ビジネスモデル

OEM

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OEMとは、製品の製造を他社に委託し、その製品を自社のブランドとして販売するビジネスモデルです。大手スーパーマーケットやコンビニエンスストアで販売されているPB商品(Private Brand商品)の多くは、このビジネスモデルを採用しています。
販売元がOEMを採用するメリットは、専門的な技術を持つ製造元企業と協力することで、自社だけでは開発できない製品カテゴリーに進出できることです。例えば、クリニックやスポーツクラブで販売されているオリジナル化粧品には「医薬部外品」と表記されている製品があります。これは厚生労働省が許可した健康や美容に有効な成分が一定の濃度で配合されています。「医薬部外品」と表示される化粧品を製造するためには、効果・効能の試験や安全性の試験を行う必要があります。このため、生産ラインだけでなく試験装置や専門人材を揃えた製造元と提携することで、コストを抑えて高品質な製品を作ることができます。
OEMの主な特徴は以下の通りです。

  1. 卸売業者を仲介させず、製品企画、製造、マーケティングで協業する
  2. 販売元は、商品企画、宣伝、販売に注力する
  3. 製造元は、大規模な製造を行うための設備や機器の整備に注力する
  4. 製造元が商品企画を行う場合もある

 

 

OEMの歴史

OEMは本来、下請け製造の一種として生み出されたビジネスモデルでした。コスト競争で優位性を失った企業が生産工程を放棄して受託者となったケースや、または、市場の変化に対応できなくなった企業が他社の生産設備を借りることになったケースがOEMの起源と言われています。
生産を放棄することは、メーカーにとっては苦しい決断であり、当初はネガティブな印象も存在していたと思われるOEMですが、現在では、多様化したOEMがさらなる発展を遂げ、普遍の仕組みとして市場で確実にニーズを獲得しています。
また、OEMが販売戦略として用いられたケースもあり、1980年代前半、ソニーは3.5インチのフロッピーディスクの普及のためにOEMを利用して他社に生産を委託しました。フロッピーディスクを社外のコンピューター機器メーカーにも利用してもらうめに、OEM供給を行い、同じ志を持つ仲間の企業を増やすという戦略でした。
「OEM」はもともと受託者自体のことを表す用語でしたが、製造者や委託製造者、販売者、消費者など、それぞれの立場から解釈や用途が変化していきました。
 

OEMの種類

OEM生産は大きく分けて2つのタイプに分類されます。

1)ブランド名は製造側で製品を製造する

下請製造の一種として始まった製造形態でしたが、生産者側の開発品を相手先のブランド名で供給する点が、下請構造とは異なります。つまり、販売者側が、「魅力的な商品を企画したが、あなたの会社のブランド名で販売しませんか?」と提案するタイプです。
発注する販売者側は、その商品が自社ブランドと相性がよく、良い商品であれば、自社で商品開発をする手間を省くことができます。受託企業の提案だと、その商品を採用した他社ブランドと全く同じになってしまうため、「別注」という形をとって、一部の仕様を変更して生産することもあります。

 

 

2)ブランド名は販売者側で製品を製造する

このタイプでは、販売者側が製品の仕様を決め、完成した製品の管理権と所有権を依頼主が持つことになります。依頼主はOEM受託企業と契約を交わし、仕様書や原料、資材などを受託企業へ提供します。場合によっては、販売者側が技術指導まで行うこともあり、このパターンは、「分業」に該当するかもしれません。

 

 

OEMと「ライセンス契約」「ODM」「PB(プライベートブランド)」「EMS」との違い

OEM自体も多様化していますが、OEMに似たものとして下記の3つがあります。

  1. ライセンス契約
  2. ODM
  3. PB(プライベートブランド)

「ライセンス契約」とOEMの違い

ライセンス契約とは、「知的財産の使用や利用を許諾すること」を意味します。 ライセンス許諾者をライセンサー、ライセンス受諾者をライセンシーと呼びますが、ライセンサーの開発した技術・設計などのノウハウに対してライセンス料を支払い、ライセンシーはライセンサーの製品を製造、販売する仕組みになっています。
ライセンサーはデザインやノウハウをライセンシーに提供しながら、ライセンシーはそれに基づいてブランドイメージに沿った商品を製造、販売します。 基本的には排他的独占契約を結んだ企業だけが商標を使用できるので、価格競争を避けることができます。
一方で、OEMは開発、製造する企業と販売する企業が異なっており、製品自体は販売元のブランドとして販売される点がライセンス契約と異なる点と言えるでしょう。

 

 

「ODM」とOEMの違い

ODMとは「Original Design Manufacturing」を略した用語です。ODMにおいては委託者のブランドで製品を設計・生産します。OEMは委託者のブランドで製品を生産すること、または生産する企業のことであるため、少し似ています
OEMでは受託者は製造のみ行い、OEMの場合は委託者が製品の詳細設計や組み立て図面などを受託者へ支給し、技術指導を行うこともあります。一方、ODMの場合においては、製品の設計から製品開発に至るまで、すべての工程を受託者が行います。つまり、OEMの進化版といえます。

 

 

「PB(プライベートブランド)」とOEMの違い

PBとは、「プライベートブランド(private brand)」を意味する言葉です。近年ではコンビニエンスストアで頻繁にPB商品見かけることがあり、「PB」という言葉の認知度も高くなっています。PB商品は小売店・卸売業者が企画販売するブランド商品のことを指し、メーカーは基本的に製造のみを担当しています。
OEMとほぼ内容は変わらず、家電や食品、日用品、自動車メーカーなどさまざまな業種で利用されているOEMに対して、小売店・卸売などの流通業者のOEMがPBと呼ばれることが多いのが実情です。つまり、実質的には業態は同じものだと言えるでしょう。

 

 

「EMS」とOEMの違い

EMSとは「Electronics Manufacturing Service」の略称です。EMSとは、電子機器の製造を受託するサービス、あるいはそれを請け負う企業のことを指します。 一方でOEMは「Original Equipment Manufacturing」の略称で、発注側が設計を行って、受注側は生産だけを受託する生産形態となります。しかし、EMSにおいては製造だけではなく、設計・部品調達・配送といった流通過程も請け負います。
 

ODMとOEMのどちらを選択すべきか?

自社製品を製造する場合、ODMとOEMのどちらを選択すべきなのか?を解決する3つの要点を紹介します。

コスト

製品を製造するには、主に以下の3つのコストが必要になります。

製造コスト

製造コストとは、工場で製品を製造したときにかかる「材料費」や「労務費」「経費」等を指します。製品を生産するためには最低限必要な経費であるため、ODMとOEMの両方ともに発生するコストです。

 

 

設備投資

製品の生産に必要な機材や環境がある場合は、その環境構築を実現するためにn設備投資を行う必要があります。しっかりとした設備を保有する企業に生産を依頼をすることで、設備投資のコストの削減ができる可能性があります。

 

 

人的なコスト

受託側では製品を現実化するために必要な人的コストが必要があり、委任側は販促や販売するために必要な人的コストが必要になります。委任側も戦略によってコストを削減することが可能な部分と言えるでしょう。

 

 

品質

ODMでは、製品の品質は受託側の技術や知識によって左右される可能性もあるため、委任側が品質向上や改変を望む場合は、以下の方法から最も自社と相性のいい方法を選択します。

  1. 受託側の担当者とコミュニケーションをして品質向上が行えるか協議する
  2. 自社製品の製造に相性のいい技術を持つODM企業に生産を依頼
  3. 自社の技術やノウハウを高めてOEMで製造を行う
  4. 自社でスキルを高めて設備投資をして自社内で生産を行う

委任側は、プランを作成した上でODMを依頼することで、自社が望む製品を製造してもらえるようになります。場合によっては、OEMや自社生産も自社の戦略として考慮していくべきだと言えます。

 

 

長期的な目線

長期的にODM企業またはOEM企業に生産を依頼することによって、技術やノウハウは受託側に蓄積されます。長期的に利用していると、受託側を頼らなければ製品の製造が困難になる場合もあります。
また、自社の製品で蓄積された受託側の技術や知識は、他社の製品や受託側が展開するブランドに反映されるリスクもあり、自社が投資してきた分野の技術が他社に利用されることによって、他社に市場シェアを奪われるリスクの対策も、委任側は考える必要が出てきます。

これらの「コスト」「品質」「長期的な目線」の3つの点を考慮しながら、自社の技術レベルや資金を見直してODM企業を活用するか、OEM企業で製品を製造するかを決定する必要があります。

 

 

OEMの成功条件

一定以上の販売が見込める市場がある

OEMを成功させるためには、すでに販売元が一定数の顧客基盤を持ち、新たな製品カテゴリーを加えた際にニーズが見込めることが条件となります。例えば、スポーツクラブでオリジナルの栄養ドリンクを販売することが例として挙げられます。
 

販売元が強いブランド力を持っている

OEMを成功させるには、販売元の企業に知名度や信頼があり、顧客の購入意思決定にブランドが影響力を持っている必要があります。例えば、外資系アパレルブランドが化粧品も販売することが例として挙げられます。

 

 

 

OEMのメリット

受託した側のメリット

売上が上がる

OEMを受託すると製造量が増えるため、売上が増加するというメリットがあります。製造能力が十分にある企業の場合では、余っている人員や設備を有効活用して稼働率を上げると、より収益が増えていきます。

 

 

ノウハウを獲得できる

委託した企業が販売や企画に優れた企業である場合は、受託した企業は製造に関わることで、製品企画や製造のノウハウを獲得できるというメリットがあります。委託者が高度な技術を持っている場合はその指導を受けられることもあるので、受託した生産側の企業は製造の技術レベルを向上させることができます。

 

 

委託した側のメリット

製造にかかるコストを削減できる

OEMで生産を他社に委託した場合、独自に設備や人員にかけるコストが必要ありません。また、コストを関係なく生産量が調整できるため、在庫を抱えることがなくなります。小ロットでの製造依頼も可能のため、多品種を少量販売する場合、大きなメリットが生まれます。

 

 

コアとなる業務に集中できる

販売を専門としている企業が製造を自社内で行うためには人員の確保が必要です。しかしOEMによって生産をいたくすることで、その分の人員やコストを企画や販売など、ほかの業務に活用することが可能となります。また、設備にかける費用についても同様に、OEMにより製品企画や販売など、コア業務に集中できるというメリットがあります。
OEMを行うと、受託した企業側(OEMメーカー)と委託した企業側、それぞれに多くのメリットがあることが分かります。

 

 

OEMのデメリット

受託した側のデメリット

利益が受託量に左右される

OEMにおいては、委託側企業の意向で製造量が決定されるため、生産量が変動しやすく、安定した利益が得られない可能性があります。さらに、予想以上に生産量が増えたり減ったりした場合、設備や人員、在庫を抱えている受託側にとっては製造現場の負担も大きくなったりコストも必要となる場合があります。

 

 

自社のブランド力を大きくすることができない

OEMメーカーが製造した製品は自社の名前で販売せず、販売者側の名前で販売するため、自社のブランド力が大きくなりにくくなります。委託企業のブランドとして販売されているため、たとえ高い製造技術を持っていても、知名度は高まりにくい状況に立たされます。

 

 

委託した側のデメリット

委託する側にとっては、製造を自社で行わずOEMメーカーにすべて頼っている、という点でデメリットが発生します。

ブランド力が低下すると顧客が製造元に流れる

自動車のように、製造元も同じ製品を販売している場合、販売元のブランド力が弱まると、顧客がより価格の低い製造元の製品に流れるリスクがあります。したがって、販売元はブランド力維持のためのマーケティングや宣伝広告費に投資するコストと、OEMによる製造コスト削減幅のバランスを見極める必要があります。
 

参入障壁が低い

また、製造元は類似した製品を複数の企業に提供することが可能となるため、他社にとって参入障壁が低いこともOEMの特徴です。差別化による競争力を維持するためには、自社に開発部門を持ち、ライバルとなる企業がまねできない商品や技術を持つことが防衛策となります。OEMでは、自社のブランド力と開発能力が他社との差別化となります。この点において、自社に高い製造能力を持つことが競争力の基盤となる「直販」とは真逆のビジネスモデルと言えます。
 

製造のノウハウを獲得できない

OEMでは、製造を外部の企業に委託しているため、自社での製造ノウハウが蓄積できないというデメリットがありまます。販売者がどんなに品質の良い製品を販売していても、実際に製造しているのはOEMメーカーの外部企業のため、詳しいノウハウや技術が獲得できません。

 

 

生産によって利益が向上しない

OEMでは、生産をOEMメーカーに委託しているために、その分のコストが必要です。そのため、本来自社で生産した場合に得られたはずの利益が生まれなくなります。しかし、OEMにはその利益を失ってもでも余りある得られるメリットがあります。

 

 

受託側が競合他社になる可能性がある

OEM生産の委託により、企画や製品開発、販売などのノウハウが受託先の企業に流出することになり、将来の競合企業になってしまうというリスクがあります。そのため、上述したように差別化による競争力を維持するためには、自社に開発部門を持ち、ライバルとなる企業がまねできない魅力的な商品や技術を持つことが防衛策となります。
 

OEMの事例

トヨタとダイハツ

OEMの事例として広く知られているのが自動車メーカーです。日本国内の自動車メーカーでは、ほとんどの企業が他社の製造した車両に部分的な変更を加え、販売メーカーのエンブレムをつけた車種を提供しています。
例えば、トヨタ自動車が販売している軽自動車「ピクシスエポック」は、ダイハツが製造している「ミライース」の車名とエンブレムを変えた車です。トヨタは自社製造のカテゴリーに軽自動車を持っていないため、軽自動車の高い製造能力を持つダイハツから車両を購入して販売しています。他にもトヨタが販売する軽自動車にはダイハツが製造している車体が数種類もあります。
自動車メーカーは各社が車両の開発技術を備えていますが、新しい車種を開発するとなると100億円以上の費用がかかるため、自社の顧客ニーズに満遍なく答えるサービスとしてOEMを実施しています。一方、自社車両を他社のブランドとして販売する製造元にとっては、大きな顧客基盤と販売チャネルを持つ販売元と提携することで自社製品の流通を増やせることがメリットになります。
 

シェフォーレ

毎月のように新製品が登場するコンビニエンスストアのスイーツもOEMの代表例です。日本のセブン・イレブンが販売するスイーツのおよそ5割を開発・製造するシェフォーレ社(森永乳業のグループ会社)は、1日に12万~15万個のスイーツを製造し、首都圏だけで2,500店に出荷しています。
販売元であるセブン・イレブンは大規模工場を持つ企業と提携することで、製造にかかるコストを削減し、その分を物流・流通、企画に集中させることが可能となっています。
製造元は、大規模コンビニチェーンの販売ボリュームを前提とした規模の経済効果によって、スイーツを安価にしても安定した収益を得ることが可能となります。

 

 

他のOEM事例

家電

家電の分野では、例えばスタイリッシュなデザインが人気のデザイン家電ブランドである「amadana」があります。「amadana」の扇風機はツインバード社がOEM生産を行っています。他にもダスキンのガスヒートポンプエアコン室外機はアイシンがOEM生産を行っています。
過去にはOEM供給によって部品のコストを抑えながら生産された製品が安価に販売されてることで、その安価な製品が「ジェネリック家電」として話題になったケースもありました。

 

 

デバイス

携帯電話やスマートフォン、タブレット端末でもOEM製品が多く存在しており、例えばiPhoneやiPadもApple社が各部品を他のメーカーにOEM製造を委託しています。
多くの人に知られている事例としては、AppleによるiPhoneの製造は他社に依頼しており、その代表的なOEM企業としては台湾の「フォックスコン(Foxconn)」という企業がAppleの製品を製造しています。
フォックスコン社は世界最大級のOEM電子機器メーカーとして活動しており、Apple社以外にも多くの企業のOEM生産を請け負って製品を生産しています。

 

 

化粧品

化粧品には、小ロットでの製造から大量生産まで、多くのOEM企業があり、設備や技術力ばかりでなく市場調査や製品企画のノウハウを持つ場合、小規模メーカーでも品質が高く、企画やデザインに優れた製品を生産することができます。
一方で、大手の化粧品メーカーでも独自にOEM商品を自社のラインナップに揃えるなどの戦略を行っている企業も存在します。

 

 

アパレル

例えば、洋服のラベルには「made in ◯◯」と記載が存在しますが、「made in japan」の表記はほとんど見かけません。
まず、洋服にはOEM商品が非常に多く存在しており、ほとんどが海外で生産されています。服を海外で生産すると、コストを抑えることができ、あるデータには10年間で35億枚超の服が輸入されているという調査結果があります。

 

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