ビジネスモデル, 経営戦略

プラットフォームビジネス

プラットフォームビジネス

プラットフォームビジネス
プラットフォームビジネスとは、「場(プラットフォーム)」を提供して売買や情報交換を行ってもらうことにより利益を得るビジネスモデルです。
「プラットフォーム戦略」や「プラットフォームモデル」、「マルチサイドプラットフォーム」とも呼ばれており、2006年にハーバードビズネススクール准教授のアンドレイ・ハギウ氏らが提唱したことで注目を集めました。
売買や情報交換などを目的とした「場」を作ることによって、売り手や買い手など、多様なニーズを持つ人や企業を集めます。
プラットフォーム自体は前から存在していましたが、ネットの普及に伴い、ネット上のショッピングモールやフェイスブックなどのSNS、検索エンジンといった情報サイトが新たに登場しました。

 

 

プラットフォームの五つの機能

1.マッチング機能

プラットフォームビジネスは、人や企業に「場」の中で活動してもらったり、利用者同士をマッチングしたりすることで利益を得る仕組みです。プラットフォーム上で複数のグループの需要供給をマッチングさせます。例としてはショッピングモール内で小売店とお客をマッチさせたり、SNS上でユーザー同士をマッチさせたりすることです。

2.コスト削減機能

コスト削減機能とは供給側が単独で実装するよりも低コストで様々な機能を持つことです。例えば、プラットフォームビジネスでは「モノを売らずに場を提供」することで在庫を抱えるコストや手数料を省いて多数の商品を販売することができます。需要側にも供給側に対する、個別の手続きを省けるメリットがあります。

3.ブランディング機能

一定のブランド力、つまり実績や安心感のあるプラットフォームに参加することによってユーザーへの訴求力が増します。
供給側に集まってもらうためにも、強いブランディング機能が必要となります。ブランド維持には一定のクオリティ水準が求められ、ブランド構築のためには「このプラットフォームではなにができるのか」を考えた価格やイメージが重要となってきます。

4.外部ネットワーク機能

多くの企業がプラットフォームビジネスに参入する理由が「外部ネットワーク機能」を起こすことができれば巨額の利益を得ることができるからです。
外部ネットワーク機能とは、「集まる人や企業が増えれば増えるほどプラットフォームの価値が高まり、さらに人や企業が集まる効果」です。例えば、ショッピングモールならばいい店が集まれば集まるほどモールの魅力が向上し客も集まります。こうなれば活発に売買が行われ出店料、売買手数料が得られます。また、客が集まれば、他の人気店も出店したがります。
このようなサイクルに入れば、雪だるま式に売り上げが増えていきます。
SNSが急激に伸びるのは外部ネットワーク機能によるものと言えます。

5.三角プリズム機能

直接は引き合いませんが、第三のグループを介在、仲介させることによって交流が生まれる機能です。例としては、広告と読者は直接引き合う関係ではなく、記事を介在して読者に広告を結び付けている、といった例が挙げられます。これはSNSのような直接商品やサービスを買う目的はないが、好きなインフルエンサーが紹介していた商品やSNS内の記事を読んで欲しくなった商品などがこれに該当します。
 

成功するプラットフォームの三つの特徴

1.プラットフォーム自らの存在価値を創出できているか

誰と誰を結び付けるのか、参加者すべてにメリットが与えられるのかといったことが課題となります。プラットフォーマーが介在することによってはじめて新しい価値を生み出すことになるかどうかが大切です。
また他のプラットフォームとの差別化をいかに図るのかも重要となってきます。「魚と言えば築地市場に行こう」というような一言で言えるキャッチフレーズができるかがポイントです。

2.「場」に参加する人の「自動増殖機能」があるか

自らが宣伝することなく、参加している人がどんどん他の参加者を招いてくれる仕組みが重要です。例えば、「友達紹介で何ポイント」などの例が挙げられます。クチコミが起こりやすい機能を実装しているととても効率的にユーザーを増やすことができます。自動増殖機能はユーザーがユーザーを呼び込むSNSのようなサービスが効率的にこれを行うことができるとされています。

3.ユーザーのクオリティ・コントロールができているか

プラットフォーマーは、プラットフォームの弱体化につながらないように、クオリティチェックの仕組みを設けるなどの日々の努力が必要です。プラットドームのビジョンを明確化しておくと同時に、そのためのルールと規範を用意しておく必要があります。
例えば「事業ドメインの決定」「ターゲットとなるグループを特定」「プラットフォーム上のグループが交流する仕組みづくり」「ビジネスモデルの構築」「プラットフォーム上でのルールの制定」「政府の規制・指導・特許侵害などへの注意」などでプラットフォームを構築し、構築した後も常に進化するための戦略を準備しておく必要があります。

プラットフォームビジネスのメリット

顧客数を増やせる

プラットフォームが成長し商品やサービスの種類が豊富になることで、多様な顧客ニーズを満たせるようになり、お店が客を呼び、客がお店を呼ぶという「ポジティブフィードバック」という好循環を起こすことで客を増やすことができます。
プラットフォームビジネスでなければ、家具家電やファッション、ゲームなどの豊富な商品の種類をすべてひとつのお店で売る、といったことは不可能ではありません。
プラットフォームビジネスを展開することで、家具家電やファッション、あるいはゲームを求めている人も、すべてプラットフォーマーの顧客にすることができ、またプラットフォームに参加する企業もその恩恵を受けるようになります。

効果的なマーケティングが可能になる

プラットフォームが成長して会員数が莫大な数になると、客の属性や購買履歴などの消費行動データを蓄積して、マーケティングに活用することが可能となってきます。特定の商品カテゴリーだけでなく、カテゴリーを横断的に膨大なデータを蓄積することによって、マーケティングの方法やアプローチなど様々なことが効率的になります。

新たなビジネスを展開しやすい

自らが胴元になり、そのプラットフォームを様々な企業に利用してもらうことでプラットフォーム自体の魅力を高め、多くの客を集めていき、その集客力にひかれてさらに多くの企業が参加するようになり、一層プラットフォームの魅力が高まっていく、このようなポジティブフィードバックを生み出し、主要なプラットフォームで会員数を増やすことによって、新しく、収益率の高い事業に誘導していくことが簡単になります。
また、自社が展開しているプラットフォームに人が集まれば、新たなビジネスの可能性も出てきます。例えばショッピングモールならば飲食や駐車場、SNSや情報サイトならば広告や有料会員サービスなど、元々展開しているサービスに関連したサービスを展開しやすくなります。
また、自社の主要なプラットフォームに登録された会員情報を自社の他のプラットフォームで使うことができればますますユーザーの利便性が高まります。

プラットフォームビジネスのデメリット

魅力を保ち続けなければ後発のプラットフォームに負ける

もちろん、ここまでのプラットフォームを作り上げるのは簡単ではありません。プラットフォーム自体の魅力を高め、「このプラットフォーム」を利用すればいいことがある」と思わせることが不可欠です。また、大きなプラットフォームが魅力を失い、後発のプラットフォームにユーザーの大半を持っていかれる場合もあります。テレビゲームやSNSなどでこのような場面を見ることもしばしばです。このような点からして、利用者にとっての魅力を保ち続ける努力は必要不可欠です。
 

プラットフォームビジネスの企業例

楽天

「場(プラットフォーム)」の例で最もわかりやすいのがショッピングモールです。多くの顧客が集まる場所で、商売したい小売店を集め、1か所で快適に買い物をしたい客を呼び込みます。胴元のモール運営者は、小売店からの出店料や売買手数料などで利益を得るという仕組みです。
楽天にはさまざまな業種、種類のお店が出店しており、多くの人が楽天にアクセスするため、また新たなお店が出店し、さらに客を呼びこむという「ポジティブフィートバック」という好循環が起きます。
さらに楽天の場合は、「楽天スーパーポイント」という制度がうまく機能しており、買い物をするとポイントが付くため、そのポイントを使ってまた楽天での商品の購入を促しています。さらにはカード会社や旅行会社、保険会社を買収し、本来のプラットフォームである「ショッピングモール」で集めた4,000万人~5,000万人の会員を自社の利益率の高いビジネスに誘導することによってさらに高い利益率を上げることに成功しています。

グーグル

グーグルは「オープン」なプラットフォームである「グーグル」という検索エンジンを展開しています。グーグルで何かキーワードを検索するとそのキーワードに関連する商品やサービスの広告である「グーグルアドワーズ広告」が表示されます。
また、グーグルは今ではスマートフォンのOSや自動運転車、クラウドシステムまで様々な事業を展開していますが、今も主力なのはやはりユーザーニーズの情報を集め、それを広告にマッチングさせる、アドワーズ以降の広告ビジネスモデルです。
グーグルにも、後述しますがアップルと同じようにアプリを売買するGoogle Playのようなプラットフォームがありますが、グーグルにとって最重要なのは「シェアの拡大」と言えます。シェアを拡大することでユーザーのニーズを拾い集め、アンドロイドをオープンソースで配布して誰でも利用できるようにしていることや、同じくグーグルの参加であるYouTubeという無料で動画が見られるサイトやサービスを多数展開しています。
このようなことからグーグルは「オープン」かつ「無料」のプラッフォームを重要視しています。

アップル

アップルは「クローズド」である「App Store」というプラットフォームを展開しています。iPhoneのユーザーはアップルが提供するストアでアプリを購入します。ただし、その収益はアップルにも分配され、企業やユーザーが作ったアプリが売れるたびに、アップルも儲かっていく仕組みです。
アップルにとってもグーグルと同じ様にシェアは重要ですが、アップルが得意としているのは独自の「使い心地」です。iPhoneなどのハードウェアから自社で作り上げることで、美しい画面で快適な体験をさせ、ユーザーを虜にしています。アプリの品質管理にもこだわり、App Storeでアプリをリリースするためにはアップルの課す厳しい審査を突破しなければいけません。そんなアップルにフィットしたのが「クローズド」で「有料」のプラットフォームを作り上げることでした。

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