に応じてインセンティブを与えることで、経営上でどんな指標を目標にしているのかを明確にすることができます。
 

従業員間での競争意識の向上

インセンティブ制度を導入した場合、当然のことながら従業員同士で報酬の差が生まれてしまいます。その結果、同じ賃金の場合に比べて、従業員間での競争意識の向上が期待でき、また、それは切磋琢磨する組織風土の構成にも繋がります。
 

インセンティブのデメリット

内発的動機が失われるリスク

人間は本来、自発的に行動したいという欲求を持っています。そして、それが内発的動機が目的の場合は、自発的に行動できまが、しかし他人からの評価や報酬が目的となってしまった場合、その達成のためにやらされている感覚が生まれる場合があります。
やらされている感覚が強くなっていくと、自発的に行動したいという本来の欲求が失われてしまい、次第にモチベーションも低下していきます。
この現象は心理学者であるデシ氏とレッパー氏が行った実験によって観察され、「アンダーマイニング効果」と呼ばれています。 インセンティブは外発的動機付けのため、「アンダーマイニング効果」が発動し、内発的動機が失われてしまうという危険性があります。
 

従業員の不満を生み出したり、従業員を間違った方向に導くリスク

インセンティブ制度には、評価と報酬が直結している仕組みがあるため、インセンティブの評価指標の設定には、細心の注意を払わなければいけません。特に、報酬に直接関係してくることから、少ないインセンティブを与えてしまった場合に、従業員の不満が生まれやすくなったり、事業成長に繋がらない指標を設定してしまうと、他の指標への注目が薄れてしまい、事業に悪影響を及ぼしてしまうリスクがあります。
 

組織力低下をもたらすリスク

インセンティブ制度は、個人の成果に応じた、個人に対する報酬制度であり、そのため、従業員が自分の成果に固執してしまいチームを乱してしまうというリスクがあります。乱れたチームの結果として、情報やノウハウの共有、若手の社員に対する人材育成といった組織全体での業務に対する意識が低下し、組織力低下に繋がります。

 

 

 

フレデリック・ハーズバーグの動機付け・衛生要因理論

インセンティブを語る上で外せない理論が『動機付け衛生要因理論』です。
アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグ氏は、従業員にモチベーションを与える論文『動機付け衛生要因理論』の中で、職務満足に関する要因には「不満足要因」と「満足要因」があるとしています。
まず「不満足要因」とは、そのインセンティブを与えても従業員は満足度を高めませんが、与えられなければ不満に感じるといったインセンティブを指し、例えばマズローの欲求5段階説にあたる「低次元の欲求」である給与や企業方針、対人関係にあたり、いくら改善しようとも満足度は高まりません。
「満足要因」とはそのインセンティブを与えることにより従業員の満足度が高まるようなインセンティブを指し、例えば同じく欲求説の「高次元の欲求」である、業務の内容、業務の達成、達成の評価などがこれにあたります。

この理論はまた、人の満足・不満足を二つの要因に分けて分析したことから別名『二要因理論』とも呼ばれており、
従業員自身が日々の労働時間の長さを決定することができる「フレックスタイム制」や、
従業員が何種類かの福利厚生施策を自由に組み合わせる「カフェテリア・プラン」など、従業員のモチベーションを高める制度の誕生に貢献しています。

 

 

動機付け・衛生要因理論の使い方

衛生要因を書き出す

まずは衛生要因を書き出します。衛生要因とは、モチベーションに影響を与える要因を考えた時に満たされることでモチベーションを下げるものです。例えば、職場の人間関係や業務環境、報酬の問題などが該当します。なにか業務上でのエピソードを思い出せる場合は併せて書き込むと具体的なシーンを共有できます。また、人間関係に言及する場合がありますが、個人を攻撃することが目的ではないという前提を共有して安心な職場づくりを行うことが重要です。

 

 

動機付け要因を書き出す

動機付け要因を書き出します。動機付け要因とは、モチベーションに影響を与える要因を考えた時に満たされることでモチベーションを上げるものです。例えば、評価や成長、達成感があります。これまでの経験の中でやる気が出たシーンなどを連想し、何がモチベーションアップに繋がるのかを書き出します。
 

整理して今後の方針を考える

モチベーションを阻害する要因は取り除けるように、そしてモチベーションを高める要因はさらに活かせるように、今後の対策と方針を考えます。自分は気が付いていなかったことがメンバーのモチベーション低下やモチベーションアップにつながっていたら、今後は意識しておくことが必要です。ここで書き出した情報を、教育プログラムの設計や業務環境づくりに活かしていきます。
注意点としては、動機付け要因と衛生要因を満たす方策は異なるため、それぞれに合った方策が必要です。また、動機付け要因が満たされていても、衛生要因で満足できない状況では十分なパフォーマンスを発揮できないため、両方に目を向けて改善することがカギとなります。
 

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