モジュール化

Modularization

モジュール化とは、それぞれ独立的に設計可能で、かつ、全体として統一的に機能するように小さなサブシステムによって複雑な製品や業務プロセスを構築することです。ちなみにモジュール化の対義語は「統合化」です。
例えば、ワープロとPCの関係を説明します。、ワープロは文書を作るための入力・印字が1台にまとめられて機能する「統合化」された製品ですが、PCは固定されたOSと「文書作成ソフト」「表計算ソフト」「ゲームソフト」を別々に作り使うことができる「モジュール化」された製品です。ワープロは文字を出力する場合においてはとても便利ですが、それ以外の機能を後から追加することはできません。モジュール化の特徴は、後から機能の追加や拡張が可能であることです。
モジュール化は自動車や電化製品などの製造業の各部品をはじめ、OSとソフトの独立設計など、広い産業で摘要されている概要です。
モジュール化と関連した概念に「レイヤー化」があります。レイヤー化は「産業内の補完関係が縦に積み重なった構造」を指し、モジュール化は「機能の1つひとつが独立で作られること」を指します。

 

 

モジュール化の成立条件

応用可能な「標準化戦略」

モジュール化のビジネスモデルでは、部品やサービスを標準化した上で、組み合わせによるバリエーションを多数作り出せるか否かがコスト効率や生産効率を左右します。
 

 

ほかのプレイヤーに対する「オープン戦略」

モジュール化のビジネスモデルでは、自社のプラットフォームをオープン化することで、外部パートナーと共に新たなビジネスを創造することが重要です。オープン化に際してはユーザーのニーズを調査した上で、パートナー選定を行うこと、外部パートナーへの収益配分の妥当性を検討することが重要です。
 

 

模倣困難性の高さ

同一のプラットフォームを基盤とするモジュールは、他社に容易に模倣される脅威があります。一方、アプリサービスなどでは、自社が製造するモジュールの独自技術が強く、模倣困難性が高いほど、有料課金による収益獲得の可能性が高まります。
 

 

モジュール化のメリット

再利用が可能

製品がモジュール化されていない場合、製品全体の内部構造を把握していなければ部品を作ることができませんが、製品がモジュール化されている場合はその部品が関係するインターフェイスさえ把握できていればモジュールを作れるというメリットがあります。これは市場への参入障壁を低くするばかりか、そのモジュールだけで機能や性能を高めることができるために技術的な競争が起こります。
モジュールの機能が把握されインターフェイスが標準化されている場合、異なる製品の間でも、同じモジュールが再利用することができ、この再利用によってシステム設計や変革のコストをさらに節約することができます。モジュールの再利用の機会が多ければ多いほどこの効果は大きくなるため、「範囲の経済」に基づくメリットとも言えます。

 

 

変革に伴う効率のロスを小さくできる

全体のシステムの変革において、変革を局所化することにより変革に伴う効率のロスを小さくできるメリットがあります。これは効率と変革が両立しない問題において重要な役割をもっており、伝統的にシステム効率を最大化するために採用されてきた機械原理によれば、要求される機能を実現するのに必要な構造以外はできるだけ排除されるべきだとされています。この理由は、重複していたり不必要に長かったりして無駄が多い構造は、不生産的なコストをもたらし不具合の原因となる可能性もあるためです。
しかし、実際のシステム効率は環境との相互作用で決まるもので、環境が変化すればそれに合わせてシステム変革が必要になります。一方、システム変革を通じて好都合な環境を形成しようとする場合もありますが、いずれにせよ、システムを変革しようとすると、厳密な機械原理に基づいた設計では、システム全体の取り替え、あるいは改造が必要となり大きなコストがかかります。しかし、システムを変革しないと環境との間に齟齬が生じてしまい非効率になっていくため、変革前後の長期的に見た効率上の差が、変革に伴う一時的な効率のロスを相殺して余りあることが変革の正しい形といえます。しかし、これを事前に予測や計測をすることは困難なため、変革に慎重なモーメントを無理な手助けしやすいといったデメリットがあります。これに対して「モジュール化」は、局所的なシステム変革を可能にし、かつ、変革の負担を軽減します。

 

 

分業やアウトソーシングを容易にする

モジュール化には、全体のシステムから時間から切り離して独立した設計を可能にするため、分業やアウトソーシングを容易にするというメリットがあります。これにより、システム設計の時間やリードタイムを短縮することができることや、自社の経営資源を超えた設計も可能になります。
さらに、インターフェイスを公開することで、独立の開発者によるモジュールまで自己のシステムに取り入れることも可能です。または、顧客にモジュールの設計や組換えを任せることも可能になるため、顧客にとっては半分オーダーメイドのシステムを容易に入手できるようになります。以上のように、設計機能を社内や社外に分散できるという点が「モジュール化」第2のメリットです。

 

 

モジュール化のデメリット

製品の差別化が困難になる可能性

互換性の高さを求めるために、複雑で巨大なシステムに組み立てていった際に、車体や建造物などのシステム全体が汎用的で独自性に欠ける設計になってしまう危険性があります。
また、システム全体が複雑で大きすぎた場合は小さな齟齬が生じることもあり、その修正に余計なコストがかかってしまい、本来のコスト優位のメリットを打ち消してしまうかもしれません。
また、モジュールのブラックボックス化や不特定多数によるモジュールの設計が進行した場合、不具合の原因の特定や解消が困難になる可能性もあります。
モジュールの多様化が進めば、組み合わせも増えるため複雑化し、最適な組み合わせを見つけるのに時間を要する可能性もデメリットとなります。

 

 

部品レベルでの技術変化に迅速に対応できるのかの懸念

モジュールの数や多様性が増すにつれて、最適なモジュールとその最適な組合せ方をいかに迅速に発見するか、という作業自体の負荷も大きくなります。そのため、部品の技術変化に迅速に対応できなくなる可能性があります。代替的なモジュール間に品質や信頼性、コストの面でバラツキが存在する場合、このような作業はさらに複雑になり高度な判断を必要とするようになります。これらは、範囲の経済性のメリットを打ち消してします要因になるかもしれません。

 

 

小さなロスが積み重なって結局大きなロスになる可能性

モジュール化は機械原理を緩めた方法であり、その理由としては、標準化されたインターフェイスによって組換えを可能にするために、システム全体の最適化を放棄し、無駄のある設計を許容する方法だからです。一方で、機械原理から自由になった方法ではないため、インターフェイスの標準を無視した思い切った変革を許容しにくいという性質を持ちます。したがって、モジュール化によって構築された全体システムは、つねに妥協的なシステムだと言え、その潜在コストは変革コストの低減によってカバーされますが、過度こまめに環境変化に対応してしまう小さなロスが積み重なって大きなロスになる可能性があります。変革の手軽さが必要以上の変革の誘因となり、結局非効率になる危険性があるのです。
 

 

モジュール化の企業例

フォルクスワーゲンのMQB

フォルクスワーゲンは2012年に、車体の種類や大きさにかかわらず部品を共通にするモジュール化戦略である「MQB(Modulare Quer Baukasten:ドイツ語)」を発表しました。
英語にすると「Modular Transverse Matrix」になります。
自動車製造では、車体やデザインによって部品の仕様が異なり、車種ごとに特注形式で製造が行われるためコストが大きくなります。また、先に製造された部品を後発車に適用するには、後発車のデザインや車種独自の機能の開発に制約が生じます。
これらは自動車製造における非効率的な要素の1つでした。
フォルクスワーゲンのQMBは、90ほどの部品を共通化したうえで、その組み合わせによってエンジンだけでも呼気モジュールや排気モジュールといったバリエーションを作れるようにしました。統一された車台上に部品を組み合わせていくモジュール化は、企業に対して製造コストの削減や開発時間の短縮、生産期間の短縮といった費用の効率化をもたらし、顧客に対しては、上位車種と同じ部品を大衆車種にも使うことによる低価格・高品質な製品の提供を可能にしました。車種ごとの差別化は車体・社内空間のデザインや、シートの快適性などで行い、顧客満足度の向上に成功しています。
 

 

AppleのApp Store

App Storeは、Appleが運営するiPhoneアプリやiPadアプリなどを販売、提供するダウンロードサービスです。ユーザーは基本的に、iPhoneアプリやiPadアプリは、App Storeで入手する必要があります。また、アプリ開発者は誰でも自信が作成したアプリをApp Storeで販売することができ、販売価格に応じた対価を受け取ることができます。(オープン戦略)
App Storeは初代iPhoneの販売から1年後の2008年にサービスを開始し、これまでの約12年間でアプリ開発者にもたらした収益の累計は1550億ドルに達すると発表されています。
スマートフォンの基本的な機能は電話とインターネット、メールでしたが、外部のアプリ開発者によってECや決済サービス、InstagramやLINEをはじめとしたSNS、Spotifyのような音楽配信アプリなど、これまでになかったさまざまなサービスやビジネスモデルが誕生しました
 

 

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2021年9月12日
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