オープンビジネス

Open Business

オープンビジネス(Open business)とは、普通なら自社のみで行われる研究開発を他の企業や時には消費者と連携して、個別の企業では成し遂げられない価値を生み出すビジネスモデルです。
新技術、新製品の研究開発は、自社で独占するもので、クローズドな環境で行うのが普通でしたが、近年では技術や製品のライフサイクルが短くなり、研究開発のスピードアップがより求められるようになりました。そこで自社の技術をオープンにして製品開発を行うことで、自社のみで開発を行うよりもずっと早く、斬新な技術開発を促すオープンビジネスモデルに注目が集まったのです。

 

 

オープンビジネスの提唱者とオープン・イノベーションとの関係

オープンビジネスは、2003年にカリフォルニア大学バークレー校のヘンリー・W.チェスブロウ(Henry.W.Chesbrough)が掲げた「オープン・イノベーション」という考え方を基にしたビジネスモデルです。
オープンビジネスと似たような概念に「オープンソース」があります。オープンソースの「ソフトウェアの開発データを公開して複数の企業や消費者コミュニティと共有することで製品を革新する」ところはオープンビジネスと同じですが、オープンビジネスのキーコンセプトとなる「オープン・イノベーション」を提唱したチェスブロウ氏は「オープンソースはビジネスモデルが欠如している場合が多い」と指摘しています。そのため、研究開発段階から社外と提携をし、市場に流通させるビジネスモデルの開発までを行うものをオープンビジネスとします。

 

 

オープンビジネスの特徴

インサイドアウト

インサイドアウトは、社内のアイデアや資産を社外のパートナーにオープンにすることで新たな価値を生み出す手法です。
成功例として挙げられるのがインテル社であり、同社は80年台に評価は高かったものの、まだ小さかったMPU(マイクロプロセッサ)事業を一気に大きくするためにMPUとそのモジュール部否認をつなぐインターフェイスの構造技術をオープンにしました。これによって、ブランド力のなかった台湾メーカーでもインテルのプロセッサを使用できるようになり、リーダー企業と同じ土俵で戦えるようになりました。結果的にインテルの取引先は飛躍的に拡大しました。パソコン本体にロゴを付けさせることを条件とした戦略も巧みであり、インテルというブランド名を消費者に認知させることに成功しました。

 

 

アウトサイドイン

アウトサイドインは、外部のアイデアを社内に取り込む手法です。P&Gは90年台後半、株価が下がり、経営危機を迎えました。縦割り組織が巨大化して、世界中に分散したことで研究開発に無駄が増えたことでアイデアが埋もれがちになっていたのです。そこでP&Gはオープン化戦略を採用しました。「コネクト&ディベロップ」の名のものに、まず社内インフラネット上に、世界共通の技術開発サイトの「イノベーション・ネット」を開設しました。同サイト上で、生物・科学・パッケージなど100以上のテーマの研究開発が、違う研究部門の人間同士のチームを組んで実施され、また一部の研究テーマは社外の研究者や専門家に開示しました。ケ㏍的に自社だけでは出てこない画期的な研究開発が迅速にできるようになりました。例えば同社の人気菓子である「プリングルズ」ですが、アメリカでは一枚一枚にクイズなどを印刷した「プリングルズ・プリンツ」が人気です。これは社内の研究開発ではなく、外部研究者とのネット上でのやりとりから開発されました。パーティで盛り上がるという新しい価値を消費者に届けることで大ヒットしました。

 

 

 

オープンビジネスの成功条件

自社と外部企業とでビジネス上の棲み分けがある

共同で新たな価値を開発した場合、その価値を収益化するプロセスでは自社と他社の得意分野が異なる場合に共存共栄が実現します。提携する企業が複数になればなるほど、どの企業の技術がビジネスモデルのどの部分で価値を生むのかを事前に設計することが重要になり、それはどの企業がどの配分で収益を得るのかという重要な問題にも繋がっていきます。

 

 

製品やサービス開発に関わるパートナーに広がりがある

オープンビジネスにおいては、製品やサービス開発に関わるパートナーに広がりがあることが重要になります。自社のコアとなる技術を、複数企業のサービスや流通と組み合わせることができれば、オープンビジネスの適用範囲を広げていく可能性が高まりためです。広がりが増えることで新たな製品やサービスが生まれる可能性も高まっていきます。
 

 

オープンビジネスのメリット

新たな価値を創造することができる

オープンビジネスでは自社が持っていない技術や知見を持った企業や消費者と共同で製品やサービスを研究開発するため新たな価値を創造することができます。また、そこで生まれた新技術やサービスを自社で利用するだけでなく、ライセンス提供などで市場に提供することでさらに新たな価値が生まれる可能性もあります。このように、すべてが「開かれた状況」で行われることもオープンビジネスの特徴と言えます。

 

 

大きな市場を生み出せる可能性がある

大企業にとっては小さい市場という理由で進出できない市場であっても、小さな企業や消費者コミュニティと共同で研究開発を行うことで小さい市場でも投入可能な新たな製品やサービスを生み出し、その市場が大きくなる可能性があります。後述するイギリスの製薬企業であるグラクソ・スミスクライン社はそのようにして外部の研究者や現地の研究者として新薬を研究開発することで貧困国であっても新たな市場を生み出しています。

 

 

オープンビジネスのデメリット

知的財産が外部に流出するリスク

開発のアイデア段階から複数の企業が知見を持っているこのビジネスモデルでは、自社がまだ特許を取得していない知見や技術情報を開示するリスクがあります。その場合、知的財産が外部に流出するリスクにさらされるため、事前に情報開示の範囲や守秘義務の締結を慎重に行う必要があります。
 

 

収益の配分があいまいになる

参加している全企業が納得できる収益の配分を決定できるか否かが、新しい製品やサービスの実現に大きく関わってきます。チェスブロウ氏は「最初にアイデアを思いついた者、あるいはアイデアを活用できる最も重要なビジネスモデルを考案した者が優先的な権利を得ることが妥当」としています。
 

 

オープンビジネスの企業例

セコム

企業や一般家庭にセキュリティサービスを提供するセコムは、防犯のノウハウから得られた知見やデータを基にして、さまざまな企業と新たなセキュリティ製品やサービスを開発しています。例えば、同社は従来の防犯カメラでは目視できなかった範囲の警備を実現するために、「NEDE」や「KDDI」、「テラドローン」などの企業と連携して、ドローンによる遠隔撮影を4G LTE回線を通じて送信する実験に取り組んでいます。このプロジェクトはセコムの「警備システム」、テラドローンの「無人航空機の運航管理技術」、KDDIの「ネットワーク技術」を用いて共同開発されました。
セコムは他にも、ソニートともに犬型ロボット「aibo」を用いたホームセキュリティの開発や、窓ガラスメーカーの「AGC」とともに防犯センサー内蔵のガラスの開発などを行っています。
 

 

LEGO

「企業と顧客コミュニティとの間でオープンイノベーションを行う」というユニークな戦略で成功を収めたのがデンマークの玩具メーカーであるLEGOです。LEGOは社外の人々からブロックを使った面白いオリジナル作品を「LEGO IDEA」と名付けたウェブサイト上で公開し、ファン投票で1万票以上獲得したものを実際に商品化しています。作品の投稿者には売上から固定配当をインセンティブとして支払い、ビートルズのレコードジャケットを再現したレゴ模型が作れるきっとなど、話題作が次々と誕生しています。
「LEGO IDEA」はそれまでLEGOの顧客ではなかった成人層の市場を切り開くことに成功し、同社は2014年に世界最大の玩具企業となりました。
 

 

ゴア

ゴアは防風や防水、透湿という特徴を持つ素材「ゴアテックス」を開発した企業です。もともとゴアはポリマー素材のメーカーでしたが、単に素材を提供するのではなく生地メーカーと共同で防水性と防湿性を高める生地を開発しました。ゴアテックスは「高級なハイクラスの生地のみに採用する」ことを約束し、結果的にゴアテックスは高品質かつ高級な生地としてアウトドア製品に多く使われるようになりました。さらに、「intel inside」のように「GORE-TEX」のロゴが製品に付けられるようなり、ブランドの価値を高めています。

 

 

グラクソ・スミスクライン

イギリスの巨大製薬メーカーである同社は「パテントプール」という手法でオープンビジネスを実践しています。これは利用していない社内の知的財産を外部の研究者がアクセスして使えるように公開するものです。大きな市場をとれる新薬のみならず、市場は小さくとも貧困国に蔓延する病気に対する新薬などの開発に繋がるような仕組みを構築しています。

 

 

 

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2021年10月6日
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