ジレットモデルとは、製品の本体を無料、または低価格で提供し、付属品を消耗品として継続的に販売することで利益を維持していくビジネスモデルです。
アメリカでは【Razor-Razorblade Model】や【Razor & blades business model】ともいわれており、この名前は男性の髭剃りなどを販売するカミソリメーカーのジレット社が採用したことに由来します。
目次
ジレットモデルの事例
ジレットモデルを活用した事例・企業には以下のようなものがあります。(本体→付属品)
カミソリと付替刃
前述した通り、ジレットモデルの由来となった製品です。
現在ではこの男性用カミソリの販売スタイルは一般的ですが、かつてはカミソリと替え刃が一体になった製品が一般的で、消費者は替えるタイミングが来るたびにこの一体型のカミソリを買っていました。
そこでジレット社が柄と刃を別々に売るモデルをはじめ、最初に柄を買い、あとは刃だけを買い足せば、一体型を買うよりも安く済みます。また、ジレットは本体となる柄を最初は無料で提供したため、一気にそのシェアを拡大していきました。
コピー機・プリンター→インクジェット
コピー機では最初にゼロックス社がこのジレットモデルを業界に持ち込みました。
コピー機本体をリースやレンタルによって低価格で導入できるようにし、コピー枚数に応じた月々の使用料金やインクトナーの交換による利益を継続的に得ています。
ウォーターサーバー→水
こちらは個人で購入するには高価なウォーターサーバー(本体)を無料で提供、または格安でレンタルし、毎月の水の料金で一定の利益を出しています。
代表的なウォーターサーバーには『アクアクララ』、『クリクラ』、『サントリー天然水サーバー』などがあります。
また、それぞれがその本体でしか利用できないウォーターボックスやパックで水を提供し、他社の水が利用できないように消費者の囲い込みも行っています。
コーヒーメーカー→コーヒー豆
ジレットモデルを用いて成功した企業がスペインのコーヒーメーカーであるネスレネスプレッソです。
ネスプレッソは新鮮で本格的なエスプレッソが抽出できるエスプレッソマシンを本体として1万円弱で安価に提供し、そのマシンでしか利用できないコーヒー豆(が密封されたカプセルを消耗品としてジレットモデルを成功させています。
現在では世界60か国以上で家庭や企業のオフィスにコーヒーメーカーを提供し、売上高は3000億円を超えています。
ゲーム機→ソフト
ゲーム機とソフトでジレットモデルを実践している企業が任天堂です。
任天堂は安価とは言えませんが、3DSやWiUなどの本体を生産し、主な収益源は消耗品となるゲームソフトで利益を継続的に出しています。また任天堂は『マルチサイドプラットフォーム』のビジネスモデルも取り入れ、他者が生産しているゲームソフト(消耗品)も本体で利用できるようにしているため、他社からのロイヤリティも大きな収益源となっています。
携帯電話→月々の費用
携帯電話も最初は無料、あるいは低価格で販売し、月々の通信料や通話料などで継続的な利益を出していくジレットモデルです。
さらに携帯電話は1度契約すると2年間は解約出来ない、あるいは基本料金の支払いの義務を残し、本体の料金も回収しています。
最近では月々の通信料(消耗品)の価格設定の高さが問題となっています。
その他のジレットモデル
ジレットモデルを応用したものにはその他にも、東レが生産している浄水器『トレビーノ』(本体)・「交換用カードリッジ」(付属品)、また、パナソニックが生産している音波振動歯ブラシ『ドルツ』(本体)、「替えブラシ」(付属品)などがあります。
事例から分かるジレットモデルを成功させるコツ
以上の事例から見てジレットモデルを採用し成功している企業には2つの共通点があることが分かります。
- 1.本体となる製品を無料、または格安で提供すること。
- 2.付属品となる製品を、他社の製品では使えないようにすること。
ジレットモデルのメリット
錯覚による販売促進
ジレット社の場合は替え刃のみで販売した場合、一体型よりも安く買えるように見えますが、長期スパンで見た場合には一体型で販売するよりも利益を上乗せすることができます。
継続的に売り上げを得られる
製品にもよりますが、例え本体の製品を無料で提供したとしても、付属品を販売し続けていれば継続的、また十分に利益を得ることができることがすでに証明されています。
また、自社の付属品しか利用することができないようにすれば、自社の付属品を買い続けてもらうことができ、顧客の囲い込みを可能にし、継続的な売り上げ高をさらに保障することになります。
ジレットモデルのデメリット
ブランドイメージの低下に注意
例えばインクジェットの価格を高めに設定した場合、買い替えるたびに高いインクジェットは消費者に不快感を与えます。
また、本体となる製品を多種類生産し、それに伴う付属品もまた多く作ってしまうと、本体の互換性がなく、消費者の困惑を招く危険性があります。ゲームソフトならばパッケージごとに分かりやすいデザインで本体の名前が書いてありますが、そういった対策が必要です。
これらをうまく対応しなければ企業のブランドイメージの低下につながり、ブランドイメージが低下した場合、消費者の企業の忠誠も低下し、価格を低めに設定した新規参入企業にいとも簡単に乗り換えられて業績の低下につながります。