ビジネスモデル

マルチ商法

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マルチ商法とは、自社製品を売る販売員を社外に設けて、販売員同士を上下に階層化し、上位の者が下位の者から売上のマージンを得るビジネスモデルです。「ネットワークビジネス」や「MLM」とも呼ばれており、上位の販売員が自分の顧客の中から新しい販売員をスカウトし、ネットワーク状に販売チャネルや新たな顧客を増やします。
マルチ商法には、「下位階層に優秀な販売員が増えるほど上位の販売員が得をする」、「顧客が販売員になるため、セルスの際に体験談などの説得力が高い」などの特徴があります。
マルチ商法は、特定商取引についての法律では「連鎖販売取引」にあてはまり、合法的な販売手法です。ではなぜ、マルチ商法にはネガティブなイメージがつきまとうのでしょうか? それは半世紀も前に問題になった、「ネズミ講(モノなしマルチ商法)」という違法な仕組みと、広がっていく仕組みがよく似ているためです。

 

 

マルチ商法とネズミ講(モノなしマルチ商法)の違い

連鎖販売取引と同じようなピラミッド型の取引に、「ネズミ講(モノなしマルチ商法)」があります。
マルチ商法とネズミ講の違いは、マルチ商法が商品の販売を目的とした組織であるのに対して、ネズミ講は金品の受け渡しを目的とする組織である点にあります。
ネズミ講は「無限連鎖講の防止に関する法律」という法律により全面的に禁止されており、違反すると懲役や罰金の刑が科せられることがあります。
 

マルチ商法の成功条件

十分に魅力的な製品の製造

マルチ商法では、顧客が販売員候補となることから、本社側に十分に魅力的な製品を開発・製造するための能力があることが前提となります。独特なマーケティング方法を採用しても、紹介する製品に魅力がなければ販売員が努力をしても製品を買ってもらえません。そのため本社側は、及第点の製品ではなく十分に魅力的な製品を開発・製造する必要があります。
 

正当なインセンティブの設定

販売員と顧客を網の目状に増殖させるためには、売上に対する正当なインセンティブの設定が必要となります。例えばアムウェイでは販売員ごとにランクを付け、より上位のランクに昇格するためのモチベーションとなるような仕組みを導入しています。ただ製品を1個売り上げるごとにいくらかの報酬を支払うだけではなく、ランク付けのような他のインセンティブ制度も導入するべきでしょう。
 

下位の販売員のモチベーション管理

事業継続のためには、上位の販売員がより多くのマージンを得ることを下位の販売員に納得させるシステムを構築できるかが重要となります。例えば、上記したような下位の販売員が成績評価によって上位に昇格できるシステムの用意などが必要になります。マルチ商法では、販売員の中で最も多い割合を占めるのが下位の販売員のため、多い下位の販売員のモチベーションをいかに上手に管理できるのかがビジネス成功のカギとなります。
 

マルチ商法のメリット

社員の雇用を最低限に抑えることができる

ネットワークビジネスでは、販売チャネルを社外の人間に委託するため、本社は営業社員の雇用を最小限に抑えることができるというメリットがあります。このように営業社員の雇用を抑えることで、人件費を抑えたり、研究と開発に集中することができます。研究や開発だけでなく他の部署の人間を余分に雇うことで営業部以外の社内の部署の強化をすることもできる可能性があります。
 

グローバルな事業展開が容易にできる

ネットワークビジネスでは、販売員が本社から直接的に製品を仕入れて顧客に販売することから、店舗を持たずに全国規模やグローバル規模で販売活動ができるため、固定費などのコストを削減することができます。また、店舗を必要とせず、一つの国に一つ会社があればいいため、グローバルな事業展開もより簡単になります。グローバルに事業を展開することでブランド力の強化や売上増加が可能になります。
 

自動で販売チャネルが拡大される

ネットワークビジネスの特徴の一つに、販売員へのインセンティブがモチベーション向上につながれば自己増殖的に販売チャネルが拡大できるという特徴があります。インセンティブが販売員のモチベーションとなり、「製品を販売するとお金を得られる」と認知されればされるほど自動的に販売員が増えていくため、本社側が直接的に販売員を雇う必要がありません。そのため、前述したように、より販売員のモチベーションに繋がる魅力的なインセンティブ制度を構築することが重要となってきます。
 

 

マルチ商法のデメリット

法による規制に触れる場合がある

ネットワークビジネスでは、法規制を受けると事業そのものがなくなる可能性があるという大きなデメリットがあります。
日本では、無制限に下位の販売員を増やすことが規制されています。また、販売員に無理なノルマなどが存在している場合は違法となることがあります。
法規制以外では、販売員がインセンティブを増やそうし過ぎた場合に、身近な人間関係を壊してしまうというリスクがあります。
 

仕組みを悪用されるケースがある

ネットワークビジネスでは「新しい販売員をスカウトすると、自信が得られるインセンティブが増える」というネットワークビジネスのシンプルな仕組みを悪用するケースが頻繁に起こります。日本では、SNSの広告枠を販売する企業に対して、消費生活総合センターに相談されたケースがあります。SNS上の広告枠を買えば、その購入額に応じてポイントが付与され、専門のECサイトで商品をポイント購入できるという事業で、新たな購入者を紹介するとポイントが増えるとして、会員に購入者の紹介を促していました。このようなケースでは「必ずお金が儲かる」と宣伝していたことが虚偽であるとして違法になりました。
このように違法性が高い事業だった場合にも、個人から個人への勧誘によって被害者が拡大する点に注意が必要です。ネットワークビジネスを行う際は、収益獲得の健全性と透明性が重要となります。
 

 

マルチ商法の成功例

アムウェイ

ネットワークビジネスの代表例として知られているのが、1959年にアメリカで創業したアムウェイです。アムウェイは、健康や環境に配慮した洗剤や家庭用品を製造し、「ディストリビューター」と呼ばれる個人事業主の販売員と契約をして独占的な販売権を与えます。販売員は本社から製品を仕入れ、自分の身近な友人などに販売することで販売マージンを得ます。販売員は、新たな販売員を自分の顧客の中からスカウトすることもできます。販売員となった独立開業者は、自分より上位の販売員に売上マージンを納めます。販売員の階層が積み重なるほど、上位の販売員が多くの収益を得る仕組みです。
登録しているディストリビューターは2016年時点で69万組、製品の売上高は1,004億円です。なお、ディストリビューターになるには2年目以降、そして年間3,670円の会費が必要で、未成年と学生は登録できません。
アムウェイは、ディストリビューターに対する製品販売と年会費の両方で収益を得ています。
 

 

ニュースキン

ニュースキンは1984年にアメリカ・ユタ州で創業した化粧品メーカーで、現在世界50以上の国と地域で事業を展開している企業です。「ブランドメンバー」と呼ばれる会員制度に登録するとニュースキンの販売員になることができます。
ニュースキンは、販売した商品のマージンだけでなく、設定された期間内での販売数に応じた「ボーナス」制度を設定しています。ボーナスには個々の販売員を対象としたものと、販売員で結成されたチームの売上に対するものがあります。上位の販売員が下位の販売員をサポートして集団で売上を得るもので、教育システムと連動させています。
ネットワークビジネスは販売員が連鎖的に増える一方で、すべての販売員が順調に売り上げを得ることができるとは限りません。そうした背景がある中、ニュースキンの「ボーナス」制度はそのような事態を避けるために、上位の販売員が下位の販売員を支えることで販売活動を活性化させているといえます。

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