ビジネスモデル

ボーン・グローバル

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ボーン・グローバルとは、創業後、短期間で国際展開(海外市場事業展開)を実施し、海外事業の売上が売上高の大半を占めるようになることです。具体的には、創業後およそ2~4年以内に海外展開を行い、売上高の25%以上を海外市場で稼ぐ企業を「ボーン・グローバル企業」と呼びます。
従来、企業活動の国際化は、国内で地位を確立した後に行われることが多かったため、創業から長い時間がかかることが一般的でした。しかし、近年ではボーン・グローバルを意識して事業を展開する企業が急速に増加しています。
ボーン・グローバルは直近20~30年で拡大した考え方です。もともと、オーストラリアにおいて早期に国際化を達成した企業を調査したコンサルティング会社「マッキンゼー」によって提唱されました。

 

 

ボーン・グローバル企業が増加する3つの理由

グローバル化の進展

第一の理由として「グローバル化の進展」があります。近年では輸送手段の多様化や貿易の自由化などを理由に、中小規模の企業でも事業を国際化することが容易になりました。そのため、創業直後から国際市場を意識する企業が増加しています。

PC・スマートフォンの普及

第二の理由として、「PC・スマートフォンの普及」があります。PC関連製品やスマートフォンのアプリケーションなどは、地域性に関係なく全世界的に利用される製品やサービスが多く存在します。
例えば、PC部品のマウスは全世界で利用されています。世界規模のSNSも多く存在します。そのような製品やサービスを取り扱う企業の活動の場は、その性質上、創業直後から全世界に広がりやすくなりました。該当分野の企業が対象市場を全世界をターゲットとしてユーザー数を増加させることは、ネットワーク外部性を意識した際にも重要となります。

国内市場の成熟化

第三の理由として「国内市場の成熟化」があります。国や地域にもよりますが、例えば日本のような成熟化が進む国内市場のみでは、得ることができる収益に限界があります。企業が生まれながらに国際市場をターゲットとすることは、リスク分散という目的もあります。

ボーン・グローバル企業の3つの特徴

必須条件ではないですが、ボーン・グローバルを意識して事業展開を行う企業には以下の3つの特徴があることが多いです。

技術力を活用した製品やサービスの提供を行っている

まず初めに、技術力を活用した製品やサービスの販売や事業展開を行う企業が多く存在します。技術力は市場に関係なくユニバーサルな特性が強いため、ボーン・グローバル企業の登場と深く関わっています。

巨額の投資を必要としない

次に、巨額の投資を必要としない事業を行っている企業が多いです。
例えば、生産設備や流通網を構築するために巨額の投資が必要となる業種では、創業後すぐに国際展開を行うことは困難です。

国内市場で成功した後に、国内市場から得た収益で早急に国際展開を実施する

最後に、国内市場で成功した後に、国内で得た収益で早急に国際展開を実施する企業が多いです。特にニッチな市場で地位を確立し、そこで得た強みをエンジンとして国際展開を行う企業が多いです。

現在ではこれまで説明した特徴を持つボーン・グローバル企業が世界中で活躍しています。
モバイルアプリの「TikTok」は2016年9月に中国でサービスを開始した後、2017年8月には日本市場、2017年9月にはインドネシア市場へと急速に国際展開を進めています。
個人資産管理・家計簿アプリケーションを提供する日本企業「マネーツリー」は2013年から日本市場で順調に成長し、2017年にはオーストラリア市場への進出を果たしました。

ボーン・グローバル企業の強み

ボーン・グローバル企業の強みは、カスタマイズされた製品の開発よりも、グローバルなニッチ市場での生産とマーケティングの標準化能力の高さです。日本の慶應義塾大学の琴坂准教授は「グローバリゼーションが進行した現代は世界的な価値連鎖を最大限に活用する時代」だと説明しています。自社工場を保有せずに、社員数5名程度でも国際的なオペレーションが実施できる時代が現代です。現代には、機動力に優れた「小さなグローバル企業」が活躍できるという特徴があります。以前まではボーン・グローバル企業の多くが技術系のものづくり企業で世界的に競争力のある部品を世界中の完成品メーカーに輸出していましたが、現在ではボーン・グローバル企業のカテゴリーは広がり、インターネットサービスを始めとして、ファッションや情報機器などのカテゴリーにも拡大しています。

 

 

ボーン・グローバル企業の注意点

ボーン・グローバル企業が落ちやすい落とし穴に、「ハイテク・ボーン・グローバル企業の罠」という言葉があります。これは特にテック企業のスタートアップで起こりやすい現象で、技術志向でサービスの開発を進めるていても、対象となる海外市場が急速に推移した結果として、柔軟な技術戦略の変更ができず、製品が市場に受け入れられなくなるという現象です。このリスクを負わないために、海外市場に対しては技術志向ではなく市場志向が重要となります。自社のコア技術に固執せずに、マーケットにマッチした製品が成功の鍵となります。

ボーン・グローバルの事例

ボーン・グローバル企業はTikTokなどのIT産業などのハイテクノロジー産業に多く確認できますが、他の産業でも確認できます。例えば、電動バイクを展開するテラモーターズや、電気自動車を展開するGLMもボーン・グローバル企業の代表企業です。
今回は以下の企業について詳しく説明していきます。

ウェザー・ニュース

気象情報サービスを展開する日本企業のウェザーニュースは、1986年の創業の2年後には、早くも米国法人を設立して国際展開を開始しています。現在は日本以外に、世界20の国・地域に拠点を保有する世界最大級の気象情報企業となっています。売上高の24%を海外市場から得ており、まさにボーン・グローバル企業といえる存在です。
同社の取り扱う気象情報はどこでも必要となる情報であるため国際展開に相性がいいということや、また、同社の創業者がアメリカの海洋気象調査会社の日本法人社長だったということも、ウェザーニュースの国際展開の追い風になりました。

メタップス

メタップスは2007年9月操業のマーケティング事業やネット決済代行を提供する企業です。同社は2011年から海外進出を開始し、2020年4月時点で8か国に拠点を保有しています。売上高の39%、売上総利益の47%を海外市場から得ており、早期のグローバル化に成功した企業です。メタップスは、海外市場の展開において、人材を現地採用し、各地域での戦略も現地で計画・実施するなどして、海外事業を強化しています。

マネーツリー

マネーツリーは2013年から日本国内で個人資産管理・家計簿アプリ「Moneytree」を提供しているFintechベンチャーです。2年連続のApp storeでのbestアプリケーションであり、日本三大メガバンクから出資を受けるなど、日本国内で順調に成長し、2017年にオーストラリア市場へ進出しました。CEOであるPaul Chapman氏をはじめ、創業者の3人は全員日本人ではありません。現在も社員の半分以上が外国人ですが、日本初のスタートアップで本社も日本に存在しています。未だ現金による決済が主流である日本で、将来的に長く使われるサービスを目指しています。

モビンギ

モビンキは企業向けにアプリケーションをクラウド管理するプラットフォームサービスを提供している日本企業です。創業者のWayland Zhang(張卓)氏は、カナダや中国で企業を数社作り成功させた連続起業家です。日本人の妻の要望で東京に来日し2ヶ月、「日本語が全く話せなくて、普通の仕事に就職することは困難である」という理由で、日本語も話せないまま日本人の共同創業者を見つけて起業したスタートアップです。モビンギの法人登記は日本で、従業員も日本人が多いですが、アメリカのベンチャーキャピタルから出資を受けたこともあり本社を一時的にアメリカに移転したこともあります。

メルカリ

日本のフリーマケットアプリ「メルカリ」は2013年のサービス開始以来、5年間で7100万ダウンロード、月間ユーザー数1000万人を突破した人気アプリケーションです。商品の出品数も100億個を超え、2018年6月には株式市場に上場、上場時の時価総額は3516億円に達しました。海外展開では米英に進出し、今後も欧州を中心に事業を展開する予定です。「メルカリ」の他にも、決済サービスの「メルペイ」や投資ファンドである「メルカリファンド」など、多角的に事業を展開しています。

テラモーターズ

日本で初めてのボーン・グローバル企業として有名なテラモーターズは、アジアで電動バイク事業を実施しています。創業者である徳重氏の「国内市場はいずれ縮小するため、成長するアジア市場を国内需要としてターゲットにする意識が必要である」という考え方を根幹に置き、創業後すぐにベトナムやインド、バングラデシュの3拠点で同時にサービスを提供し始めました。6~7年かけて電動バイク事業で安定的な収益を確保した後、次なる市場としてテラドローンを創業し、ドローン事業に進出しました。徳重氏自ら、国内事業とオーストラリア事業を同時に実施しています。

 

 

GLM

日本の京都大学発の電動自動車メーカーの「GLM」は、世界的なガソリンカーからEVへのシフトを目指して、 EVのプラットフォームの車体開発を行っています。世界最大の市場である中国からの注目を集めて、2017年に香港の投資会社から資本調達するなど、開発拠点は日本ですが、中国をターゲットにした電動自動車事業を展開しています。

ボーン・グローバルの成功条件

国際展開に相性がいい製品やサービスを提供していること

ボーン・グローバル企業は、国際展開に相性のいい製品やサービスにおいて成功しやすい業務を行っています。特に上記で説明したようなハイテクノロジー産業や情報通信産業においては、製品やサービスそのものや、それを実現する技術においても、地域性が意識されることはほとんどありません。

 

 

国際展開に必要な組織・ネットワークを構築できること

国際事業展開を実施するためには、世界規模での人材の確保や関連業者とのネットワークを構築できるということも重要な成功条件となります。
そして企業を経営する経営陣の資質も重要な成功条件です。経営者が、ビジネスに関する専門知識だけでなく、国際経験やネットワークを持っていたり、リスクを負いながら国際展開を目指す精神面を持っていることなどが、ボーン・グローバル企業誕生の成功条件の一つとされています。

ボーン・グローバル企業で求められる人材

ウェブサービス

ウェブサービスの場合、UI/UXを担当するデザイナーや、サービスを拡大するための広報担当者の確保が必須課題になります。特にボーン・グローバル企業では、国によってデザインや広告の仕様が異なるため、進出先の国に詳しい現地の人材の確保は必須と言えます。エンジニアは事務職ほど英語力を求められないことが多いですが、しかし、管理職クラスのエンジニアは現地のエンジニアを統率するためのコミュニケーションスキルと語学力も必要になります。

メーカー

メーカでは、事業内容として製造しているハードウェアについて詳しい人材の確保は必須となります。また、ハードウェアに対してソフトウェアを組み込むことのできるエンジニアや、ソフトウェアの基となるアルゴリズムエンジニアも重要です。ハードウェアとソフトウェアの両方の分野が詳しい人材は活躍の機会があります。研究開発や製造においても語学は必要ですが、技術ベースでコミュニケーションが進むという特徴もあります。以前のアメリカのホンダでは、日本人とアメリカ人のエンジニアが言葉抜きでプログラムのみで会話していたという逸話もあります。しかし、事務職は語学力が必要となり、英語力は必須です。CEOがアカデミック出身または技術者出身の場合は、事務職を統率できる右腕となる人材が必要とされる場合も多く存在します。

大学発ベンチャー

大学発ベンチャーの研究開発ではアカデミック経験のある人材が求められています。大学発ベンチャーなので、創業者がアカデミック出身であることが多いです。そのため、ビジネスやファイナンスについての経験・知識が豊富な人材も必要となります。アカデミック出身者と一緒に仕事をする機会が多いことから、営業や広報担当者などのビジネスサイドの人材が事業内容について知識を持っていることが必要となる場合があります。

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