ビジネスモデル

パーソナライゼーション

Webサイト制作

パーソナライゼーションとは、顧客一人ひとりにとって価値のある製品や情報を提供するビジネスモデルです。一般的な製品で大きな市場に参入することとは対極にあるビジネスモデルと言えます。この概念は、マーケティングコンサルタントのドン・ペパーズ(Don Peppers)とマーサ・ロジャーズ(Martha Rogers)の著書「The One to One Future」で紹介された、製品単体ではなく顧客への提供の仕方やサービスなどの体験によって差別化を図るものです。
パーソナライゼーションはITの発展によって高い精度での提供が可能になりました。代表的な事例はWebの検索エンジンです。Yahoo!やGoogleなどの検索エンジンは、ユーザーの検索履歴や閲覧履歴データを蓄積・分析することによって最適な検索結果を上位に表示します。Yahoo!やGoogleはこの技術を応用して、ユーザーの閲覧行動に基づいて最適化した広告をWeb上に表示することによって広告収入を得ています。検索エンジンやネット広告、アプリを通じたマーケティングデータの収集、センサーを通じた生体データの収集などによってパーソナライゼーションの種類は多様化しています。
パーソナライゼーションの主な特徴は以下の通りです。

  • 顧客一人ひとりに対して価値のある製品・サービスを提供する
  • 過去の行動や検索履歴データに基づいているため、効率的に購買を促すことが可能

 

 

目次

 パーソナライゼーションとカスタマイゼーションの違い

パーソナライゼーションと類似した用語に、「カスタマイゼーション」があります。カスタマイゼーションの例としては、アプリのレイアウトや表示されるコンテンツを自分の好みに変更したり、必要な機能を追加したりすることなどが例として挙げられます。
パーソナライゼーションとカスタマイゼーションの違いは、最適化を実施する人と最適化の目的と言えるでしょう。パーソナライゼーションにおいては、サービスを提供する側が最適化を実施しながら商品やサービスを通じて顧客体験を向上させ、興味や関心を引いて購買につなげることが目的となっています。
一方で、カスタマイゼーションではユーザー自身が最適化を実施しながら、商品やサービスの使用を通じた体験を価値あるものに変化させることが目的となっています。
 

パーソナライゼーションが重要視される理由

情報収集チャネルが多様化したから

以前まではテレビCMやラジオでの広告といった、企業が不特定多数の顧客に対して一方的に発信する形のマスマーケティングが高い効果を持っていました。
しかし現代では、インターネットの普及やTwitter、Instagram、FacebookなどSNSの浸透などによって、情報収集チャネルの選択肢が多様化し、この多様化によって企業から与えられる情報を受け取るだけでなく、利用者自らが自分の興味のあるものを検索し必要な情報の主体的な収集・比較が容易になりました。このようなことから、以前のように不特定多数にアプローチする広告手法だけではなく、顧客一人ひとりに合わせてマーケティングを行うパーソナライゼーションの必要性が高まっているといってもいいでしょう。
 

利用者の価値観が多様化したから

情報収集チャネルが多様化したことで、利用者の生活や価値観の多様化も進歩しています。
自分の興味のある商品・サービスの詳細をインターネットで検索するだけでなく、SNSなどの口コミや評判から自分のニーズに合った商品・サービスを容易に発掘できたり、自らが発信して投稿をシェアしたりして、トレンドができることも頻繁にある時代となっています。
その結果から、マスマーケティングが効果的だった時代以上に、多様な価値観が生まれるようになりました。そのような背景から、個人の趣味嗜好や属性を尊重しながら、個人一人ひとりに個別のアプローチをするパーソナライゼーションを行うことの重要性が向上しています。

 

 

顧客体験を重視する顧客が増えたから

顧客体験は、カスタマーエクスペリエンス(CX)とも呼ばれており、カスタマーエクスペリエンスは顧客が商品やサービスを体験して、顧客視点でその価値を評価することを意味しています。ここで言う「価値」とは、商品やサービスを購入する前の対応から購入後のサポートまで、顧客が商品に関連して体験したすべてが対象となります。
前述したような情報収集チャネルや価値観の多様化により、商品・サービスそのものの価値だけでなく、顧客体験を重視する顧客は増加しています。
そのため、「より上質な体験」を顧客一人ひとりに提供するという点においてもパーソナライゼーションは顧客へのアプローチとして効果的な手法となっています。

 

 

自分の考えや嗜好に合う商品やサービスを求める顧客が増えたから

カスタマーエクスペリエンスが重要視されるようになったことで、商品やサービスなどの性能を含めて、「自分に合っている・自分を理解しているかどうか」を商品やサービスに求める利用者が増加しています。
「より上質な体験」を通して自分に合っている・自分を理解している商品やサービスだと感じた場合、近い将来ファンやリピーターになる確率も高くなり、それは結果的に競合優位性にも繋がっていきます。
優位性を獲得するためには、顧客一人ひとりへの理解と、顧客一人ひとりに合った適切なアプローチなどが重要となるでしょう。そのような背景もありパーソナライゼーションへの注目が一段と高まっているのです。
 

パーソナライゼーションを行う上で重要な3つのデータ

パーソナライゼーションを行うには、3つのデータが必要となります。

デモグラフィック(年齢・性別などのユーザーの属性情報)

デモグラフィック(人口統計学的属性)とは、年齢、性別、興味関心などユーザーの属性となる情報を指します。
デモグラフィックの情報を得る方法としては、アプリケーションのインストール時や、ショッピングサイトでの会員登録時に、ユーザー自身で個人情報を入力してもらう方法が一般的に行われています。
また、近年ではTwitterやFacebook、InstagramなどのSNSと連携したりして、間接的に情報を得る手法も用いられています。
デモグラフィックはパーソナライゼーションにおいて用いられている最も基本的な情報と言えます。
 

コンテキスト(消費者行動の背景情報)

コンテキストとは、消費者行動の背景となる情報を指します。例えば、ユーザーがサービスを利用する時間帯、アクセスするデバイスの種類、住んでいる地域などが、コンテキストに該当する情報の代表例となります。
コンテキストを得ることで、ユーザーの行動に間接的な影響を及ぼすことができます。例えば、ユーザーの行動範囲が把握できれば、近隣の店舗の情報などを取得し、利用者のアプリ上で「おすすめ」として表示することができます。
また、使用しているデバイスの種類が分かれば、スマートフォンの通知機能を利用するなどして、興味関心に合ったコンテンツを送信することができます。
 

ビヘイビアー(ユーザーの過去の行動履歴情報)

最もパーソナライゼーションの効果が高い情報とされているものが、ビヘイビアーと呼ばれる、利用者の過去の行動履歴です。
例えば、ECサイト上で特定の商品ばかり閲覧する利用者の行動傾向を把握することができれば、その商品に関連したコンテンツを優先的に表示することで、その利用者の購買意欲を向上させることができます。
また、金融機関が提供しているカードローンでは、カードローンに関連するWebサイトの閲覧履歴や、銀行口座のお金の動き方などのデータを用いて、顧客にパーソナライズドしたカードローンのマーケティングを実施しています。
ビヘイビアー情報を把握することは他で紹介した2つの情報を把握することよりも難しいことですが、非常に効果的なパーソナライゼーションを実現することが可能になります。

 

 

パーソナライゼーションのメリット

エンゲージメントの向上

パーソナライゼーションでは、顧客一人ひとりの属性や行動履歴、ニーズを分析し、最適化した情報を提供することができます。このことから、パーソナライゼーションによって、「自分のために労力を使ってくれている」「自分を大切にしてくれている」といった特別感を顧客に提供することができ、上質なカスタマーエクスペリエンスを通して企業へのエンゲージメントを向上させて、顧客と企業とのより高い信頼関係を構築することができます。
一般的に、webサイトの場合は回遊率が高ければエンゲージメントも高くなるとされていますが、回遊率を測定すれば、エンゲージメントの変化を把握することが可能となります。

 

 

既存顧客を維持することによって単価がアップする

パーソナライゼーションによって顧客満足度が上昇した既存顧客は、企業との結びつきや信頼関係がより深くなり、商品やサービスを継続的に購入してくれるようになる可能性が生まれます。
また、顧客はさらなる顧客満足度の向上に期待して、より単価の高い商品やサービスを購入してくれる将来性があります。

 

 

コンバージョン率の向上

パーソナライゼーションによって、顧客のニーズに合致した情報を直接的に提示することで、コンバージョン率が向上する可能性があります。コンバージョン率とは、成約率ともいわれ、ウェブサイトを訪れたユーザーのうちウェブサイトでの成果に至った利用者がどのくらいの割合いたのかを示す指標です。
コンバージョン率は測定可能な指標のため、パーソナライゼーションの成果を証明するためにも、目標を設定しながら数値を測定するべきでしょう。

 

 

潜在ニーズを発掘できる

不特定多数の顧客に対しての分析ではなく、顧客一人ひとりを深く分析するパーソナライゼーションにおいては、顧客自身が気づいていない潜在的なニーズを発掘できる可能性もあります。「実はこんな商品やサービスが欲しかった」「考えたことはなかったけど、こんな商品やサービスがあれば利便性が高まる」といった発見を発掘することができれば、コンバージョン率がさらに向上するはずです。
 

パーソナライゼーションのデメリット

顧客のデータが流出するリスク

パーソナライゼーションでは、多くの顧客データを収集・分析します。そのためセキュリティ保守のシステムを怠った場合、データ流出により事業の継続が困難になるリスクがあります。

 

 

パーソナライゼーション成功の鍵

パーソナライゼーションを成功させるためには成功の鍵となるアプローチがあります。ここでは、効果的な4つのアプローチを説明します。

タイミングを重視

パーソナライゼーションを行う場合、顧客の行動データ履歴に注目しながら、それぞれのタイミングにあわせた情報提供などを行うことが重要となります。例えば、「特定のカテゴリーの商品を頻繁に検索している」、「買い物かごに商品を入れたが購入しないままになっている」などの適切なタイミングで、メールマガジンを配信したりクーポンを配布したりすることが効果的な手段と言えます。タイミングを重視することによって、購買意欲の向上を期待することができます。

 

 

コミュニケーション手段を選択

近年では、顧客の購買行動や価値観だけでなくコミュニケーション方法も多様化しています。例えば、電話やメールだけでなく、SMSやSNSなどの色々なコミュニケーション手段が生まれています。個人一人ひとりによって電話はしたくない、メールは使っていないなど好みや利用状況が違ってくるため、それぞれの状況に応じたコミュニケーション手段を行うことが重要になります。
 

顧客のニーズに合った商品・サービスを提供

顧客はすべての人に合った商品やサービスではなく、自分だけに合う商品やサービスを求める傾向があります。そのため、基本的な顧客情報だけでなく、閲覧履歴や購買履歴、背景情報などの幅広いデータを収集し、収集したデータを基に顧客のニーズを分析し、商品開発やサービス開発を行います。顧客の表面的な情報だけでなく、深層心理を探っていくことも重要なアプローチと言えます。
 

A/Bテストにより顧客の好みを調査

A/Bテストとはマーケティング手法の一つであり、具体的には、AとB異なるパターンのコンテンツを同じ条件下で表示して、どちらの方が特定の顧客ジャンルに受け入れられるのかを調査して、それぞれの属性などに応じた効果的なコンテンツの表示パターンを学習します。1回だけの検証ではなく、場合によっては複数回検証しながら最適解を求めます。
A/Bテストによって属性ごとのパターンや好みなどを学習することができるため、これらの調査の結果をもとにしてより精度の高いパーソナライゼーションを行うことが可能となります。

 

 

パーソナライゼーションの例

YouTube

2005年末にサービスを開始した動画共有サイトのYouTubeは、毎月20億人以上のログインユーザーが利用する大規模プラットフォームです。YouTubeの収益源は、動画の再生時に表示される広告ですが、その広告の表示に際して、YouTubeはユーザーごとの視聴履歴やWebの利用履歴などを用いてパーソナライゼーションを行っています。つまり、視聴者ごとに最適な広告が表示されるシステムを構築しています。このパーソナライゼーションの制度が非常に高いため、多くの広告主はYouTubeに広告を出稿することによって、潜在的な顧客を発掘することができます。これは広告主にとって非常に大きな魅力の一つです。
一方、YouTubeのパーソナライゼーション機能は、視聴者側にもメリットがあります。視聴者の視聴履歴に基づいて提案される「おすすめ動画」は、視聴者自身が膨大なコンテンツの中から自身の好きな動画を探す手間を大幅に短縮しています。
これらのことから、YouTubeはB2B(対広告主)とB2C(対視聴者)の両方にパーソナライゼーションという価値を提供することによって、大きな収益を獲得しているビジネスモデルを実施しているのと言えます。

 

 

資生堂

日本の化粧品メーカーである資生堂が提供する美容液「オプチューン」は、顧客一人ひとりの肌コンディションを、スマートフォンアプリと連携したクラウドでデータ解析し、顧客が所有する美容液タンクにデータを転送して、顧客一人ひとりに最適な美容成分の調合を行う仕組みを構築しています。タンクに設置された5つのスキンケアカートリッジを用いて、8万通りのパターンから配合が決まります。
パーソナライゼーションの元となるのは、顧客自身が撮影した肌の写真から取得される個人データと、資生堂が長年の研究開発で蓄積してきた様々なデータ(季節や気温、外気成分など)との組み合わせです。
オプチューンのパーソナライゼーションは、収益獲得の際にもメリットがあります。パーソナライゼーション・サービスは継続して使うことで効果を発揮するため、顧客は美容液の元となる美容成分が入ったカートリッジを定額制で購入します。パーソナライゼーションによって、これまで単品購入だった化粧品をサブスクリプションモデルに変化させた複合的ビジネスモデルと言えるでしょう。
 

Amazon

Amazonのサービスを利用すると、最近検索したり、購入したり閲覧した商品に似た商品が「おすすめ」として表示されます。これは、「レコメンド機能」というパーソナライゼーション手法のひとつです。顧客の閲覧履歴や行動履歴に合った商品を表示して顧客の興味を引くことによって、webサイトの滞在時間が長くなり、商品の購買率が向上します。
また、「自分の嗜好を理解している」「自分に合った商品をおすすめしてくれる」といった価値あるエクスペリエンスを提供することによって、ブランドや製品、サービスへのロイヤリティ向上も行っています。
 

Google

Googleは、ユーザーが検索したワードを基に、求めているものや意図、目的を予測して、検索結果に反映する「パーソナライズド検索」を2005年からリリースしました。パーソナライズド検索は、ユーザーの所在地、過去に検索したワード、過去に訪問したwebサイト、クリックしたURLなどを参考にして検索結果に表示させていると言われています。
このパーソナライズド検索も、ユーザー一人ひとりの興味関心に沿った情報提供によって顧客満足度を向上させるパーソナライゼーション手法です。
 

スターバックス

スターバックスのアプリは、パーソナライゼーションを常に試行錯誤しているアプリケーションです。スターバックスのアプリでは、すでにアプリが保有している顧客データをもとにパーソナライズされた特別なクーポンが提供されます。ユーザーがいつもどんなコーヒーをオーダーするのか、どの時間帯に購入しているか、どこのお店に行くのか、などの「ビヘイビアー」情報を有効活用しています。
例えば、普段からデカフェの飲み物を購入するユーザーが店舗の近くにいた場合、「デカフェ商品のクーポン」がアプリに送信される一方で、通常はスイーツを購入しないユーザーには「スイーツ1個無料」というクーポンが送信されます。このように、スターバックスはユーザーの趣向に合ったコンテンツを提供しながら、ユーザー一人ひとりに合わせたパーソナライゼーションを行っています。
 

ナイキ

ナイキの提供するフィットネスアプリ「ランクラブ」は、一般的なトレーニングコンテンツを提供するのではなく、ユーザー個人個人に合ったコンテンツを提供しています。ユーザーは、まず初めに自分のエクササイズのゴールを設定します。その後、アプリはユーザーのフィットネス達成度を記録ながら、それらの結果を基にユーザーがゴールを達成するために最適なトレーニング内容を自動的に作成します。自分のレベルに合うトレーニング内容が提供されるため、ユーザーは「パーソナルトレーナー」と一緒に運動をしているような達成感を得ることができます。
ユーザー一人ひとりの体型や運動量が異なるからこそ、トレーニング内容もパーソナライゼーションが必要不可欠となりますが、しかし、パーソナルトレーナーを雇うお金や時間がないユーザーに、アプリを通して同じ感覚を与えるナイキのアプリは、スポーツに欠かせないパーソナライゼーションを徹底したアプリケーションと言えます。
 

Airbnb

民泊サービスのAirbnbは、ユーザーのサービス上での行動情報を基に、表示されるコンテンツをパーソナライゼーションしています。Airbnbでは宿やエクスぺリエンス(現地の人が案内するツアー)を予約することができますが、ユーザーが検索機能を利用すると、過去の旅程や観光地の好みなどの情報をもとに、ユーザーの好みに合った宿や体験を表示します。
それだけでなく、旅先にあるレストランや観光名所までも個人の好みに合わせておすすめしてくれます。例えば、スポーツを好む利用者に対してはコンサート会場ではなくスポーツツアーなどを表示します。このようにパーソナライズドされた宿やツアーの提案はユーザーにとってとても役に立つコンテンツとなります。
 

パーソナライゼーションの成功条件

顧客情報の入手と分析

パーソナライゼーションを行うには、顧客の属性(性別・年齢・嗜好)や過去の購買履歴といった顧客情報が必要です。このため、自社でどれだけの情報を入手し、また分析できるかが重要となります。その際、入手ツール・技術が整備できることや、個人化のためのアルゴリズムを構築できることが求められます。。
 

個人化によって製品やサービスの価値が向上するのか

自社の事業が、YouTubeのターゲット広告や資生堂のように、顧客の属性に細かく合わせることで価値が構造する製品やサービスを持っていることがパーソナライゼーションの成功の鍵となります。

 

 

パーソナライゼーションに関わってくる法規制

パーソナライゼーションは個人情報が大きく関わることから、個人情報の取扱いと規制には十分注意をする必要があります。
個人情報に関する規制は世界各国で行われており、企業は適切に個人情報を取り扱わなければなりません。以下で紹介する法律や法令は、パーソナライゼーションに大きく関わってきます。

個人情報の保護に関する法律

個人情報の保護に関する法律は、個人情報の収集や利用に関する規制を定めており、すべての企業が対象となっています。個人情報に該当するものとしては、住所や氏名、生年月日、電話番号、顔写真、指紋、免許証番号、マイナンバーなども個人情報に該当します。
さらに、個人情報の保護に関する法律は数年ごとに見直されているため、以前は努力義務であった情報漏洩時の通知が義務化されたように、規制や罰則が厳しくなる可能性も十分にあります。そのため、常に最新の情報を確認しながら、必要に応じて対策を行う必要があります。
 

GDPR(General Data Protection Regulation:EU一般データ保護規則)

GDPRとは、EU域内の各国に適用されている、個人データの保護や扱い方について定めた法令です。日本国内の企業であっても、EU域内の居住者に商品やサービスを提供し、個人情報を取り扱っている場合はGDPRによる個人情報の取扱が求められます。
GDPRにおいては、個人の基本的な権利を保護するために、画像、映像、メールアドレス、顧客名簿、音声など、幅広いデータを対象とされており、また、事前の承諾なしにはデータを取得できないことや、個人データの侵害があれば早急に本人に通知すること、本人はデータの削除を管理者に依頼できる権利があるなど、厳しい規制が法令の中で定められています。
 

CCPA(California Consumer Privacy Act:カリフォルニア州消費者プライバシー法)

CCPAとは、アメリカ・カリフォルニア州における個人データ保護に関する法令を指します。
内容としては、画像、映像、メールアドレス、顧客名簿、音声のほか、位置情報、インターネットの検索履歴や閲覧履歴なども個人データに含まれており、GDPRとは異なり、顧客の要請がなければ情報を開示する必要はないことを前提とし、使用については制限を行っていません。
アメリカのカリフォルニア州はアメリカ内で最も人口が多い州であり、大手IT企業の本拠地としても数多く利用されていることから、この規制がほかの州、および他国に及ぼす影響は少なくないと言えるでしょう。日本もその例外ではなく、サービスの利用においてはカリフォルニア州の法律によって個人情報が扱われることなどもあるため、よりハイレベルな個人情報管理を徹底していくべきだと言われます。

 

 

Cookieの規制

近年では、Cookieの利用に大幅な規制を設ける動きが世界中で活発化しています。Googleは、webサイト上の未知の訪問者のトラッキングや、顧客体験のパーソナライズ、広告のターゲット選定などに利用されてきたChromeの「3rd Party Cookie」を、2023年後半に終了すると公式に発表しています。
また、Appleは、2013年からSafariでITP(Intelligent Tracking Prevention)を通じて、Cookieの保存期間の制限や無効化などのデータの安全性対策を行っており、さらにAppleは2021年に更新されたiOSのバージョン14.5からATT(Application Tracking Transparency)を始めることによって、アプリケーションのトラッキングについてユーザーの許可を求めるように要請しています。
「3rd Party Cookie」とは、ユーザーがアクセスしたwebサイトとは違うドメインが発行したCookieのことです。例えば、ユーザーがアクセスしたwebサイトに広告が掲載されていた場合、広告配信サーバーが発行したCookieはこの「3rd Party Cookie」を指します。また、「1st Party Cookie」とは、ユーザーがアクセスしたwebサイトと同じドメインが発行したCookieを指します。
企業は、新規ユーザーの獲得が困難になる背景の中で、魅力的な顧客体験を提供する方法を発掘していく必要があります。このような動きを悲観せず、好機と捉える企業の中には、読者の会員化によるサブスクリプションモデルを確立したアメリカのニュースサイト「Business Insider」など、収益が増加する場合も出現しています。
近い将来には、日本国内でもCookie規制が強まる可能性は高いため、企業には早期の対応が求められます。

 

関連コンテンツ

ユーティリティビジネス
ユーティリティビジネスとは、企業が提供する基本的なサービスを指します。例えば、水道や電気な ...
通信販売
通信販売とは、ネットや電話などを使って商品を購入する販売方法のことです。インターネットなど ...
ライセンシング
ライセンシングとは、企業が他社の製品やサービスを購入し、独自の製品やサービスを開発するため ...
B2D
D2C(Direct to Consumer)とは、企業が消費者に直接製品やサービスを提供 ...
ビジネスモデル
ビジネスモデルとは、企業が収益を上げるために採用する戦略的なアプローチを指します。ビジネス ...
BtoC
BtoCとは、Business to Consumerの略で、企業が消費者に商品やサービス ...
BtoB
BtoB(ビジネス・トゥ・ビジネス)とは、企業間の販売を指します。企業間の販売は、個人消費 ...
Webサイト制作
リバース・イノベーションとは、多国籍企業が自社の製品やサービスを先進国ではなく、「発展途上 ...