マーケティング, 経営戦略

マーケティングミックス(4P)

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マーケティングミックスとは、ターゲットとするセグメントに対してどのようにアプローチをするかという具体的なマーケティング戦術です。主に「4P」と呼ばれる要素をマーケティングミックスと呼びます。4Pとは、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の頭文字であり、これら4つを整合性を持たせながら裁量の形に組み合わせる(ミックスする)ことを考えます。

 

 

4Pとは

4Pとは、ターゲットとなる顧客に働きかけるためのマーケティングの4つの要素のことです。
ニール・ボーデン氏が1950年ごろにマーケティングミックスを、ジェロム・マッカーシー氏が1960年に「4P」を提唱しました。

製品(Product)

1つ目の「P」である「製品」とは、製品戦略を意味します。
「どのような製品やサービスを提供するか」、「どのような顧客をターゲットにするか」などブランドの展開や新たなブランドの構築などを考えていく製品戦略を意味します。そのためにはまず初めに、製品の特長やコンセプトを明確にするところから始めます。
この中では、製品の製造から製品の具体的なパッケージ案、コンセプトの確立、顧客に対する保証やサポートの有無と内容に至るまでを分析し、足りない部分がある場合は試行錯誤しながら製品の設計を実行していきます。
 

価格(Price)

2つ目の「P」は「価格」を意味し、商品やサービスの価格設定を行います。
消費者にとって適正な価格かどうかや、競合他社の動向なども見極めて、利益を確保できる適正価格を設定します。価格設定は利益に関わるため、経営にも直接的につながる要素です。そのため、価格戦略は非常に重要な戦略です。
価格の設定には、製造・人件費などのコストに利益を乗せる方法や競合他社の製品から設定する方法、また、差別化を図るために製品やサービスにプラスアルファの価値を加えて価格を設定するなど様々な方法があります。
状況に応じて値下げなどを行い、消費者が納得できる価格に調整することも重要です。
また、価格戦略では価格を設定するだけではなく、ブランド力や競合他社との競争力を落とさずに価格の維持を図ることも重要です。
 

流通(Place)

3つ目の「P」は「流通」を意味しており、「チャネル戦略」と呼ばれることもあります。
ターゲットとなる顧客が、必要な製品やサービスを必要なときに適切な場所で提供できるかどうかを分析します。
「Place」とは、どこで製品やサービスを提供するかという点に限らず、「顧客にとって利便性があるか」「買いやすいか」なども追求していきます。
市場への流通チャネルがなければ、顧客へ製品やサービスを届けることができません。
そのため、顧客の利便性を向上させるためには、流通チャネルの構築が重要です。直販や代理店契約での販売などの販売方法や販売エリアの選定などを行い、流通チャネルの最適化を行うことが重要です。
 

プロモーション(Promotion)

4つ目である最後の「P」は、広告・宣伝などの戦略である「プロモーション」です。
プロモーションは製品やサービスの認知を高め、需要を喚起して購買につなげることが目的です。
具体的には、SNSや紙媒体などの各種メディアを通しての広告や宣伝はもちろん、イベント開催、店頭でのPOP掲示やダイレクトメール送付、営業などが直接販売を行う人的販売などがプロモーションに該当します。近年では、コンテンツマーケティングなどネット経由でのプロモーション手法が用いられる場合もあります。
企業のプロモーションは企業側からの一方的な広告・宣伝のみと思われやすいのですが、プロモーション戦略では企業と消費者の双方の間での「コミュニケーション」が重要になります。
コミュニケーションを通して消費者の購買意欲を変化させ購買へ繋げることから、コールセンターなどを設置して消費者とのコミュニケーションを図る企業も多く存在します。
 

4Pの前にSTPを行う理由

4Pの前にSTPを行う理由は、ターゲットやポジショニングが違えば4Pも変わってくるからです。妊娠検査薬を例に挙げましょう。妊娠検査薬のターゲットは「子供が欲しい人」「子供が欲しくない人」の2種類が考えられます。
子供が欲しい人がターゲットの場合は、ポジショニングは「簡単に間違いなく診断すること」になります。
一方、子供が欲しくない人をターゲットにした場合は、ポジショニングは「妊娠していないことがすぐに分かり、安心させること」になります。すると、どちらをターゲットにするかによって、4Pも変わってきます。
子供が欲しい人がターゲットなら、「赤ちゃんの顔などが載った明るいパッケージ」「薬局の目立つ場所に置く」というアクションが考えられます。確実に診断できるなら、多少高めの価格設定でも問題ないでしょう。
一方、子供が欲しくない人がターゲットだと、「地味なパッケージデザイン」「薬局の目立たない場所」となります。若い人が多い場合は価格設定は低く抑えた方がよさそうです。
 

4Pを上手く活用するためのポイント

マーケティングミックスを採用したマーケティング戦略の実現には、4Pの活用が欠かせません。次に、4Pを上手く活用するためのポイントを説明します。

顧客を想定する

マーケティングミックスを策定する上で重要なのことは「顧客の情報」をできるだけ具体的に明確に想定することです。「年齢や性別、職業、家族構成、ライフスタイル・趣味嗜好」など、また、「購入権限を持つのは誰なのか」なども含めた想定を行うことでマーケティングミックスの効果は高くなります。
 

4Pに一貫性があるか

マーケティング戦略の実現には、4Pに一貫性があるか確認することも重要となります。薄利多売を目指すことを仮定しても、流通網の確保がなければ売上を最大化させることはできません。4Pの一貫性が無い場合は、顧客が「誰に向けて、どのような理由・思いで購入するのか」などのストーリーを想定しながらチェックすると、一貫性を発見しやすいでしょう。
 

4Pのバランスは整っているか

4Pのバランスが崩れてしまうと、顧客が不安を感じ、顧客が離れてしまう可能性があります。「この製品に対して、設定価格は妥当性があるか」「商品流通を考えた際に、このプロモーションは最適か」など、STPマーケティングの結果をもとに、最適なバランスになるよう4Pを策定することが重要です。
 

4Pは相乗効果を生み出せるようになっているか

4Pのバランスを上手に設定することで、相乗効果(シナジー)を生み出すこともできます。一つの例として、「地域」限定の商品を販売期間を限定して上手に「プロモーション」することで、商品のプレミア感が高まり、相場より「価格」が多少高くても、顧客は納得して商品を購入する可能性が高くなります。策定した4Pが、相乗効果を生み出せるようになっているか、充分に検討することが重要です。

 

 

マーケティングミックスの4Cとは

すでに説明したマーケティングミックスにおける「4P」は、戦略を実施する企業側の視点で行われる手法です。
これに対し「4C」は顧客側からの視点で4Pを捉えたものです。
マーケティング理論が進化していくなかで「4P」を企業の視点ではなく、消費者の視点から見直してみようという流れが発生しまいした。それが、「4C」と呼ばれるフレームワークです。
つまり、「4C」と「4P」は対になるもので、この両方を組み合わせることによる企業側・顧客側両方の視点で、マーケティング戦略を策定していけば、より良い結果を生み出せます。
 

価値(Customer Value)

「価値(Customer Value)」は4Pにおける「製品(Product)」と対になる要素であり、製品やサービスそのものが持つ価値だけに限らず、「何に価値を見出して顧客が購入するのか」、「購入した後にどのようなベネフィットが得られるか」を考慮します。
顧客に「欲しい」と思わせるようなニーズを再現して、購入したことによって得られる満足度やニーズを満たす製品やサービスを提供することが必要です。
 

費用(Customer Cost)

4Pの「価格(Price)」と対になる「費用(Customer Cost)」とは、製品やサービスそのものを購入するためにかかる費用に加えて購入に必要な移動にかかる経費や時間などが「費用」に当てはまります。
購入にかかる時間そのものだけではなく、購入までの検討時間も「費用」に含まれます。
つまり、購入に必要な費用だけではなく購入までにかかった時間も経費の一部として考慮するということです。
これらを踏まえて、どの程度なら製品購入やサービス利用までのコストをかけるのに妥当な価格か、利用しやすいかを検討します。
 

利便性(Convenience)

「利便性(Convenience)」は4Pの「Place」に対するもので、「どのようにすれば顧客が製品やサービスを入手しやすいか」という購入時の顧客の利便性に関する要素です。
どんなに魅力的で優れた製品やサービスであっても、入手するのが困難では販売が難しくなります。
顧客にとっての購入時の利便性を考慮しながら、いかに入手しやすい流通経路や販売方法を実行するのかが重要です。その意味で、4Pの「Place」と合わせて考えるべき要素です。
 

コミュニケーション(Communication)

4Pの「Promotion」と対になる「コミュニケーション「Communication)」はそのまま、顧客とのコミュニケーションを意味しています。
Promotionの部分でも説明しましたが、マーケティングでは一方的な宣伝や情報提供だけではなくサポートやアフターサービスなどの顧客側とのコミュニケーションが必要になります。
一方通行のプロモーションだけを行うのではなく、コールセンターやサポート窓口などを設置し、顧客からの問い合わせやクレームの受け付けを含むコミュニケーションを実行することが必要です。
 

マーケティング戦略の観点から見た4Pと4Cの関係

4Pと4Cには、それぞれの要素間に密接な関係性があるため、マーケティング戦略を策定する上で充分に理解しておくことが重要です。

製品(Product)と顧客価値(Customer Value)

製品と顧客価値は密接に関係しています。なぜなら、企業がいかに「これはすばらしい製品だ」とPRしたところで、顧客側が価値やメリットを感じない限り、製品の差別化には繋がらないためです。
 

価格(Price)と顧客が払う経費(Cost)

顧客が払う価格には、金銭面だけでなく労力や時間などの要素も含まれています。関係性を示す一つの例として、どんなに「価格」が安い製品でも、購入後に時間をかけて顧客自身が製品を組み立てる必要性がある場合は、顧客側の負担が大きいために思い描く販売結果を得られないといった場合があります。
 

流通(Place)と利便性(Convenience)

流通は利便性と密接に関係しています。自宅にいながら製品を受け取れる宅配サービスは、両者の関係性を示す良い一つの例であり、より利便性が高いと感じるものに顧客は興味・関心を寄せるといったデータがあります。
 

プロモーション(Promotion)と顧客とのコミュニケーション(Communication)

広告宣伝によって一方的に企業から顧客に製品・サービスの魅力を伝えるだけではなく、顧客とのコミュニケーションによってより高い販売効果を期待することができます。一つの例として、製品利用後の顧客の声などをプロモーションに反映した場合、顧客はより製品を身近に感じ、購入意欲が高まるといった場合があります。
 

マーケティングミックスの事例

スターバックス コーヒー

スターバックスは1971年USワシントン州で一号店をオープンしてから、世界的なコーヒーチェーンとなりました。1995年に日本進出して以来、店舗拡大とともにファンを増やし続けています。スターバックスでは、自社のビジネスを「コーヒーを売る」事業ではなく、顧客が友人と会話をしたり、考え事をするなど自由に過ごすことできる場所を提供することと価値を定義して、「サード・プレイス」(家でも職場でもない、第3の場所)と呼んでいます。そのような製品の価値があるからこそ、コーヒー1杯が300円台と平均より高額かつ広告宣伝をほとんどしなくても、PRや口コミなどを通じて共感した顧客がスターバックスを利用しています。

製品(Product) コーヒーではなく「サード・プレイス」を顧客価値に
価格(Price) コーヒー1杯300円台
プロモーション(Promotion) 広告宣伝を行わず、パブリシティや口コミ、店頭看板のみ
流通(Place) 大都市中心の直営店がメイン

 

 

ライフネット生命

2006年に設立、「戦後初の独立系生保」として日本で話題になったライフネット生命は、インターネット販売に特化している保険です。対面販売が一般的だった保険業界で、人件費や店舗費が必要ないため「価格の安さ」を訴求しました。不透明という印象を持たれがちだった保険料の内訳をすべて公開するなどして、20〜30代の子育て世代から支持されています。検索エンジンやソーシャルメディアなど主にネット上でプロモーションを展開するとともに、コールセンターでの相談を夜10時まで受け付けるなど、顧客ターゲットにとっての「相談のしやすさ」を実現しました。

製品(Product) 20〜30代の子育て世代のための生命保険
価格(Price) 死亡保障500円~、医療保障1,000円台~など明確かつ安い料金
プロモーション(Promotion) 検索エンジンやSNSなど、ネット上の広告や口コミ
流通(Place) インターネットでの販売に限定している

 

 

ドモホルンリンクル

日本のテレビCMで有名なドモホルンリンクル(再春館製薬所)は、年齢を重ねた女性の肌悩みの解決のための基礎化粧品を提供しています。テレビCMや新聞広告、折り込みチラシなどマスメディアを中心に広告に多額の資金を投入して見込み顧客を集めた後は、コールセンターのオペレーターが顧客の肌悩みに対応するコミュニケーションを展開しました。基本セットが1ヶ月で約36,000円と高額ですが、年間数万円から10万円を超えるようなロイヤル顧客に支持されており、リピート販売によって収益を確立しています。

製品(Product) 年齢を重ねた女性の肌悩みを解決するための基礎化粧品
価格(Price) 基本セットが1ヶ月で約36,000円と高額
プロモーション(Promotion) テレビCMや新聞広告、折り込みチラシなどのマスメディア
流通(Place) 電話やダイレクトメールを中心とした通信販売

 

 

freee

日本の株式会社freee(2012年創業)が2013年にリリースしたのが、全自動クラウド会計ソフト「freee」です。中小企業やスタートアップ、個人事業主など「スモールビジネス」をターゲットに、経理の専門知識がないユーザーでも扱いやすい会計ソフトを目指しています。クレジットカードや銀行各社との連携、レシートのスキャン登録、自動仕訳AIなど、従来まで人間が実行していた作業を自動化する機能が特徴です。従来の会計ソフトは、店頭などでパッケージを購入してPCにインストールするタイプが主流だった中、freeeはクラウドでサービスを展開しています。インターネットで契約から支払いが完了して、インストール不要で利用できるということで、ネットリテラシーの高い層のニーズにいち早く対応しています。当初はデジタル中心の広告を展開したことで、「リリース1年後に契約件数6万件を突破」とユーザー数が増加しました。今までの買い切り型のソフトとは異なり、サブスクリプション方式を採用しており、毎月の支払が安価なため小規模な企業にも採用される会計ソフトになっています。

製品(Product) スモール・ミドルビジネスに特化した便利な機能(自動化など)を搭載したクラウド会計ソフト
価格(Price) サブスクリプション型月額1,980 円~
プロモーション(Promotion) 当初はデジタルマーケティング中心
流通(Place) インターネットで契約から支払いまで可能

 

 

ラクスル

日本のラクスル株式会社(2009年設立)が運営する、印刷のシェアリングプラットフォームが「ラクスル」です。全国の印刷会社と提携、印刷機の非稼働時間を使って印刷するという独自のビジネスモデルを採用して、安くて早いネット印刷を実行しています。「ネット印刷」というカテゴリーでは、事業開始当初は最大手企業が圧倒的な認知度を誇っていた中、テレビCMを使った大規模なマス広告を展開することで、それまでネット印刷を使っていなかった顧客層にもリーチしました。地元の「印刷屋さん」に発注していた中小企業や、コピー機・家庭用プリンタなどで印刷していた店舗・個人といった様々なニーズに対応して売上を拡大しました。ラクスルの平均客単価が1万円ということから、小ロット印刷が売り上げの主流であることが想定されます。

製品(Product) 印刷機の非稼働時間を使うことで、安くて早いネット印刷を行うサービス
価格(Price) チラシ・フライヤー1.1円~
プロモーション(Promotion) テレビCMなどのマス広告を採用
流通(Place) PC・スマホから注文して、宅配でお届け

 

 

マーケティングミックスはSTP戦略との一致が重要

マーケティングミックスの前段階では「STPマーケティング」を使って戦略の立案を行います。
STPとは、市場を細分化する「セグメンテーション」、細分化したセグメントからターゲットとなる市場を決定する「ターゲティング」、決定したターゲットの競合との差別化やベネフィットを宣言する「ポジショニング」の3つから構成されるフレームワークです。これらの3つのプロセスを実行して、マーケティングの基本戦略を策定します。
STP戦略を実施することで、「何を」「誰に」「どのように」製品やサービスを提供するかという基本的な方向性が決定されます。
マーケティングミックスでは、そのSTPマーケティングの内容と誤差が生じている場合、顧客のニーズが合わない、価格が高すぎて手が出ない、製品の情報や魅力が顧客に伝わらないなどマーケティング効果が薄くなります。
マーケティングミックスとSTP戦略との一致に加え、4Pの内容が一貫していることも、マーケティング方法の効果に関わってきます。
このことからも、マーケティングミックスはSTP戦略と整合性が取れているかが重要となります。

 

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