ネットワーク外部性とは、利用者の規模や利用頻度が、その製品やサービスの利用価値に影響を与えることを指します。
例えば、「なぜあなたはFacebookやTwitterを使用しているのですか?」と聞けば、「周りの人々が利用しているから」「利用しないと人と交流できないから」と答えるでしょう。このような場合においては、その製品やサービスの機能や品質によってではなく、利用者数や端末数などによって利用価値が決まっていると考えることができます。なお、利用者数や端末数のことを「ネットワークの規模」といいます。
ネットワーク外部性は特に、不特定多数の他者とのコミュニケーションを前提とする製品やサービスに対して働くことが一般的です。一方、例えば、食料品や化粧品を購入するときには、その製品の機能や品質、価格の優劣を基準に購買を検討することがほとんどです。このようなことから、こういった特性を持つ製品やサービスにはネットワーク外部性が働かないと考えることができます。
ネットワーク外部性は、極端に高い市場シェアを獲得する製品やサービスによく見られ、いわゆる「デファクトスタンダード」と呼ばれる製品やサービスの多くでは、ネットワーク外部性の効果が影響しています。
目次
ネットワーク外部性の種類
ネットワーク外部性には「直接的ネットワーク外部性」と「間接的ネットワーク外部性」の2種類があります。
直接的ネットワーク外部性
直接的ネットワーク外部性とは、ネットワークの規模がそのまま利用者にとっての利用価値を作用する性質のことです、例えば、利用者が増えれば増えるほど便利になるFacebookやTwitterなどのSNSが該当します。また、例えば携帯電話を購入する場合を考えると、一人の消費者が得る効用は明らかにその携帯電話のネットワークを使っている他の人々の数に左右されます。多くの人がそのネットワークに参加しているほど、一人の消費者の効用は増加すると考えられており、「正のフィードバック」が発生しているのです。
直接的ネットワーク外部性には、上述したSNSや、電話、FAX、電子メール、チャット、インスタントメッセージなど、相互接続機器やコミュニケーション・サービスに典型的に見られます。
間接的ネットワーク外部性
間接的ネットワーク外部性とは、ある製品やサービスのネットワークの規模に応じてそれらに関連する補完財の量や質が決定され、その結果が利用者にとっての利用価値を作用する性質のことです。
例えば、Blue-ray レコーダーが普及すればするほど、補完財であるBlue-ray対応ソフトが増え、その結果としてBlue-ray レコーダーを選択することの価値が高まる現象が該当します。
決済サービスや交通系ICカードの普及には、間接的ネットワーク外部性が働くとされ、この場合に補完財となるものは決済サービス・カードの利用端末(設置店舗)とされています。
間接的効果が見られる製品・サービスには、上述したBlue-rayレコーダーのほか、コンピュータやビデオ、CD、家庭用ゲーム機(機器とソフトウェア)、クレジットカード/電子マネー(決済手段と利用場面)などがあります。直接的ネットワーク外部性と同様に、製品が普及すればするほど、補完財が多く提供され、さらに普及が促進されるといった「正のフィードバック」が起こります。
ネットワーク外部性の作り方
次の二点がネットワーク外部性をはたらかせる際の条件となります。
「クリティカル・マス」を突破できるだけの利用者数を確保すること
「クリティカル・マス」の概念は、アメリカの社会学者であるエベレット・ロジャース氏が提唱した、新アイデアや技術の社会への普及モデルの中の鍵となるものです。
ネットワーク外部性が働く製品やサービスには、利用者が増えれば増えるほど製品やサービスの価値が高まり、その結果さらに
利用者が増え、そしてまた価値が高まるという「正のフィードバック」が働きます。
また、そのような製品やサービスには普及率が一気に跳ね上がる分岐点である「クリティカル・マス」が存在するとされています。この「クリティカル・マス」を確保するためには、初期の利用者を確実に獲得する、初期段階では利益を度外視してでも戦略的な価格設定を行う、などの戦略があります。
特に、この「利用者の確保」に関しては、一時的に製品やサービスを無料で提供して、積極的に利用者を集めることも有効な手段の一つとされています。
補完財の数を確保すること(間接的ネットワーク外部性を狙う場合)
間接的ネットワーク外部性とは、PCのハードウェアとソフトウェアのように、ネットワークの規模に応じてその製品の使用価値に直接関係する補完財の提供される量や質が決定され、そうした補完財の存在が消費者にとっての製品の価値を左右するといった効果です。そのため、製品が普及すればするほど、補完財が多く提供され、さらに普及が促進されるといった「正のフィードバック」が起こります。そのため補完財を作る、あるいは作ってもらうための仕組みを構築する必要があります。
ネットワーク外部性の企業例
Windows
かつてマイクロソフトのWindowsが市場を席巻した際、その成長の原理としてネットワーク外部性が説明に用いられました。まず、WindowsをOSとするOCの利用者が増えれば増えるほど、データのやり取りなどにおいてWindowsのPCを利用することが便利となるという「直接的ネットワーク外部性」が働きます。次に、Windowsが普及すればするほど文書作成ソフトやウイルスソフトなどのWindows対応ソフト(補完財)が増えるという「間接的ネットワーク外部性」も働きます。その結果Windows用にはより多種類のソフトウェアが提供されるようになり、ユーザーにとってもソフトウェアの選択肢が増えるため、Windowsを選ぶメリットが高まります。これら両方のネットワーク外部性が働くことによって、Windowsは圧倒的なシェアを獲得しました。
FacebookをはじめとするSNSもネットワーク外部性が働く代表例の一つです。例えばFacebookには、「直接的ネットワーク外部性」と「間接的ネットワーク外部性」の両方が働いています。利用者数が増えるほど、利用者間のコミュニケーションの利便性や魅力が高まるのは「直接的ネットワーク外部性」の働きで、Facebook上で展開されるゲーム(補完財)の数が増えることでFacebookの価値が高まることは「間接的ネットワーク外部性」の働きと言えます。
逆に、提供しているサービスが時代にそぐわなくなりユーザー数が減ってしまうと一気にアクティブユーザー数が減ってしまう、ということもあり、直接的効果は諸刃の剣となることもあります。
携帯電話
携帯電話もネットワーク外部性の効果を大いに得ています。
たとえ世界に一台だけの携帯電話を自分一人で持っていたところでは利便性がありませんが、電話をしたい相手も携帯電話を持っていると利便性が生まれます。
最近では、通話機能以外の連絡手段も増えてきているので、それらを包括的に利用できるスマートフォンが主流です。同じスマートフォンを使っている人が増えることでスマートフォン自体の価値が高まってゆきます。
また、同じ携帯電話会社の携帯電話同士の通話が無料になるなどのサービスもあるため、同じ通信会社を使っている人が多ければ多いほどに無料通話ができる相手も増えるため、ここでもネットワーク外部性が発揮されます。