経営戦略

ブルーオーシャン戦略

ブルーオーシャン戦略とは、「競争の激しい市場であるレッドオーシャンから抜け出すよう企業に迫る」戦略です。そして具体的には「競争のない市場であるブルーオーシャンを生み出して競争を無意味にする」ものです。
そもそもブルーオーシャンとは、競争のない未開拓の市場を意味する言葉です。
よって、ブルーオーシャン戦略とは、「バリューイノベーション(価値革新)」に注目し、顧客が潜在的に求める価値を把握して、商品サービスを通じて新たな価値を提供することで、ブルーオーシャンを創造する経営戦略と言えます。
さらに、ブルーオーシャンは顧客にとっての商品の価値を高めると同時に低コストを実現する戦略でもあり、競合との差別化を実現する事が可能となる戦略です。
バリューイノベーションとは、コスト削減を実施しながら、顧客にとっての商品の価値を高めて、企業と消費者の両者の価値が同時に高まる状態を意味する言葉です。
ブルーオーシャン戦略では、さまざまな分析やフレームワークを活用して、バリューイノベーションの実施可否を検証していきます。

 

 

ブルーオーシャン戦略の由来

ブルー・オーシャン戦略はINSEAD(欧州経営大学院)のW・チャン・キム(W.Chan Kim)とレネ・モボルニュ(Renee Mauborgne)によって提唱された概念です。
キムとモボルニュが提唱したのは、ライバルの製品や企業から過剰なものを「減らす・取り除く」、顧客の潜在ニーズが見込める足りない機能と価値を「増やす・創造する」ことによって、新たな価値を生み出すことです。それによって従来の競争の軸を変えることによって、既存市場でもライバルのいないビジネスを行うことが可能になります。
ブルー・オーシャン戦略は、競争の激しい市場(レッド・オーシャン)で持続的優位性を保つマイケル・ポーターの戦略論を発展させたものです。ポーターが提唱したのは「差別化」と「低コスト」のどちらかを二者一択する戦略です。一方、ブルー・オーシャン戦略のERRCグリッド(後述)は、左側のERがコスト、右側のRCが差別化の要素になるため、二者を同時に追求することができます。

 

 

レッド・オーシャン戦略とブルー・オーシャン戦略

レッド・オーシャン戦略 ブルー・オーシャン戦略
既存の市場で競争する 競争のない市場を創造する
競合相手に勝つ 競争を無意味にする
既存の需要を集める 新しい需要を発掘する
価値とコストの間にトレードオフの関係が生まれる 価値を高めながらコストを下げる
差別化か低コストのどちらかの戦略を選んで、企業活動を合わせる 差別化と低コストをどちらも追及して、その目的のためにすべての企業活動を推進する

ブルーオーシャン戦略の反対の意味を持つ経営戦略に、レッドオーシャン戦略があります。レッドオーシャン戦略とは、競合がいないブルーオーシャンではなく、既に競争が激化している市場(開拓市場)において、シェアを拡大していくための戦略です。
レッドオーシャン戦略では、競合企業同士の過当競争や薄利多売、低付加価値の製品などといった、消耗戦に近い競争が激化している業界や既存市場において、どのように生き残っていくべきかに注目します。「規模の経済」が働きやすいため、資本が大きい企業が有利です。
競合企業がブルーオーシャンにおいて成功した場合、ビジネスモデルの摸倣や競合他社が実施した差別化戦略を同質化させることで、レッドオーシャンへと変化させる手法も代表的な戦略のひとつです。
 

ブルー・オーシャン戦略はなぜ必要か?

テクノロジーが進化したから

現代はインターネットがないと生活ができない時代に変化しています。常に新たな価値を生み出し、利便性を向上している暮らしの中で、これまで新規参入が難しかったテクノロジー業界への参入障壁は下がり、アプローチが難しかった顧客ユーザー層への接触が容易になりました。
結果として、現在では多くの企業がブルーオーシャンを発掘しやすい時代になっており、既存市場に参入せずとも新たな領域にチャレンジしやすい時代になりました。
 

不確実性な時代に変化したため

テクノロジーの発展と同時に経営の不確実性が高まっている現代では、ユーザーの価値観はますます多様化しており、ビジネスにおける課題が複雑化しています。この複雑化によって、これまでのような特定の既存市場のみでは、長期的な売上・利益が保証されにくい時代になり、新たな価値市場を模索する必要性が生まれました。
そのため、競合相手を持たないブルーオーシャンを自発的に発掘して、自社オリジナルのブランド育成や高価値かつ低コスト化された製品やサービスによる売上・利益を確保することが必要になっています。
 

ブルーオーシャン戦略を策定するためのERRCグリッドと戦略キャンバス

ブルー・オーシャン戦略を背景としたビジネスモデルを策定する際は「ERRCグリッド」と「戦略キャンバス」を用います。

ERRCグリッド

取り除く(Eliminate) 増やす(Raise)
業界が長年競っている要素で取り除くべきものは何か? 業界標準と比べて増やすべき要素は何か?
減らす(Reduce) 想像する(Create)
業界標準と比べて減らすべき要素は何か? その業界で一度も提供されていない価値、または新たに創造すべき価値は何か?

戦略キャンパス


ERRCグリッドと同じように、ブルーオーシャン戦略の策定に有効なフレームワークが「戦略キャンパス」です。
ブルーオーシャン戦略では、まず初めに「戦略キャンバス」を用いて市場の分析を行います。横軸は「業界各社が顧客を獲得するために力を入れている点」で、縦軸は「顧客が得られる価値の度合い」を表しています。
このグラフを「自社」「業界標準」「競合相手」のパターンで作成します。すると、業界や自社がおかれている状況が把握できます。
グラフの曲線は、「価値曲線」と呼びます。この曲線を基に、いかに他社と重複しない価値曲線を作るのかを検討します。
他社と異なる価値曲線を作るためには、シンプルに「業界標準や他社の価値曲線を見ながら、業界各社が見逃している要点に力を入れる」という方法が考えられます。しかし、「見逃している点がない」という結論に達することもあります。
 

 

 

ブルー・オーシャンを生み出す6つのヒント

ブルー・オーシャン戦略では既存の顧客ではなく、現在自社の業界の商品やサービスを利用していない人に着目します。具体的には購入意欲が低く、他の商品で代替している「消極的な人」、現在の業界の商品に不満を持っている「利用しないと決心している人」、業界の商品どころか他の代替品も利用しない「市場から距離を置いている人」の3タイプに大別されます。それを整理した上で、この顧客以外の人たちを新たな顧客として取り込むにはどうしたらいいのかを考察します。

代替産業から学ぶ

自社の業界が提供している商品の代替品となるものを考察し、「なぜ自社の商品ではなく、その代替品が選ばれるのか?」を考えます。航空業界ならば「なぜ、飛行機ではなく、新幹線やマイカーを利用するのか?」といった例があります。
ブルーオーシャン戦略では、業界内で類似した製品で勝負するだけでなく、経験のない異業種を対象にして代替が可能かどうかを検証することで成功率が高まるケースが存在します。
提供する製品が異なっていたとしても、消費者にとって代替が可能であり、魅力がある製品などは、仮にその製品が今までに前例のないものだったとしても、競争優位性を確立させることができます。
また、既に存在している製品などに対して、機能や価値を補完できるサービスなどもブルーオーシャン戦略では効果的なサービスとなります。ブルーオーシャン戦略を成功させるためには、自社の技術や強みが異業界での代替可能な産業になり得るか、補完サービスとしてビジネスモデルが確立できるかを検証することも重要です。

 

 

業界内の他の戦略グループから学ぶ

「機能が充実しているから」「独自のサービスが付いているから」「単純に安いから」など、なぜ自社の商品ではなく他社の製品を選んでいるのかの理由を調査します。
 

消費者グループに注目する

多くの場合、消費者のグループは複数存在します。ブルーオーシャン戦略に限らず、マーケティング戦略にとって、消費者グループ(顧客や市場)の選択は重要な過程となります。
同じ製品でも、消費者のグループが異なれば、求められる価値も異なる傾向があります。また、時代の流れやテクノロジーの発達によって、従来までは法人でしか利用されなかった製品などを消費者が得ることができるようになりました。そのため、世の中のトレンドを把握して、業界全体がどのように変化していくかを予想し、企業が提供する製品なども変化指せていく必要があります。
このようにブルーオーシャン戦略では、時代の流れやテクノロジーの発展を把握して、消費者グループの選択肢を増やし、その消費者に応じた新たな価値を創出し、市場に提供することが重要となります。
自動車部品メーカーの場合は、完成車メーカーやディーラー、エンドユーザー、またエンドユーザーの家族などが存在します。そのすべてに注目し、軽視していた買い手に注目します。

 

 

補完財や補完サービスを把握する

車を例にすると、車を購入した人はそれだけしか購入しないわけではありません。カーナビや芳香剤、クッションなど、機能を補完する商品も購入します。このような補完する役割を果たす商品をチェックし、その機能を現在の商品でも実現できるかどうかを検討します。
 

機能志向と感性志向を切り替える

製品やサービスを提供する企業も、それを購入する顧客もひとつの価値によって支配されることが多い傾向があります。しかしブルーオーシャン戦略では製品などに付与された価値を転換することで、新たな顧客を獲得できる可能性が生まれます。
一般的に製品などに付与された価値には、先端技術や合理性を重視する「機能志向」と見た目や心地よさを重視する「感性志向」のいずれか、または両方が備わっています。このいずれかに注力することで、差別化の要因が生まれ、顧客はその製品などのファンとなり、継続性の高いビジネスとして確立されます。多くの業界はどちらかの志向に偏っているため、その業界の偏っている志向の逆に注目します。
一方で、差別化の要因としていたどちらか一方の志向を、もうひとつの志向へと切り変えることも効果的です。このようにブルーオーシャン戦略では、既存の製品などへの志向を変更または追加するだけで、新たな市場創出や新たな顧客を獲得できる可能性を持っています。
 

将来を予期する

業界に影響を及ぼすような大きな動きを予期します。例えばアップルは違法の音楽ダウンロードが広まったことに注目していました。

以上のアプローチを行い、その結果を基に他社にはない、オリジナルの価値曲線を考えます。具体的にはERRCグリッドによってブルー・オーシャンを発見し、自社の商品やサービスを生まれ変わらせることができます。これをバリュー・イノベーションと呼びます。
 

ブルーオーシャン戦略のメリット

高単価かつ低コストでの販売ができる

ブルーオーシャン戦略の最も大きいメリットの一つは、自社製品を高単価かつ低コストで市場で販売できることです。
ブルーオシャンで対象となる市場には競争相手がいないため、市場での価格決定権を自社が持つことができ、自社に有利な商品提供が可能です。また、レッドオーシャンのように、競合他社同士の価格競争を行うリスクも無いため、安定した利益が期待できます。
ブルーオーシャンでの価格決定権の確保によって、新規参入企業の脅威を排除することもできます。さらに低コストでの商品提供の実現は、独自の流通チャネル販売チャネルに大きく依存しています。既存の自社の強みを最大限に活用することによって、競合他社には真似できない利益の向上モデルを構築することが可能となります。
 

規模の経済を活用できる

ブルーオーシャンで競争優位性を保ち続けるためには長期的な戦略や施策が必要です。そのため、ブルーオーシャンは規模の経済を活用しやすい市場といえます。
規模の経済とは、「生産量の増加によって平均費用が低下して、収益性が向上する経済効果」であり、スケールメリットとも呼ばれています。
規模の経済を活用することによって、短い期間で低コストと顧客の価値向上の両方を実現できるため、競合企業の戦略にも早く対応することができます。
ブルーオーシャン戦略は、レッドオーシャン戦略で活用される差別化戦略に加えて、コスト削減も実現する戦略です。そのため、仮に競合他社が差別化同質化戦略などを実施した場合でも、規模の経済を活用した自社独自のコスト削減戦略を同時に展開できるため、競争優位性を保ち続けることが可能です。
ブルーオーシャン戦略を実施する時は、規模の経済を活用できる程度の財務基盤を持っているかを検証することが重要となります。

 

 

ブランド育成による長期成長が期待できる

ブルーオーシャン戦略は新たな価値を創造し新たな顧客の獲得ができる可能性が生まれる戦略です。そのため、ブルーオーシャン戦略は新製品などを市場で確率させ、認知度を高める上では効果的な戦略です。
誰も注目していなかった潜在的な消費者のニーズや利便性を早急に把握して世の中に提供することによって、長期間優れたブランドとして認知され、無形資産(ブランド・エクイティ)として育成することができるというメリットがあります。ブランドの構築は類似品による差別化同質化戦略の効果を低下させて、継続的に購入してくれる顧客層の創出も期待できます。
 

ブルーオーシャン戦略のデメリット

高度なマーケティングの知識が必要になる

ブルーオーシャン戦略では商品に高付加価値をつけることが前提となります。しかし、営業力や技術力だけでは、ブルーオーシャン戦略で成功することは困難です。
ブルーオーシャン戦略はマーケティング戦略のひとつであり、効果的な戦略を実施するには、自社を取り巻く競争要因を分析する高度なマーケティングの知識を持っていることが必要です。
経営者や担当者などのブルーオーシャン戦略に携わる人材は、必要最低限のマーケティング知識に加えて、ブルーオーシャン戦略の策定に必要な戦略キャンパスやERRCグリッドなどのフレームワークの知識を保有していることが重要です。
 

商品やサービスが摸倣されやすい

ブルーオーシャン戦略では、イノベーションによる技術革新を必要としない場合が多くあります。ブルーオーシャン戦略では経営資源の豊富な大企業に有利に働きやすいですが、一方で摸倣されるまでの期間が短い場合もあり、すぐに競争優位性を失ってしまう可能性があります。
そのため、既存の商品などでブルーオーシャン戦略を実施する際は、摸倣されにくい差別化戦略の策定や新たな価値創造に注力し続けなければ、長期的な恩恵を受けることは難しいと言えるでしょう。
 

イノベーションが起こりやすい

近年、イノベーションによる参入障壁の低下や代替品の登場が一般化しています。結果として、簡単に他業種が参入してくることによってシェアを拡大される事態が増加し、ブルーオーシャンの維持が難しい時代となっています。
また、ブルーオーシャン戦略は長期的な投資や施策、莫大な資本の投入が必要な戦略であるため、イノベーションが起こることによって、想定以上の損失を被るリスクも存在します。世界中でIT企業をはじめとした新興企業が提供する製品などによって、ブルーオーシャンが一瞬でレッドオーシャンとなり、窮地に立たされている老舗企業も増加しています。
そのため、ブルーオーシャン戦略を実施する時には、起こるかもしれないイノベーションを予測しながら誰も見つけられなかった市場を発掘し、新規参入の脅威に対してあらゆる対応策を検討する必要があります。

 

 

ブルーオーシャン戦略の事例

QBハウス

1996年に日本の東京に1号店をオープンしたQBハウスは、キュービーネットが運営するヘアカット専門店です。主要な益の構内やオフィスビルなどの小さなスペースにチェーン展開しています。1996年のサービス開始以来急成長を遂げ、日本国内で約600店舗、シンガポールや香港、台湾、アメリカの国外に約140店舗で展開しています。
QBハウスは従来の理容店や美容室では当たり前だったサービスを大きく取り除き、「短時間で髪を整える」という便益に集中しました。また、同店の提供価値は、新しいヘアスタイルにすることではなく、「現在のヘアスタイルを維持しながら髪を切り過ぎない」ということです。それらの仕組みによって、髪の毛のカットに必要な時間は約10分です。予約や待ち時間もほとんど必要ありません。顧客の回転率が高くなるため、約1000円のカット料金でも利益を発生させることができます。
ブルー・オーシャン戦略は、新しく提供する製品やノウハウの模倣障壁が低いと、後発参入企業との競争が生まれます。この点において、QBハウスはカットした髪の毛を掃除する「エアーウォッシャー」と「システムユニット」と呼ばれる狭いスペースで理髪業を行えるユニット式の設備を独自開発したことで、他社との競争を回避しました。
また、ブルー・オーシャン戦略では「戦略キャンバス」を用いて、自社と競合他社との競争要因や顧客が享受スルメリットの程度を比較します。

QBハウスのERRCグリッド

取り除く(Eliminate) 増やす(Raise)
・個性に合わせたヘアカット
・快適な店舗空間
・待ち時間を作らない
・低価格
減らす(Reduce) 想像する(Create)
・予約の必要性
・シャンプーとブロー
・シェービング
・短時間で髪型を整える

 

ライザップ

確実に希望体重を叶える印象的な広告で有名になったパーソナルトレーニングジムの日本企業ライザップは、2000年代に事業をスタートした後発企業です。ライザップには、同額の会費のフィットネスクラブが提供するプールやジャグジー、バーなどの豪華な設備はありません。また、栄養指導や自宅での運動方法などの細かい指導も競合企業に比べると劣っています。
しかし、ライザップが提供している一番重要なものが、目標を達成するまで顧客と併走し続けるコーチング的な指導です。ライザップが経営する健康コーポレーションの社長は、「施設や設備は模倣されるが、目標を達成するためのノウハウは模倣されない」と言い、現在の価値提供を行っています。

ライザップのERRCグリッド

取り除く(Eliminate) 増やす(Raise)
・スタジオ設備
・ジャグジーなどの設備
・栄養指導
・自宅での運動指導
・個室でのトレーニング
減らす(Reduce) 想像する(Create)
・プールなどの施設
・タオル、ウェアなどのサービス
・トレーナーのコーチングスキル

 

サウスウエスト航空

サウスウエスト航空は1967年に設立されたアメリカの格安航空会社(Low Cost Carrier)です。
当時、アメリカのローカル都市間を移動するビジネスマンは、長距離バスを利用していました。サウスウエスト航空の創業者はバスとほぼ同じ運賃で移動できる航空会社を設立しようと考えて設立しました。
従来の航空会社はラグジュアリーな機内やフライトテンダントの丁寧なサービス、頻繁な機内食などを提供していましたが、サウスウエスト航空ではそれらをすべて一新したサービスを提供しました。

  1. 機種や機内レイアウトを統一したりパイロットや整備士を短期間に熟練させることでミスを削減し効率化を図る。
  2. 大都市ではなく郊外の空港使用料の安い空港を使用してFAの訓練なども人件費の安い地域で実施しコストを削減。
  3. 機内食や荷物預かり、座席指定を有料オプションとして提供することでサービスを有料化。
  4. 座席間を狭くすることによって座席数を増やし、機内清掃もFAが行うことによって着陸後1時間程度ですぐに離陸できるようにして回転率を増加。

以上のようにあらゆるコストカットを行って従来の航空会社では実現できなかったような低価格でのフライトを実現させました。
格安航空会社は既に全世界に拡大しています。

 

 

シルク・ドゥ・ソレイユ

シルク・ドゥ・ソレイユは、カナダに本社を置いている企業で、日本をはじめとして世界各地で公演を開催しているエンターテインメント集団です。
シルク・ドゥ・ソレイユは、従来のサーカスのように動物によるパフォーマンスなどをメインとせずに、バレエや演劇などの要素を公演に採用して、公演にストーリー性を持たせる事により「芸術」としてのポジションを生み出しました。それらの活動によって、サーカスよりもはるかに高額な料金でも観客に受け入れられ、ブルーオーシャン戦略の成功事例としても有名になりました。
 

任天堂のWii

任天堂が開発したゲーム機「Wii」は、任天堂が「ブルーオーシャン戦略」を活用して開発した製品です。従来までのゲーム機は、主な顧客を「10代後半」に設定しており、この顧客層を奪い合うレッドオーシャンでした。
そんな背景の中、任天堂は「他の年齢層にもゲームで遊んでほしい」という希望を起源として、操作が覚えやすく簡単に扱えるゲームを開発しました。そのゲーム機が現実世界のゴルフやテニスなどのスポーツの動きを取り入れた「Wii」でした。結果的に、Wiiは1億163万台を販売して、国民的ゲームのリーダーとなりました。

 

 

ユニクロ

ブルーオーシャン戦略で最も成功した日本の企業といえばアパレルメーカーのユニクロです。ユニクロの人気商品である「ヒートテック」は、以前までの衣類には無かった機能性の高さを誇った製品です。「SPA」という製造から販売までのプロセスを一貫して行う手法で、流通や仕入れ、買い付けにまつわるコストを削り、ユーザーに安価で提供することに成功しています。さらに、新たな市場を発掘しながら、夏は「シルキードライ」、冬はヒートテックに合った手袋やニット製品など、幅広く商品をユーザーに提供しています。
 

ブルーオーシャン戦略の成功条件

競争の軸を変えられるか?

ブルー・オーシャン戦略を成功させるためには、すでにある製品やサービスの「過剰な機能」と「不足している機能」を把握し、ライバルが提供しているものとはことなる価値を作り出せるのかが鍵となります。
 

模倣障壁の高い独自の機能を作り出せるか?

QBハウスの「エアウォッシャー」やライザップの「コーチングスキル」のように、他社が真似をするには難しい機能や、特殊な知見が必要となる設備や仕組みを作り出せない場合、ビジネスは簡単に模倣されてしまいます。
 

自社が提供する価値にニーズはあるか?

「ブルー・オーシャンには魚がいない」という表現もあるように、特殊過ぎる機能やごくわずかなニーズではそもそも収益を発生させることが困難です。今は存在しないが多くの人が望んでいる価値を見つけだせばビジネスとして成功することができますが、同時にニーズの持続性を慎重に判断する必要があります。

関連コンテンツ

クロス・ライセンス
クロス・ライセンスとは、ライセンスを持つ複数の人が複数の作品を共有し、それらを他の人に許可 ...
BPR
ビジネスプロセスリエンジニアリング(BPR)とは、企業が効率的な組織構造を構築し、業務を最 ...
プライシング
プライシングとは、企業が商品やサービスを販売する際に、どのような価格を設定するかを決定する ...
ナレッジ・マネイジメント
ナレッジ・マネイジメントとは、知識を活用した効果的な経営戦略を構築するためのプロセスです。 ...
競争優位
競争優位とは、ビジネスにおいて重要な概念です。競争優位とは、企業が競合他社よりも優位に立つ ...
ランチェスター戦略
ランチェスター戦略とは、マーケティング戦略の一つで、1960年代にイギリスの経済学者である ...
企業努力
企業努力とは、企業が持つ重要な経営戦略のことです。企業努力は、企業が成功を収めるために行う ...
パラダイムシフト
パラダイムシフトとは、新しい視点や考え方を持つことで、今までとは異なる視点で物事を捉えるこ ...