生産・物流, 経営戦略

範囲の経済

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範囲の経済とは、取り扱う製品事業の種類の増加に伴って製品やサービスの1単位当たりのコストが低下するという経済現象です。
つまり複数の個別に1つの製品を製造するよりも1社が複数の事業を行って経営資源を共有いたほうが1単位あたりのコストがすくなくなります。

規模の経済とは異なり、規模の経済が単一事業において生産規模拡大で生産コストを逓減させる狙いがあることに対し、範囲の経済は複数の事業の組み合わせで生産コストを節約する狙いを持ち、範囲の経済を追求する場合は一部の既存の設備を共有することにあり、したがって追加投資をほとんど必要としないこともあります。
そうしたメリットから多角化を目指す企業にとっては範囲の経済への関心が求められます。

範囲の経済が発揮される背景に情報の活用という視点があります。情報は日常の活動を行っていれば自然に蓄積されるという性質があり、代表的なものに、経験やノウハウ顧客資産があります。
これらの情報はデータベース等で蓄積することで再利用が可能であり、例えばある事業の顧客への販売情報を蓄積することで同じ顧客に対して異なる製品を販売することも可能となります。
この情報を適切に利用することで範囲の経済の効果が発揮され、また、同じ事業の情報だけを蓄積するよりも、ことなる事業の情報を蓄積するほうが勝ちが高まる可能性があります。
この情報資産をいかに効率よく活用していくかが範囲の経済の効果を発揮させるうえで重要なポイントになってきます。

範囲の経済が生まれる背景には、未利用の資源の活用にあります。
一つの事業を行うのに必要とされる資源が実はその事業だけでは完全利用できないようなものであったり、あついは一つの事業では利用しつくせなかったり、様々な理由で企業の中には未利用資源が発生します。
その未利用資源は、企業内にあある意味タダで存在するので、活用したらしただけ利益となり範囲の経済が生まれます。
未利用資源が既存の事業から発生するのはいくつかのパターンがあります、一番わかりやすいのが既存事業の生産活動から副産物が出てくる場合で、これを結合生産物といいます。

取り扱う製品や事業の数を増やせば範囲の経済は効いてきますが、その際には共有する資源が製品間や事業間で共有こうかをもたらすものであるか否かが重要になります。仮に製品や事業の数を増やしても生産設備や物流網、技術やノウハウなどを共有できないのであれば範囲の経済の恩恵は享受できません。

 

 

範囲の経済の2つの効果

相補効果(コンプリメント効果)

コンプリメント効果は2つの事業や製品が互いに補い合って一つの物的資源をより完全に利用するようにしている効果です。
いわば足し算のような組み合わせ効果で1+1で2を作っているような状況で、物的資源の遊休部分を使い終わるとそれ以上の生産は物理的に不可能となります。工場の遊休部分をつかって暇な時間に別の商品を作るのが典型的です。

 

相乗効果(シナジー効果)

繊維メーカーが蓄積した科学技術を使って高度な化学品の分野を手掛ける場合の範囲の経済が典型的です。見えざる資産という情報的資源を、2つの分野がともに共有しており、化学品分野で技術を使っている分だけ繊維分野を使えないというようなことはなく、互いに干渉しあわずに共通利用ができている。そのうえ、新しい化学品の分野で開発された技術が繊維の高度化に役立つ可能性も生まれます。
お互いに相乗的にいい効果をもたらし合える可能性をもっており、こちらは1+1が3になっているような、掛け算的な相乗効果
です。
このような数式が生まれる理由は相乗効果の背景にある情報的経営資源の特徴である、一つの分野で使っても減らず、かえってふたつの分野の組み合わせから新しい情報が生まれる可能性があることからきます。
相補効果は目に見える物理的資源の共通理由だけわかりやすいですが、効果には限界があります。多角化の一番の書くは相乗効果であり、それも静的シナジーだけでなく、動的な相乗効果(ダイナミックシナジー)が作り出せるような事業の組み合わせが 一番の理想と言えます。
ダイナミックシナジーとは一つの情報的資源をある事業が作り出し、それを別の事業が将来の時点でりようしていく、というじかんさを持った相乗効果で、既存事業が築いた技術の蓄積が新しい事業の発展の基盤となり、競争戦略を優位に展開できるというのが典型例です。
また将来、この二つの事業がともにその技術蓄積を利用できます。将来のある時点で静的なシナジー効果と現在から将来につながる相乗効果の二つの相乗効果が生まれています。

ダイナミックシナジーが最も重要な部分であることも確認されており、多角化戦略が目指すべきなのはこのダイナミックシナジーです。

 

 

範囲の経済とM&A

規模の経済も範囲の経済も一つの大きな資源投入をするとその資産を大規模に多方面に使うことで資源の投入が生きてきます。資源の合体をもたらす企業の境界線の書き換えが起きて、大規模な資源投入ができるようになることにより、規模の経済も範囲の経済も使いやすくなります。

特に研究開発投資や情報システム投資は重要で必要な研究開発投資は典型的に規模の経済と範囲の経済の効果が効きやすく、なぜなの研究開発の結果を生み出すための努力を世界規模の大きな市場需要を満たすために使えば小さな需要にだけ使うより効率が良くなったり、また一つの研究開発の努力が複数の事業分野で使えるような基礎的で応用範囲の広いものなら範囲の経済が生まれます。

またIT革命も規模の経済や範囲の経済の効果が現れやすい投資であり、情報システムは規模を拡大しても事業範囲が拡大しても共通に使えるメリットをもち、そのうえ、多くの産業でITがビジネスシステムのあり方を根本的に変化させつつあります。

M&Aは主に規模の経済と範囲の経済を拡大させる狙いをもって行うことで、反対に規模の経済や範囲の経済を拡大することができない全く関係ない分野ならば基本的に行うメリットはありません。

 

 

範囲の経済のメリット

コストの低下

複数の事業間で生産設備やブランド・ノウハウを共有してコストを下げます。
例えば食品メーカーにおいては、ことなる種類の製品を1つの向上で生産したり、複数製品をまとめて配送することで1つの製品を個別に生産・配送するよりも、複数の製品を同時に生産・配送したほうが費用を抑えられます。
範囲の経済とは、事業の範囲を広げていくと節約できるといった面で経済的だとされています。

まとめて一企業で複数の製品を生産する場合は生産要素に共用可能な部分、例えば生産設備やエネルギー、ノウハウなどの情報があり、そのため別々の企業で行う場合より追加投資や新規投資の総額コストが節約できるからです。
一企業の観点に立てば製品やサービスの種類を増加させることによって全体のコストを引き下げて収益を増大することができます。

 

ブランドの共有

範囲の経済は生産設備や物流以外でも有効です。
たとえばお酒のみの1つの製品を作っているような会社では飲料を新しく作るような設備が充実しているので、アルコール抜きの大衆向けの飲料を作ることも簡単なことに加え、有名な会社ならばブランドで消費者に初めから信頼をえることができます。

 

副産物の産出

また、事業で産出された副産物をほかの事業に再活用することも範囲の経済の例の一つです。

もっとも一般的なのは既存事業で蓄積された情報的経営資源がほかの分野でも利用できることです。たとえば、既存の事業が生み出す技術はその典型です、情報的経営資源の特性として同時共通利用ができるので他の事業分野でも技術が生かせる、その企業にとっては無料で利用可能なため、その技術を独立に蓄積しなければならない企業と比べればコスト優位となるります。
ブランド、顧客の信用、流通網など、様々な資源がほかの分野での利用可能性をもっている。かつ、既存分野で利用しつくされていない、それを利用して新事業に乗り出す。

このように既存事業からの副産物としての未利用資源ばかりでなく、既存事業が何らかの理由で遊休資源を持つことになった場合、その遊休資源を生かしてレジャー施設の運営や不動産業への進出。
またじゃ季節的に客足に違いがあることを利用して暇なときには別の製品を作ったり別の目的で事業をする。
自社のコンピュータが大型機ななので自社だけではその資源を使いいきれない、そのため外部に機能の一部を貸し出す。などが範囲の経済の源泉となります。

 

 

範囲の経済のデメリット

範囲の不経済

製品や事業を増やしすぎると管理コストがあります
取り扱う製品や事業の数を増やしすぎると、事業間の管理コストが増大してしまうこともあります。
多角化を進めれば進めるほど、組織間の事業特性が異なるため管理コストも上昇します。
そのため、製品や事業の間で共有する資源が範囲の経済をもたらすものであるか否かをビジネスモデル構築時に判断する必要があります。また、生産設備や物流網といった資源の場合は、既存のボリュームを検討しつつ共用の可能性を判断、リソースを共用した場合、既存事業の収益が経るようではデメリットになります。

かつてユニクロは「SKIP」という野菜などの食料品販売事に進出したことがありましたが、ユニクロが持つノウハウや資源が共有できず、範囲の経済が発揮されなかったため、需要はあったのでしょうが、早々と撤退せざるをえなくなりました。

 

 

範囲の経済の代表企業

Yahoo Japan

Yahoo Japanは総合インターネットサービスを展開している企業です。ポータルサイトだけでなくヤフオクやYahoo!地図、トラベル、ニュースなど多方面に事業を展開することによって顧客のデータベースやポイントサービスを共通化したり決済サービスの導入によっても事業コストを節約しています。
また、買収した他社サービスにも「Yahoo!」といった消費者が見慣れた語句をつけることによって安心感を生み出しています。

 

 

その他の事業例

合成繊維の企業が繊維分野の技術開発努力の結果作り上げた科学技術を生かしてプラスチックや薬品を手掛ける。
カメラの開発生産プロセスで、エレクトロニクスノ技術が蓄積されると、その技術は事務機器の開発や生産にも使える、このようにその技術を開発するための固定費が複数の事業や製品によって分担されて固定費が低減されます。

また、インクジェットプリンターなどで発展しているエプソンは時計メーカーでありましたが、時計生産のために蓄積した金属精密微細加工技術が、インクジェットのヘッドの生産に利用され、他社製品より圧倒的に画質の優れたプリンターの開発に成功するなど、情報的経営資源についてのダイナミックシナジーがエプソンの成長を後押ししました。

 

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