CtoCとは、(Consumer To Consumer:消費者間取引)の略称で、消費者と消費者の個人同士で製品を売買したり、情報を共有したりすることを仲介するビジネスモデルです。CtoCは他にも「C2C」や「個人間取引」とも呼ばれます。
インターネットやモバイルデバイスの普及によって、CtoCの仲介を行うプラットフォーム事業者やサービスが急増しましたが、実はC2Cは昔から存在しているビジネスモデルです。よく週末に開催されているフリーマーケットやガレージセールも個人間取引です。一方、近年特に注目されているのは、インターネット上で個人と個人を仲介するプラットフォームです。
インターネット創成期に生まれたサービスとして知られているサービスは、音楽ファイル交換サイトの「Napstar」です。「Napstar」は「音楽ファイルをアップロードできるサーバ」と「曲の検索機能」を提供するプラットフォームです。このサイトを利用することで、人々は個人間で音楽ファイルを交換することができます。個人間取引を意味する「Peer to Peer」という用語はもともと、このNapstarのように「データを共有する者同士のコンピューターが繋がる」という意味のコンピューター用語でした。Napstarは楽曲の違法コピーを提供しているとしてアメリカレコード工業協会(RIAA)などから訴訟を起こされ、2000年にサービスが消滅しましたが、ネットを介したビジネスモデルに大きな影響を与えました。
C2Cのビジネスモデルとしての特徴は以下の通りです。
- CtoCを安全に行う「システム」を提供する
- 自社で決済システムの開発・運用が可能な場合は、リピート購入や決済手数料収入などの付加価値を生む
C2Cで継続的に収益を得るためには、プラットフォーム事業者が利用者に対して、常により便利な取引の仕組みや安全性、信頼性を提供し続けることが重要です。特に相手の顔が見えないインターネット上では、違法性を排除し、取引の信頼性を担保し続けるためのシステム構築が必要となります。
目次
CtoCビジネスの市場規模
国内のCtoCマーケット規模は近年大きく拡大しています。日本の矢野経済研究所の調べによると、2018年のCtoC物販分野の流通総額が1兆50億円規模に達し、前年の8,669億円よりも大幅に増加しているという調査結果が発表されています。
2019年の流通総額は、2018年をさらに上回る1兆1,800億円に達すると想定されており、今後さらなるCtoCビジネスの成長が見込まれています。CtoCのサービス分野について注目してみると、最も市場規模が大きいのはAirbnbをはじめとした民泊サービスで、2018年の成約総額は前年比75.0%増の633億円という調査結果が発表されています。
また、ライドシェア(26億円)や家事代行(32億円)など、他ののCtoCビジネスにおいても成長率が150%以上の上昇が記録されています。
なぜ、CtoCの市場規模がこれほど拡大しているのか?その1つの理由として、CtoCサービスのメインユーザーに若者が多いことが理由の一つとして挙げられます。
若年層のうち、年収200~400万円の層は節約志向が高く、安価にモノやサービスを獲得できるシェアリングエコノミーを積極的に活用することが判明しています。また、30~40代の主婦層もシェア志向が強く、子供服や玩具などを安価で獲得することができるため、メルカリなどのCtoCサービスを利用する傾向があると判明しています。
CtoCビジネスのメリット
CtoCサービス利用者のメリット
商品が高く売れたり、安く買えたりする
消費者が商品やサービスを共有し合うシェアリングエコノミーにおいて、CtoCでは商品やサービスを企業から購入するよりも比較的安く商品やサービスを獲得することができます。
例えば、中古品の雑貨や化粧品、洋服、家具や家電を安価に手に入れられる日本発祥のサービス「メルカリ」が代表的なCtoCサービスです。そのため、一般の消費者にとっては「商品やサービスを安い代金で手にすることができる」ことがCtoCサービスのメリットの一つとなります。
販売者は不要な物や資産を購入してもらうことにより収益を得ることが可能となり、さらに個人間取引のため消費税を払う必要がないため、リーズナブルな価格設定ができることもメリットです。
一方、購入者側のメリットは、市場価値より商品やサービスを安く購入できる点です。「物を安く獲得したい」という需要に基づいて、販売者側もリーズナブルな価格を設定するため、購入者側が驚く値段で購入できることがあります。
CtoCビジネス提供者のメリット
在庫を持つ必要がない
一般消費者相手に自社の商品やサービスを販売するBtoC企業と異なり、CtoCビジネスでは自社が余剰在庫や不良在庫を抱えるリスクがないのが大きなメリットの一つです。
CtoCビジネスの提供者の主な収益源は、サービスの利用料金や、商品の取引価格の一部を差し引く手数料となります。プラットフォーム上で取引される商品は、消費者同士が提供し合います。そのため、原則として提供者側は自社で在庫を持つ必要が無いのです。
CtoCのサービス提供者は余剰在庫や不良在庫を抱えることなく、消費者間で取引を行いやすいようにプラットフォームの改善や訴求に注力できるのがCtoCというビジネスモデルの特徴であると同時に強みでもあります。
また、在庫の管理をする必要がない分、消費者(販売者と購入者)がどれだけ快適に取引をできるかという点に力を入れることができます。この訴求力に注力できるという点もCtoCサービス提供者側のメリットです。
CtoCビジネスのデメリット
CtoCサービス利用者のデメリット
トラブル発生時の責任の所在
消費者に取引の場を提供しているCtoCビジネスの多くは、個人間の取引でトラブルが発生した際にサービス提供者側が責任を負わないのことが一般的になっています。提供者側はトラブル防止のため、利用者向けのルールやガイドラインを更新したり、サポートを行っていますが、個人間取引でのトラブルは当事者同士のやり取りや自己解決で責任を曖昧にするケースがあります。
そのため、購入者や販売者の間で、商品のキャンセルや返品、配送の遅延、送料の負担の有無などのトラブルが起こった時、相手によっては不誠実な対応がされる場合や、さらなるトラブルに発展する場合があります。
「商品がキャンセルされた」「代金を支払ったが商品が届かない」「商品が破損していた」などの予期しないトラブルが発生しても、基本的には販売者側と購入者側で話し合って解決しなければいけない場合があります。
しかし、サービス提供者もサポート窓口の設置や決済に仲介して入金・発送が確認できた段階で料金を支払うなど、様々なトラブル防止策を実施しています。
決済時の保証が無い
決済時の保証が無いこともCtoCビジネスのデメリットの一つです。BtoBのECサイトと違い、取引相手は企業ではなく一般消費者のため、決済を行っても商品が発送されるかどうかの保証が無いという可能性があります。
もしも出品者が悪質だった場合、代金を支払っても商品が発送されない場合もあります。そのため、決済時にサービス提供者が仲介し、購入者の入金と販売者の発送を確認してから料金を支払う「エスクロー方式」などを導入したりするなど、決済時のトラブルを防ぐためにCtoC企業はさまざまな工夫を行っています。
CtoCサービス提供者のデメリット
利用者間のトラブル
取引の商材となる製品やサービスが個人に依存するため、違法性のある出品やユーザー間のトラブルが事件となれば、ビジネス自体が消滅するリスクがあります。実際にフリーマーケットサイトでは盗品や現金が出品されるケースが後を絶ちません。パトロールシステムをオペレーションとしていかに取り組むかが重要です。また、個人間取引の仲介プラットフォームの運営は模倣困難性が低いため、いかに早く競合よりもユーザー規模を獲得できるかがビジネス成功の鍵となります。
利用ユーザーを増やすための対策が必要
CtoCサービスを活性化させるには、一定規模の利用者数が必要となります。しかし、サービスを立ち上げた段階で知名度が低いため、中長期的な目でマーケティング施策を実施する必要があります。
例えば、SEO施策に基づいた自社メディアの運営、さらに広告やSNSを利用しての集客など、自社に相性の良いマーケティング施策を実施することが重用です。CtoCビジネスで成功するためには、利用者数を増やすことが最も重要な課題となるため、マーケットの開拓や自社のサービスがユーザーの目に留まる機会を増やすなどのアプローチが必要不可欠です。
コストが必要
CtoCサービスの収益源は、利用者の会員料金や利用手数料などであると説明しましたが、CtoCサービスを成功させるには、自社のプラットフォームを利用するユーザーを増やし、自社のサービスに定着させるマーケティング戦略が必要となります。そのため、市場の開拓や顧客の獲得にコストが必要になることがCtoCのデメリットの一つです。
CtoCビジネスの成功条件
一定規模の市場と顧客が存在していること
CtoCビジネスを成功させるためには、個人間取引が成立するためには、製品や情報を販売したいと考えている出品者と、その製品や情報を購入したいと考えている顧客の両方が一定規模で存在していることが必要です。
利用者の手間を省き、安全性を確保すること
個人間取引で生じる「相手を見つける手間」を解消したり、「安全性」を確保したりするための仕組みが必要です。例えばメルカリは「商品の発送」と「決済」という、個人間での商品売買における2つの面倒な作業を解消するために、競合他社にはない、様々な仕組みを導入しています。
提供品のジャンルが多様であること
ネットワーク外部性によって規模を拡大するためには、多様な顧客ニーズを満たすサービスであることが必要です。フリーマーケットや個人スキルの仲介は、提供品のジャンルが多様であるため、その成功例と言えます。
CtoCビジネスの事例
Airbnb
Airbnbは家や部屋を貸したい人と借りたい人をマッチングするCtoCサービスです。提供される家や部屋ではホテルのようなサービスは提供されませんが、宿泊場所を安価で確保したい消費者が多く存在しています。部屋を貸す側の個人のメリットとしては、使っていない部屋が収益を発生させるというメリットがあります。
Airbnbはもともとアメリカで誕生したサービスですが、現在ではアメリカだけでなく日本を含む世界中で人気のサービスに成長しており、旅行者の間で人気です。オリンピックのような大きなイベントでは、地域のホテル不足解消に貢献すると想定されています。
同様に個人宅の空き駐車場をマッチングする日本発祥のサービスである「akippa(アキッパ)」などが注目されるなど、シェアリングエコノミーのビジネスモデルが様々な場所で発展しています。
メルカリ
メルカリは2013年7月に、スマートフォンに特化したフリーアーケット(個人間取引)のプラットフォームとしてサービスを開始しました。他の個人間オークションサービスが多く存在している市場への後発参入にもかかわらず、スマートフォンに特化した独自サービスを展開することで売り上げを拡大し、2018年には株式市場のマザーズに上場しました。メルカリの収益源は、ユーザー同士の個人間取引で成立した売買代金の10%の手数料です。
メルカリの最大の特徴は、スマートフォンのみで出品や購入ができる容易さです。出品する際に必要な操作は、①スマートフォンのカメラで販売したい商品を撮影、②アプリ上の指示に従って商品情報や短いコメントを入力するだけです。このような操作性の改善や気軽さの実現によって従来のオークションサイトには出品をしていなかった若い女性や主婦などの新規ユーザー層の開拓に成功し、利用者を急速に拡大させました。
他にも、全国のコンビニエンスストア大手3社と提携することで、「出品者自身が行う梱包と発送」という個人間取引ならではの手間を大幅に省略したり、電子マネーサービスである「メルペイ」を導入し、メルカリで売り上げた金額をメルカリ以外の実店舗でも利用できるようにするなどの仕組みを構築して、他社との差別化や顧客満足度の向上を実現しています。
メルカリの月間の利用者数は1657万人にも上り、メルカリ上での総取引額は1641億円となっています。(2020年6月時点)
ココナラ
ココナラは、イラストやWebデザイン、翻訳、占いなどの「個人のスキル」を売買できるフリーマーケットサービスを運営する日本企業です。会員登録者数は130万人、出品されているサービスカテゴリーは200種類以上あります。
ココナラの独自性は、もともとBtoBやBtoCでの取引が主流だったサービスを個人間で可能にしたことです。具体的には、出品側には受注機会の増加という価値を提供し、顧客側にはコスト削減という価値を提供しています。例えば、商用利用が可能なキャラクター作成は3000円~10000円、外国語での資料作成は4000円から注文できます。発注したい内容と予算を設定して受注者を探すことができる「公開依頼」という機能も用意されています。
出品者と顧客の両者とも匿名での利用が可能で、サービスを利用する際は「トークルーム」と呼ばれる非公開の掲示板でメッセージのやり取りを行い、取引が成立したら、ココナラが決済の代行を行い、取引後は出品者と顧客の双方の評価を公開します。
このようにして、ココナラは、個人間取引においてトラブルになりがちな、利用者のプライバシー保護と安全な取引を提供することに成功しています。
ココナラの収益源は、出品者の販売総額に応じた仲介手数料です。金額によって段階的に設定されています。
販売総額 | 手数料 |
---|---|
1円~5万円以下 | 25% |
5万円超~10万円以下 | 20% |
10万円超~50万円以下 | 15% |
50万円超 | 10% |
(2020年10月時点)
「BtoC」「BtoB」「BtoE」とは
次に、「BtoC」「BtoB」「BtoE」のそれぞれの種類について説明していきます。
BtoC(Business to Customer:消費者向け取引)
BtoCとは、企業が販売する商品やサービスを消費者に提供することです。BtoCが世界で最も行われている販売形態と言えます。一般的なECサイトやショッピングモールなどで消費者向けに提供されている商品やサービスはほとんどがBtoCであり、現在でも市場規模が少しずつ拡大しているため、BtoCビジネスを展開する企業の中でデジタル戦略を行っていない企業は無くなってきています。インターネット上ではでは越境EC(国を超えた商品の販売)も活発化しており、海外市場に日本の商品を投入するという企業も増加しています。
BtoB(Business to Business:企業間取引)
BtoBとは企業間で商品やサービスを取引をすることです。商品やサービスを販売する者も、それらを購入する者も企業ということを意味します。インターネット上でもBtoBサービスは存在するのか、という疑問を持つ人もいると思います。近年ではBtoB向けのECサービスの市場規模も拡大しており、企業の購買プロセスも少しずつにデジタルへと変化しています。
BtoBビジネスを展開する企業ではEDIのみならず、インターネット上での購買プロセスに注目しながら、デジタルマーケティングを活発に行ったり、Webサイト上から金額の見積や商品の発注ができたりする仕組みを構築している企業も多く存在しています。
BtoE(Business to Employee:企業と従業員の取引)
BtoEとは、会社の商品やサービスを一般の消費者ではなく、従業員向けに提供する販売形態です。この販売形態においては、企業にとって従業員は消費者であると捉えます。例えば、従業員に特別な商品やサービスを販売したり、通常よりも価格を安くして商品やサービスを販売したりすることが例として挙げられます。
以上までの説明のように、「BtoC」「BtoB」「BtoE」にはそれぞれ違った意味や特徴があり、ビジネスの形も様々存在しています。
BtoGとGtoC
上記以外にもBtoGとGtoCというの特殊な分類もあります。2つの特殊な種類についても説明します。
BtoG(Business to Government:企業から行政)
BtoGとは、企業が行政向けに提供している商品やサービスのことです。例えば、消耗品や道路工事、経営コンサルティングなどさまざまなモノやサービスがBtoG形態で提供されています。BtoGでは行政機関が起業よりもパワーバランスが強い場合が多く、取引する企業も固定化されている場合も多いです。BtoGの分野でビジネスに参入するというのは難しいことかもしれませんが、そうした固定概念に縛られず斬新なアイデアを提案することができれば、行政という強力な顧客を得ることができます。
GtoC(Government to Customer:行政から消費者)
GtoCとは、行政から消費者に対して行われるサービスのことです。また、「Government to Citizen:行政から市民」とも言われています。行政が個人に対して提供するサービスで代表的なものは、例えば住民票や戸籍謄本、パスポート、e-Taxやインターネット上での確定申告、スポーツ施設や図書館などの電子予約などがあります。直近の話題でいえば2020年東京オリンピック・パラリンピックのチケット販売などもGtoCサービスに該当します。
CtoCビジネスの課題
CtoCは、インターネットの普及に伴って発展してきたビジネスモデルですが、信頼関係のない個人間で商品の売買を行うため、商品の品質保証、代金決済などの点において、取引者間に不安を持つことが課題となっています。
そこで、このような課題を解決するサービスとして、法人が第三者として代金決済を仲介する「エスクローサービス」や、販売者側の個人が法人に販売を委託するビジネスモデルである「CtoBtoCサービス」などが誕生しました。
エスクローサービスとは取引の安全性を保証する仲介(第三者預託)サービスのことであり、取引がインターネット上で成立した時点で、販売者と購入者との間を第三者のエスクローサービス提供会社が仲介することで、「代金を払ったが商品が届かない」、「商品が偽物・故障品だった」、「商品を送ったが代金が支払われない」などのトラブルを防止することができます。
CtoBtoCサービスは、販売者に代わって販売や配送業務を代行するだけでなく、販売する商品の品質査定なども法人事業者が行うことで、品質保証や代金決済などの課題を解決する仕組みのことです。
CtoCは拡大している市場
多くのビジネスモデルがある市場の中でも、CtoCは大きく成長し続けている市場です。スマートフォンが普及してから大手フリマーケットサービスなどを活用する人が増加している背景もあり、今後もさらに市場拡大が拡大すると想定されています。
CtoCのビジネスモデルは一般の消費者同士が商品を売買するためのプラットフォームを提供することであることから、自社は販売する商品を持つ必要がありません。このように在庫の管理に注意する必要がないため、事業基盤の整備に集中できることがメリットの一つです。
しかし利用ユーザーを増やすためのマーケティング施策などは自社で行う必要があるため、CtoCのビジネスモデルで市場に参入する際は十分な事前準備を行うことが重要となります。