ビジネスモデル

SPA(エス・ピー・エー)

SPAとは

SPAとは

SPA(エス・ピー・エー)とは、自社ブランド商品の規格から販売までのすべてを自社で完結させるビジネスモデルです。
それまではアパレルメーカーが主導し商社や卸売り業者、小売業者がそれぞれの役割を行っていましたが、企画・デザイン・製造や資材調達・物流を小売業が一手に行うようになりました。
主にファッション業界を中心に浸透したビジネスモデルでSPAが製造小売りと訳されるように洋服やファッション雑貨を扱う小売業が製品の企画・デザインから製造、販売までを主導して手掛けることをさします。
従来はアパレルメーカーが企画・デザインを担当し、素材は商社が調達し、流通は卸売業者が手掛けて、小売店が売るという完全な「水平分業」でいたがSPAは「垂直統合」モデルともいえ、ある意味アンバンドリングの逆のビジネスモデルです。

SPAでは小売業者が原材料の調達、製品の企画、製造、流通、マーケティング、販売までを一貫して行います。それにより現場から直接、商品の販売動向や顧客ニーズが把握できたり、把握したニーズや販売動向を迅速に生産計画に反映することができます。その結果在庫のコントロールが容易となり、また外部にも痛くして生産することによってコストダウンを図ることができます。

またSPAを採用するユニクロをはじめとした多くのアパレル企業は製品企画と物流、販売を統合することで、顧客情報に基づいた製品の企画や在庫・生産の管理を行っており、また生産設備は自社では保有せず、生産をコストが低い国の企業に委託する「ファブレス経営」を採用しています。

 

SPAの歴史

SPAの先駆者とされているのはアメリカのアパレル企業「GAP」です。GAPも今や全世界に3000を超える店舗を持つ巨大チェーンですが、当初はロサンゼルス・サンフランシスコにあるリーバイスをあつかう小さなジーンズ店でした。

しかし自分の体形にフィットいたカジュアルウェアを気軽に楽しみたいという西海岸のベビーブーム世代のニーズを感じて創業者であるフィッシャー夫妻は幅広いサイズのファッションを取り揃えていましが、サイズの幅の選択が不自由な点、特別なサイズのものは小売価格も安価に設定できなかった点から徐々に自社のオリジナル用品を府やしSPAの着火剤となったのです。

 

 

SPAの種類

リテイル型

リテイル型は「後方垂直統合」と呼ばれ、流通業者がちゅうしんとなって製造部門を統合する携帯です。代表企業にユニクロやGAPが挙げられます。

ユニクロはもともとナイキなどのブランド製品を販売する小売業を主体にしておりましたが、製造部門を取り込むことで、他社製品の販売をやめて自社製品の販売に特化する決断をしました。

これはバリューチェーンの川上を統合するという意味で「後方垂直統合」であり、「リテイル型SPA」とよばれています。

 

メーカー型

メーカー型は「前方垂直統合」とよばれ製造業者が中心となって流通部門を統合する形態です。代表企業にZARAやH&Mがあります。

ZARAはもともと製造業者から出発し小売業に進出することで、SPA事業社となりました。

この場合、バリューチェーンの川下を統合する「前方型垂直統合」となり、「メーカー型SPA」と呼ばれています。またユニクロが素材や品質にこだわり、ファッション性は基本的なものを重要視するのに対してZARAは機能性や品質よりもファッション性にこだわり、流行を先取りする戦略をとっています。結果として、ユニクロは商品自体の入れ替わりが少なく、

シーズンを通して販売しながらZARAはわずか数週間で商品をいれかえています。ZARAの短期間で売り切るという先着は顧客にとって気に入った商品があれば、その場で購入しなければ手に入らないという購買意欲をあおっています。

 

SPA第二世代

GAP やユニクロはSPAによって商品の価格の安さに重点的な価値を置いていますが、SPA第二世代はトレンド、すなわちスピードに価値を置いてきました。
ファッション業界においてトレンドは重要です。
スウェーデンのH&MやスペインのZARAはそのトレンドに価値の主軸をおいてきました。
目まぐるしく変化するトレンドに対応するためZARAは若手デザイナーを多く抱えてパリコレ島でトレンド情報を得たらすぐに商品開発を行います。大量生産はせず意見的に少量を売り場に出しその後の売り上げ状況から生産量を変えるというスピーディで機動な戦術を採用しています。企画から販売までのスパンはわずか2週間、あるいは15日程度といわれており、こうしたトレンドファッションの鮮度の高さはSPAだから実現できることであり、ZARAにかんしては同じ商品は基本的に一定数しか作らないためお店に行く度に違う商品が並んでいるという印象を受けます。
それもそのはず、ZARAは同業他社のアパレル企業にくらべ顧客の来店回数が約6倍と言われています。その場で飼わなければ売れてしまうしネットショップでもすぐにセールに出して売り切り、とにかく商品の回転率が高いのがZARAです。これらの点からSPA第二世代は「ファストファッション」と呼ばれています。
余談ですがZARAはほとんど広告を出しておらず、普通の企業なら莫大になる広告費も非常に少ないため高い利益率も誇っています。

 

 

SPAのメリット

コスト削減

第一にSPAは企画・製造・販売を小売主導で手掛け、より良い商品をより安くスピーディーに提供できます。

それまでは各段階で中間マージンが発生し価格が高くなるというデメリットがありました。しかし、小売業者は企画から販売までを一手に引き受けることで他の業者にかかるマージンを省いて利益率を上げています
大量生産を委託方式にしてコストダウンを図ることが重要です。そのため、生産委託先へのコントロールが可能であるとともに商品の品り組みが必要となります

スピード

それまでは企画・デザインのアパレルメーカーや資材調達の商社、また卸売り業者も兼ねていたため実際の製品化に半年以上かかることもありました。製品化が遅れることで流行をつかめないというデメリットが発生していました。しかし、小売がすべて一貫して行うようになってからはすぐに売り場に並べることが可能となりました。

特にスペインのZARAはこのスピードの面では特に力を入れており、有名デザイナーではなく、若手のデザイナーを多く抱えながらパリコレのトレンドを表現したファッションを瞬間的に売り場に並べています。

 

ニーズに合った製品開発

小売り現場の情報をもとに、商品の企画や生産管理が行えます。
最終消費者との接点から顧客ニーズを発見し、それを商品企画へとはんえいできる体制や仕組みが必要です。また現場の流れ筋情報や在庫情報を生産管理へとはんえいするための情報システムも必要になってきます。

 

在庫管理が容易

サプライチェーン全体の管理とコントロールができ、原材料の調達や生産、販売など広範囲の機能の管理が必要となるため、サプライヤーや委託先の管理、および自社担当範囲の明確化など、サプライチェーン全体の最適化や全体デザインの構想力が必要です。SPAにおいては店頭での売れ筋情報や在庫情報を、生産現場や物流現場へと反映させるために情報を活用した、サプライチェーンの管理が重要になっています。

 

SPAのデメリット

大量生産による消費者離れ・飽き

製造小売りでは生産や原料の調達を他社に依存していることが多いため、それらの企業との関係が悪化したり取引先にトラブルが発生したりして、生産委託や調達が不可能になるとSPAの実施に刺傷が出ます。
またSPAを採用するメリットの一つに規模の経済による大量委託生産によるコストダウンがありますが、顧客ニーズがとらえられなかったり、顧客に飽きられてしまったりと、事業ボリュームを確保できず、コスト・リーダーシップ戦略の効果が低下したり膨大な売れ残りが出て企業の存続さえも危ぶまれるようになります。

 

 

SPAの代表例

ユニクロ・ザラ・GAPなどのアパレル企業

以上のアパレル企業はSPAの発端となった業態です。これらの企業の戦略やビジネスモデルは上記を参考にしてください。

JINS

JINSは「PCメガネ」や「花粉カットメガネ」などの斬新な商品とともに一式5000円以内で購入できるメガネを販売する企業として圧倒的な低下価格を提示しているSPA企業です。ほぼすべての工程を自社でおこない中間マージンをなくしたからこその眼鏡の安さが人気の秘密です。

従来の眼鏡チェーンではメーカーから小売りに至るまでの流通が多層であり、それぞれの業者がマージンをとるため、眼鏡一式の小売価格が数万円にものぼっていました。

また顧客への商品の引き渡しにも日数がかかっていたため、それらの問題をJINSが解決しようと当初韓国から仕入れた格安フレームとレンズを組み立てて販売する事業を展開しました。

それはうまくいきましたが、同様のビジネスを手掛ける企業も出始めてきたために、企画を自社で行い、廉価で販売するためにSPAを導入いました。

現在ではほぼすべてのフレームが自社オリジナルの設計かつ、主に中国の委託先工場で生産、また、福井県の眼鏡浴人の技術指導や眼鏡の一部に日本製の高品質な部品も取り入れたりするなど眼鏡の質の向上化を行いました。

また、小売り現場での売れ筋情報を素早く生産へと反映させることで、販売の機会損失を減らしながら、前述したような脅威の一式5000円の高品質な眼鏡をスピーディに顧客に提供できる仕組みを作り上げているのです。

 

カインズホーム

カインズホームは全国に約200店舗を持つホームセンターです。同業他社に比べてPB(プライベートブランド)商品が多く、そのPB商品が安くて品質がいいことから人気を得ています。驚くことにカインズホームの売上高の約4割をそのPB商品が占めています。1989年に創業し、SPAを業界内で先駆けて導入した先駆者で、12000点を超えるPB商品を販売しています。

従来のホームセンターでは建材やDIY商品、ガーデニング商品などの仕入れ販売が主流でしたが、その方法では売り場作りは商品のメーカーや卸、問屋に委ねられて店頭で売れ残った商品はメーカーに返品されるため、必ずしも現場からみて顧客ニーズを反映した商品の品ぞろえや売り場作りが困難でした。

そこでカインズはSPAを採用することで店頭での顧客ニーズを反映さえたPB商品の企画・製造を開始しました。

実際にカインズはPB商品の企画を行う担当者を100人以上もそろえて、店頭で顧客ニーズをを吸い上げながら生産を中国にある取引先工場へと委託することでリーズナブルかる顧客ニーズを抑えた商品を生産しています。

カインズの代表的なPB商品に「パンクしにくい自転車」や「割れにくい食器」などがあります。

 

 

ニトリ

ニトリは言わずと知れた安価で高品質な家具チェーン店です。ニトリはベトナムなどにある自社工場での家具の製造、またコンテナ船も自社で手配するなどの徹底したSPAを実践して成長を続けています。

ニトリの場合はコンテナ船などの物流プロセスも自社内に取り込んでいるため、製造物流小売業という独自の変化を遂げています。

 

 

ファンケル

ファンケルは化粧品企業です。化粧品企業はOEMという方法で多くの下請け会社が存在しています。

OEMとは他社ブランドの製品を製造している企業のことで薬事法などの法定な手続きも行っています。

こうした中ファンケルはOEMなどの下請けを50社以上使っているとされており、化粧品や健康食品の原材料を自社で調達しOEM先に提供、そのファンケルが提供した原材料をOEMが利用し生産した化粧品をファンケルが大量注文しファンケルが自社店舗やコンビニ、薬局に流し販売。ここで約50社の価格競争が起こっているのでファンケルは価格のコントロール権を握っていることになります。SPAとは少しわかりづらいですが、ファンケルも自社ブランドのバリューチェーンをコントロールしているという点ではSPAを実践していると言えるでしょう。

ファンケルは化粧品の仕様やコンエプト、広告・ブランディング、パッケージデザイン、そして販売戦略を主に行っています。

 

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